第六話 愛はいつも唐突に
最近、コメントが減ってきているので、ストーリーの見直し等を一週間ほどかけて、行って行きます。
これから、更新が遅くなるかもしれませんが、どうぞこれからも、よろしくお願いします。
恋先輩との一件から五日がたっていた。
なあ、一つ質問してもいいか?
「なんでしょう」
イツキと恋先輩は恋人なんだよな。
「そうですね」
なら、デートとか行かないのか?
今日は土曜日だぞ。
それなのに誘ったりしないのか。
「予定はないですね。行きたいとは思いますが、錦織先輩は忙しいようですので」
そう、なのか?
「大小色々仕事がありますが、ゴールデンウィーク明けにある交換留学生の歓迎会と、次の生徒会への引き継ぎが今一番重要でしょう」
そういえばそんな事も、言ってたな。
けど、そんなんで大丈夫か?
親父程じゃないが心配になるぞ。
「姉さんがいなくなって安心してたのに、次は父さんがうるさい」
姉貴はイツキと恋先輩が付き合った日から家出をしてしまったのだ。
置き手紙には別の次元にエデンを探しに行くとの事。
親父も母さんも心配してないし、案外親戚の家にいるのかもしれない。
だが、その代わりに親父が恋先輩との関係や動向を聞いてくるようになった。
「何となく理由は分かります。それに、出世に目が眩むというよりは、本気で心配しているようでした」
そうだな。
まあ、イツキなら何かあっても大丈夫だろ?
「そんな事はありませんよ。不測の事態は起こり得ます。前回の姉さんの乱入なんて、予想すらしてませんでした」
姉貴も心配症だからな。
「ハジメは気付いていないのか、気付いて敢えて知らないフリをいているのか、分かりかねますね」
ん、なんのこと?
「いえ、なんでもありません。さて、交換日記を書き終えました。野球部の練習に行きますか」
やっと終わったか。
イツキは俺が覚醒するまでの朝の時間に、恋先輩への交換日記を書いていた。
今日みたいに書き終わる前に起きてしまう事もあるが、その場合は、見ないように意識世界でモニターを見ないようにしている。
「律儀ですね。見ても構わないのに」
好き好んで人の日記なんて読まない。
ましてや、恋人同士のやり取りなんて口の中が甘くなりそうだ。
「そうですか。では、お昼に錦織先輩に会うまでよろしくお願いします」
〜〜
少しずつランニング距離を増やしていたはずですが、気付けば野球部の練習前に十キロ走っていた。
本当は早くても三ヶ月程のスパンをかけてたどり着くはずのトレーニングを、ハジメは既に余裕でこなしていた。
「なら、もうちょっと、減らさないか?」
もう少し体重を落としたいので、頑張りましょう。
「これ以上、落として、大丈夫か?」
新田お兄さんに目を付けられている時点で、ポジジョンは中学と同じライトでしょう。
ライトは守備範囲が広いだけでも体力が必要なのに、体重を上げて無駄に体力を減らすのはやめなくては。
また、バッティングに必要な筋力は既に付いています。
「なんか、怖いぞ」
やるからには妥協は許しません。
目指すは甲子園優勝です。
「お前って、凝り性だよな」
最高の褒め言葉ですね。
ほら、新田さんが信号の前にいますよ。
赤信号で止まっている横にハジメが並びます。
「おはよう」
「今日は絶対に負けない!」
そして、青信号になると同時にハジメ達は全力で走り出すのだ。
最初は一緒に走っているだけだったのに、いつのまにかどちらが早く学校に着くかを争うようになっていた。
そして、いつものごとくハジメが勝つのだった。
「は、はやい」
「よし、練習だ!」
ハジメはそう言うとジャージからユニフォームに着替えに行くのだった。
「体力オバケ!」
僕はとんでもないモノを作ってしまった。
「どこぞのマッドな博士っぽい発言すな」
了解。
ハジメは基礎練をあっという間に終わらせるとバッティング練習に入った。
どんなにすごくても補欠である。
実際には代打があるかどうかだろう。
なら、ヒットの一つでも取れるように練習した方が効率がいい。
さて、ここでバッティングの練習となるとボールを打つことを思い浮かべるだろうが、それだけでは不十分です。
実際にはバッティングフォームを修正しながら、納得できる形で打つ練習をしなければなりません。
「じゃあ、いつも通り姿見借りてくるか」
ビデオカメラやスマホで自撮りしながら、確認するのがよく行われる方法だ。
だが、僕が確認しながらハジメに指示すればいいので姿見ひとつあればどうにでもなるのだった。
「ねえ、新田さんって柏山くんとどう言う関係なの?」
ハジメが用具室から出ようとするが、いつのまにか外に誰かがいたようです。
「なんでもないよ」
この声は新田さんですね。
ハジメは息を殺して聞き耳を立てます。
あまり、褒められたことじゃないですよ。
それとも、また痛い目を見たいのですか?
「今出て空気読めない奴のレッテル貼られたら死ねる」
まあ、今更出て行ったら覗きの嫌疑をかけられるのも得策ではないですね。
「でも、今日も柏山くんと一緒に学校に来てたでしょ」
「それは、あいつが、たまたま」
「それって柏山くんが新田さんに興味があるとか?」
一瞬、ハジメは高鳴りを見せる。
だが、新田さんは「やめて!」と、全力で否定する。
「私はあいつが大っ嫌い! 冗談でもやめて!」
新田さんの言葉に体が冷たくなった。
その日、世界に激震が走った!
同時多発的にある儀式が行われ始めたのだ。
ある者は全てを失った悲しみを。
ある者は小さな憤りを。
また、ある者は世界を憂い、儀式が行われた。
だがこの儀式は生贄が必要なわけではない。
誰が血を流す事もなく。
不利益を被る訳でもない。
ただ、同じ時間に一斉に神に祈るだけだった。
この世の不条理から逃げる為に、一斉に三分の間 ‘‘別の世界に行きたい‘‘ と願うだけ。
それだけである。
そして、その儀式後。
世界は変わる事は無く、いつもの日常に戻っていく。
そのはずだった。
この儀式を主催した者が動画を配信した。
僅か三十秒の動画でその者は言った。
「神がいない事はこれで証明された。ならば、奇跡を待って願いを捧げる日々はこれで、お終いです」
仮面を被った女性は立ち上がる。
「弟を望み、世界の支配構造を破壊する者。そして、結婚概念を打ち砕く者。聞きたいか我が名は」
「メア カシヤマ!」




