魔人と人間
1600年前まで魔人族と人間は友好関係にあった。
魔人族には優れた魔法技術あり、人間達には優れた知恵があった。
互いの長所を活かし、互いの能力リスペクトした。
全ての者が手を取り合い、共に笑い共に泣いた。
ーー断交の時は唐突だった。
反乱軍と呼ばれる、魔人至上主義を掲げる者たちの出現だ。
この反乱軍が一方的に人間に危害を加えた。
刺す、焼く、餓死...ありとあらゆる方法で人間を虐殺し続けたのだ。
全ての者が手を取り助け合ったこの時代には、反乱軍を除く魔人と人間は共に攻撃の手段も無ければ防御の手段も無かった。
歯止めの効かない反乱軍は成長を続け、人間と友好関係を築く者は非国民であるとし当時の魔王及びその幹部を暗殺。
遂に今の魔王軍となったのだ。
人間との友好関係を望む国民達には食料の配給などでペナルティを与え、魔人至上主義を掲げる者は優遇する。
自国民であっても容赦をしない極悪非道なやり方である。
こうして先代の魔王デスメロイ・マル・ユーベルは、誰も逆らうことの出来ない独裁政権を築いた。
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月日は流れ、俺は15歳になった。
人間として生きていた前世では、魔王軍及び魔人は悪の根源で全滅させるべきと思い過ごしてきた。
しかし、そうではなかった。
1600年という歳月が経っても、人間の事が好きで、人間との共生を望む魔人が多かったのだ。
魔人も人間同様に心を持ち人間と同じ善悪の区別ができる。
しかし、上層部...否、我が先代達の無能さ故に
“人と魔人は、水と油のごとく絶対に分かり合えない関係”
というレッテルが貼られてしまっている。
15歳にして最高幹部となった俺は父のDNAと前世の記憶のお陰もあり、殆どの幹部達よりも強くなったという自負がある。
そして、遂に人間界と干渉できるチャンスをえた。
「イーブル。お前は次期魔王となる者だ。私の後を継ぐ者はお前しかおらぬ。
私が退いたあとも魔王軍を繁栄させるためには、まだまだお前の経験は少なすぎる。
よって、明後日の襲撃をお前の初陣とする。活躍を期待しているぞ。」
ーー遂に来た。この時をどれだけ待ちわびた事だろう。
魔王軍の支配する国からの外出を禁止され、ずっと人間界から遠ざかっていた俺が遂に人間界に干渉出来るのだ。
いつでもチャンスは一度きりだ。
二度目は来ない。
死ぬ覚悟で挑め。
ーーいざ出陣。