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レベルカンストの彼女とレベル1の僕  作者: 巫 夏希
第一章 その『朱』はまさに最強
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第一章6『依頼終了、報告。』

「なんか、あっという間に終わってしまいましたね……」


 アビス・ファーストのオンラインカウンターに私と少年はやってきていた。

 理由は簡単だ。先のゴブリン退治の報酬を受け取る為である。先程メッセージウインドウに表示された物だが、それを受け取ることが出来るのはオンラインカウンターのみというシステムとなっており、できる事ならここもなんとかして欲しいものだけれど、それは運営に言ったところで解決出来るとは思えない。


「クエストクリアおめでとうございます! こちら報酬となります!」


 そう言って、マグカップになみなみ注がれたのは、ホットミルクだった。


「……ほんとうにホットミルクだけなんですね……」

「まあ、致し方無い。このホットミルクが絶品であるということに賭けるしかあるまい」


 一息。


「ところで少年、経験値が増えたと思うがレベルアップはしたか?」

「あ、そうですね! ちょっと確認してみないと……」


 指でスライドさせる動作をして、彼の視界にステータスウインドウを表示させる。

 ステータスウインドウは、残念ながら一人でしか見ることが出来ないため、実際に経験値が入っているかどうか確認するのも、ユーザーの決まりとなっているのだ。


「……駄目です。経験値は入っているんですけれど、レベルアップまでは行きませんでした」


 深い溜息を吐いた後、少年は呟いた。


「……そうか。まあ、なら、仕方ないな! もっといろいろな任務をクリアしなくてはならない、ということだろう!」

「そういうものなんでしょうか? やっぱりバグとかそういう可能性は……」

「バグという可能性も、少しは考慮した方が良いかもしれないな。いずれにせよ、まだこのゲームには解明されていない謎も多い。それを躍起になって探している人間が居るぐらいだ。……少年も拿捕されないように注意しろよ。いつまで経ってもレベルが上がらないなんて、バグを好むユーザーからしてみれば格好の的だ。いつ狙われるか分かったものじゃない」

「……はい。分かりました」


 少年は小さく頭を下げて、オンラインカウンターへと向かう。次の依頼を探すために出かけたのだろうが、レベル1のユーザーにそう簡単にクエストを勧めてもらえるほどオンラインカウンターも甘くはない。

 さて、また私があれやこれや言ってやらねばならないか、と思っていたのだが――。


「お前、凄いな? あのゴブリンの大群をやっつけちまうなんてよ!」


 声をかけてきたのは、緑髪の青年だった。確か過去にオンラインカウンターでいざこざがあったのを一蹴した記憶がある。

 はて。

 どうして彼と少年が接点を持つようになったのかな?

 それについては、何処かで話を聞いた方が良いだろうね。


「……え? ええっ? 何処かで見てたんですか、僕たちの戦いを」

「う、うーん、そういう訳じゃねえよ。でも風の噂で耳にしてな。凄いじゃええか、俺がレベル1のときはゴブリンの群れなんて退治出来なくて、水道工事のまねごととかして経験値を得ていたってのによ!」


 ああ、そういえばそんな依頼もあったな……。懐かしい話だ。ろくな依頼が無かったとき、私もその依頼を受注したことがある。

 もっとまともな依頼は無いのかよ! とオンラインカウンターに直談判した覚えだって何度もある。しかしオンラインカウンターに居る人間も一人のユーザーだ。『オンラインカウンターの維持管理』を依頼され受注している特殊職の人間に過ぎないので、そんなことを言われても困る、というのが正直な感想だろう。

 だが、だとしても。

 この『アビスクエスト』には理不尽なバグと言って良いのか良く分からない何かが多い。

 ずっと壁に向かって喋り続けているNPCだとか。

 依頼をきちんとクリアしたはずなのに報酬が得られないクエストだとか。

 はっきり言ってゲーム未満のバグがあまりにも多すぎる。

 それでもなお、ユーザーが増加しているのはこのゲームが初めてのVRMMORPGであり、ゲームにおける多くのユーザーの不満を解消してくれたことだろう。

 現に私もこのゲームをプレイし始めたときは、ただ一言、凄いと呟いた記憶があるぐらいである。


「……ま、これからも頑張れや! ええと、レベルは……何だよ! あんなにゴブリンを倒したのに未だレベル1かよ! こりゃ、俺みたいに一人前の冒険者になるまでたどり着くまで永遠にかかるな!」


 ははは、と笑って奴はオンラインカウンターを後にしていった。

 ほんとうにあいつは何をしに来たのだろうか?

 まったくもって理解に苦しむ。

 ともかくこれで依頼はクリア。次の依頼を受ける準備が整ったという訳だ。


「さあ、少年。次の依頼は何にする?」


 私は少年に声をかけるのだった。



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