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レベルカンストの彼女とレベル1の僕  作者: 巫 夏希
第一章 その『朱』はまさに最強
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第一章5『ゴブリン退治も楽ではありません(4)』

 

 今更嘆いても無駄だ。

 今更考えても無駄だ。

 今は『少年』の救援を優先しろ。

 私は可能性を張り巡らせて、どうしてあちらから出現したのかを考えた。

 ゴブリンは基本的に山に住まう生き物だ。海で暮らすゴブリンなど聞いたことが無い。ということはあの洞窟はどこか別の場所に繋がっているはずだ。

 ということは、山側の出口が何者かに塞がれたから、海側に出ざるを得なかったのではないか?

 怪しい。はっきり言って、このクエストには別の誰かの思惑が働いているような気がする。

 気のせいかもしれないし、気のせいでは無いかもしれない。

 運営の仕組んだ罠かもしれないし、偶然が偶然を呼んだ悲劇かもしれない。

 ただ、この際どうだっていい。どっちだって構わない。

 だが、私は少年と約束したのだ!

 未だ始めたばかりの少年に向かって、「ならば私がレベルカンスト勢の高みを見せてやろう」と!

 無茶なことかもしれない。無謀なことかもしれない。

 けれど、やらなくてはならない。

 一度守ると決めた約束は、破ってはいけないのだ……!


 ◇◇◇


 海の洞窟に到着すると、未だ少年とゴブリンが争っていた。何とかゴブリンを①対①に巻き込んで攻撃しているようだった。少年にしては頭が回るじゃないか。ちょっとだけほっとしたぞ。


「少年、無事か!?」

「今のところは何とか! でもこれ以上は、流石に」

「任せろ! 私が道を切り拓く!」

「切り拓くったって、どうやって!?」

「私を誰だと思っている。【剣士】ジョブ最上位に君臨する【剣聖女】だぞ」


 剣を構える。

 すると、それだけでゴブリンたちの動きが止まった。いったい何が始まるのだと、思っているのだろう。

 そして。

 ゴブリンたちにめがけて剣を振り下ろす。

 たった、それだけのことだった。

 たった、それだけだったはずなのに。

 光の波が、ゴブリンたちに襲いかかる!

 一掃されていくゴブリンたちと、どや顔をする私。


「……凄い。あっという間にゴブリンをやっつけちゃった……」

「少年! まだ一匹残ってるぞ!」

「え!?」


 少年の背後にゴブリンが未だ一匹居たことに私は気づいた。

 手傷は負っているものの、油断してはならない。


「少年!」

「分かっていますよ、これぐらい!!」


 少年は振り返ると、持っていたナイフをそのままゴブリンの心臓に貫いた。


「……これで、最後!」



 ◇◇◇



「やあやあ、ゴブリンを倒してくれてほんとうにありがとう! 助かったよ。これで私の牧場がまた守られることになるだろう。お礼にホットミルクでも飲んでいかないかね?」

「ホットミルク……。良いですね」


 ゴブリン退治を済ませた私たちは、牧場の主に完了の報告を済ませた。

 ちなみに報告をするのは受注者である少年がやることとなっている。


「ホットミルクを飲むぐらい余裕ってありますか?」

「別に問題無いだろ、それぐらい」


 少年はへんな所で時間を気にしたがる。

 だが、私としては特に問題無いと思っている。確かに、クエストは受注期限として決められた時間が存在する。時間は確かに限りがあるけれど、あっさりゴブリンを倒してしまった以上、時間にも猶予がある。それを利用すれば、ホットミルクを飲んでほっと一息吐くぐらいは悪くないだろう。


「……だったら良いんですけれど」


 そう言いながら、少年はホットミルクを一口啜った。

 私もそれを見てホットミルクを一口啜る。甘い香りがしてとても美味しい。

 ホットミルクをたまには飲むのも悪くないな、と思った今日この頃なのであった。



【クエスト:ゴブリン退治】

【状態:コンプリート】

【報酬:EXP50、ホットミルク×2】



 ◇◇◇



「……まったく分からない」


 少年の様子を見ていたゴードンは、舌打ちをいsながら遠眼鏡から目を離した。


「結局、分からなかった様子ね」

「ああ、そうなるな。……それにしても、レベルアップでもしそうなものだが」

「レベルアップ?」

「あの少年はレベル1なのだろう? だったら、レベルアップの反応が見えてもおかしくないはずだ、俺のこの『神の目』を通して、な。けれど、見えなかった。それってつまりどういうことなんだ?」

「スキルがスロースターター型なんじゃないの? レベル1からレベル2の経験値が上がりづらい代わりに、レベル50からレベル51の経験値は増えやすくなっているとか」

「いや、どうやらそうでも無さそうなんだよ。……ああ、まったく持って分からなかった。今回は意味が無かったようだな」

「意味が無かった? 良いじゃない。『意味が無かった』ことが分かっただけでも収穫でしょう?」

「そりゃあ、そうかもしれないが……」



 こうして、二人も山を下りていく。

 レベルカンストの【剣聖女】とレベル1の【少年】を追い求める旅は、未だ未だ続く。



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