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レベルカンストの彼女とレベル1の僕  作者: 巫 夏希
第五章 その『色』めき立つ世界を
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第五章1『作戦はシンプルに』

 残り、二十四時間。

 泣いても笑っても、その時間しか残されていない、ということになる。

 とどのつまり。

 この『アビスクエスト』で生きていく人達が、『創造主』とやらの実験材料にさせられてしまうのも、残り二十四時間しか無いということになる。

 『アビス・ファースト』オンラインカウンター。

 そこには続々と人間(プレイヤー)達が集まってきていた。当然だろう。あれ程の『宣戦布告』を受けたのだから、集まらないことは無い。ただ、問題としては一つ存在していることがあるのだが――。


「問題は、全員が活躍してくれるかどうか、という話だ」

「どうして、だ? 全員動いてくれるに決まっているだろう。何せ自分の人生が奪われてしまうかもしれないんだからな」

「どうしてそんなことが言える?」

「何だと?」

「このゲームに集まっている人間全員がそうとは言えない。全員が全員『現世』に未練がある人間とは限らない、という訳さ。……私と同じように」

「何だって? お前と同じように、だと? お前は違うじゃないか」


 ゴードンの言葉に、私は耳を疑った。

 今、ゴードンは、何と言った?


「とどのつまり、お前は現世に未練が無いような人間と言っているようだが、あの『少年』のことを考えているならば、未練が無いとは言い難い。そうとは思わないかな?」

「……あんた、時折的確なことを言い出すわね」

「時折、と言う程長い付き合いをしたつもりは無いぞ」

「はいはい。話をしている暇があるなら、とにかく作戦会議! といこうじゃないの」


 言ったのは、メディナだった。

 そしてそれは彼女の言う通りだった。その通り、確かに『作戦会議』をしないと何も始まらない。そしてどう物事を終わらせるかについてもきちんと考えなくてはなるまい。


「……分かった。とにかく、」


 すうぅ、と息を吸って。


「ここに集まっている諸君!」


 一斉に。

 私に視線が集まる。

 どくん、と胸が高鳴った。


「私達は、『二十四時間後』に行われてしまう、『計画』の歯車にさせられてしまう。しかし、このまま引き下がる訳にもいかない! そういうことで、我々は今から作戦会議を開始する! 引き下がるつもりの無い方々には是非参加して貰いたい。会場は二階のバーカウンターで行おうとしよう。以上だ!」


 そう言って。

 私はすたすたと階段を上っていく。

 ゴードン達もそれを追いかけていく。そして一部の人間も徐々に私についていくように階段を上っていった。人数的には三十人ぐらいだろうか。

 実に『白き女王(ホワイトクイーン)』戦の一・五倍。決して多い戦力とは言い難い。寧ろあれ程集まっておいて、三十人しか集まらなかったのか、と思ってしまうレベルだ。

 それ程に、――現世に興味を抱いていない人間が多い、ということになる。


(……盤石とは言い難い、この人数で『創造主』を斃せるだろうか……?)


 相手は『攻略情報』が一切無い、『創造主』と呼ばれる存在。


(でも、私達は勝たないといけない。絶対に、だ。この場所を守るために)


 階段を上り詰める。

 二階のバーカウンターは既に私が借りている状態になっているため、客は誰も居なかった。テーブル席に着席すると、ぞろぞろと入ってきた冒険者達がやってくるのを漸く直視することが出来た。


「ええと、私がここを借りているから、適当な席に座ってくれ。そうだな、私の声が聞こえる程度の位置にいれば構わない」


 さて。

 問題はここからである。

 如何に、素晴らしい案を出すことが出来るか、という話について。

 それが出来るかどうかで私のリーダーシップが問われる訳だ。問題としては、今その案がまったく浮かび上がっていない、ということなのだが。


「……作戦を発表する」


 だが、時は誰も待ってくれない。

 昔の小説であった、ワンフレーズを脳内に語りかけながら、私は話を続ける。


「作戦は至ってシンプルだ。白魔導師はどれだけ居る?」


 私の問いかけに、何人かが手を上げる。

 数にして五名ほど。うん、悪くない人数だ。


「先ず、白魔導師が防御魔法を張る。その隙に剣士スキルを持った人間が攻撃をする。答えはシンプルだ。以上である」

「……そんなシンプルな作戦で通用すると思っているのか?」


 言ったのはゴードンだった。

 まったく、お前はどちらの味方なのだ、と問いかけたい。


「……先ず、私達はカセドラルの十四階会議室と言われてピンとくるか?」


 来る人間は居ないだろう。居るはずが無い。

 そもそもカセドラルはあんなに立派な建物(城塞のような建物をしている)なのに、一階しか入ることが出来なかった。

 だから十四階の会議室なんて誰も知らない空間なのだ。

 知らない空間のことを、とやかく言ったってしょうがない。


「知らない空間のことを、とやかく言ったってしょうがない。それは誰にだって分かっている話だと思う。問題は……そう、問題は、だね。その会議室に通用する作戦を考えたところで、結局シンプルな作戦に着地せざるを得ない、ということだ」


 どういうことだ? というはてなマークを浮かべている人間も居るように見えた。

 私は、さらに話を続ける。


「要するにだね……、知らない空間にも適用出来るような作戦を立てるということは、自ずとシンプルな作戦にならざるを得ない、ということだ。分かるかね? それをどうにかするのは私達だ。もし会議室の形状が分かればもっと具体的な作戦を立てることが出来るのだが……、問題はそんなところじゃない。私達が、どのように、戦えば良いのか。それについて突き詰めていかねばならない、ということだ」



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