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レベルカンストの彼女とレベル1の僕  作者: 巫 夏希
第四章 その『白』き女王は最強なり
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第四章8『白き女王、散る。』

『それで私が狼狽えると思ったか、馬鹿め』


 ズドン!! と雷鳴が落ちる音がした。

 文字通り、雷鳴がとどろいたのだ。そして、その一撃は『白き女王』に見事に命中した。


「が……はっ……!」

『ははは、ははは! 我が「創造主」に逆らった罰だ! 私の攻撃を食らうが良い!』

「貴様、貴様ああああああああああ!!」


 所詮。

 それがまがい物であることは分かっている。

 分かっているのだけれど、攻撃を加えなくてはこの腹の煮えたぎる何かが燃え尽きることは無い。


『「白き女王」は死んだ。最早、用の無い存在だ』


 ゆっくりと。

 ふわふわと浮かび上がった『それ』は、二十人の人間をも浮かせたまま、何処かへ移動していく。


「何処へ向かうつもりだ! まだ戦いは終わっちゃいないぞ!!」

『そちらにとってはそうかもしれない。だが、私にとっては戦いは終わったのだよ。……そうだね、もし「彼ら」を助けたいならば、カセドラルにやってこい』


 カセドラル。

 アビスクエストに初めてログイン時にやってくることの出来る、特殊なフィールドのことだ。サーバー間について関係の無いこと(例えば時限イベントだとか)が開催される場所でも知られている。また、噂による話だが、運営のデータがそこに残っているとも……。

 その、カセドラルに。

 最後の敵『創造主』が待っている!

 私達は何も見えなくなってしまった空を眺めながら、決意を胸に抱くのだった。



  ◇◇◇



「死にましたか、『白き女王』が」


 アビス・セカンド近郊にあるとある島。

 その島の中心に位置する宮殿に、角を生やした少女が椅子に腰掛けていた。

 彼女は溜息を吐いた後、さらに話を続ける。


「あれ程『創造主』様に逆らうな、と言っておいたはずですがね? 冥府にも存在しないんじゃ、データごと消されてしまったか。何というか、『七賢者』の一角を担う存在にしては呆気ないラストを迎えてしまった訳であるのですが」


 テーブルに置かれていたグラスを傾ける少女。

 中に入っていた液体を飲み干すと、ゆっくりとそれを拭き取るような仕草を見せた。


「まあ、あの様子なら遅かれ早かれ逆らう可能性があると思っていましたが。私は、逆らうのなんて面倒ですからね。そんなことしている暇があるなら、自分の好き勝手にやらせて貰えるこの環境がとっても素晴らしいと言えば良い話ですから」

人間(プレイヤー)が来ないことは、平和過ぎやしませんか?」


 不意に。

 声がしたので、そちらを振り向いた。

 そこに立っていたのは、彼女と同じく角を生やした男性だった。彼女よりも背は高く、年齢も上のように見える。


「……ラルド。貴方が出てくることでも無いと思うのだけれど?」

「いやいや、姉上。別に僕が出てきても問題無いじゃないですか。……それよりも、さっき僕が言った言葉、理解してくれていますよね?」

「何が?」

「何が、じゃありませんよ。人間がやってこないことは、あまりにも平和過ぎやしませんか? と言いたいのです。確かに、『白き女王』は人間と戦うことを好みました。戦いを好みすぎた結果が『あれ』だと残念なこととしか言い様がありませんが」

「何を言いたいの?」

「ですから! 姉上ももっと『創造主』様の計画に参画するべきではないか、と」

「私は私のやり方でこの『アビスクエスト』を成り立たせる。それが【アビスロード】の生まれた理由よ」

「ですが……!」

「幾らラルドでも、これ以上言うなら、私にも方策があるわよ?」

「……何をするつもりですか、姉上」

「だから、言ったじゃない。『方策』がある、って」


 ズズズ、と震動する音が響き渡る。

 その震動を聞いて、彼ははっと目を瞑る。


「姉上! そのような攻撃はおやめください! 幾度となく繰り返せば、『アビス・セカンド』が耐えきれませんよ……!」

「そんなこと……どうだって良い。どうだって良いのですよ! 『白き女王』が死んだ今、私を止める存在は居ない! たとえあの『創造主』ですら、ね! 『創造主』だから、【アビスロード】を作ったから、何だというのです! 何をしたというのです! 私達はこの世界に生を受けている! この世界に生きている! それを勝手に決められる筋合いなどないのですよ! ははは、あはははははは!」

「……姉上!」

『ふふ、何をしているかと言えば、このようなことを。やはり子供だな』

「誰だ!」


 通信があった。

 それを聞いた彼女は、通信機を動かす。

 通信は『アビス・サード』からだった。


「貴様は、ゼウス。神の名前をつけられたお前がいったいどうして私に連絡をよこした?」

『何。貴様のことだ。大方、怒りにいちゃもんをつけて攻撃でもしたがっているのではないか、と思ったのでね。それを止めようと思ったに過ぎないよ』


 気づけば、震動は止んでいた。

 ラルドは通信が来たことで、少しほっとしていた。

 ゼウス――『アビス・サード』で【アビスロード】を務める彼は、【アビスロード】としては最年長であるように設定されている。

 だからといって、彼が【アビスロード】のリーダーを務めている訳ではなかった。【アビスロード】のリーダー的立ち位置に居たのは、『アビス・ファースト』の【アビスロード】を務めていた『白き女王』だった。

 しかし。

 しかし。

 しかし、だ。

 その『白き女王』は『創造主』の攻撃を受けて、斃れた。


『次のリーダーを決めなくてはならない。私はそのために連絡を取った』


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