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レベルカンストの彼女とレベル1の僕  作者: 巫 夏希
第四章 その『白』き女王は最強なり
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第四章7『創造主≪かみさま≫』

「誰だ……っ」


 私は、中空に向かって問いかける。


『私はこのゲームの……そうさね、「開発者」とでも言えば良いだろうか。無論、「白き女王」を含めたコンテキストを作り上げた張本人と言っても過言では無い』

「コンテキスト?」

『簡単に言えば、データを作った、と言えば良い』

「最初からそう言えば良いだろうが。それで? 開発者であるあんたがいきなりこの戦いに何をしに来たというのさ」

『これ以上の争いは無駄だと思ったからだ』

「無駄?」


 既に一人の命を犠牲にしているのに、無駄というか。

 開発者と自らを名乗る、その存在は話を続ける。


『きっと君は、一人の人間の命を些末に扱ったことについて、怒り心頭になっていることだろう。しかし、しかしだ。こうは考えてみなかったのかね。現実世界で、「それがまったく取り上げられなかった」こと、それは即ち、「狂言」だったのではないか、ということ』

「狂言? あれがお芝居だと言うの?」

『そもそも、HD001型ヘッドマウントディスプレイに、致死量の電流を流す機能など搭載されてはいないよ。そもそもの問題だ。考えれば直ぐに分かる話だろう』


 しかし。

 しかし。

 しかし、だ。

 だとすれば、我々が見せられていたこの寸劇はいったい何だというのだろうか?


『寸劇、と思われても仕方無いだろうねえ。しかしながら、それもまた作戦のうちだった、という訳だよ』

「どういうこと?」

『「人間の住む場所はどんどん減少しつつある」。少しは聞いたことのある話だとは思うがね。それについて少しは考えてみようじゃないか』

「考えてみる、ですって?」

『ああ、そうだよ。人間の住む領域は徐々に減少傾向にある。理由はどうしてだか分かるか? 人間が増え続けていくからだ。人間という種を残していくためには、それは仕方無いことなのかもしれないけれど』

「あんたは、それにどう関わっていると言いたいの」

『答えは単純明快だ。政府の考える「人類管理計画」に参画することだよ。意味は言わずともなんとなく理解できるだろう? その計画を実行することで、人間としての種を残すことが出来るんだ。人間としての種を増やすこと無く、永遠に』

「……そんな、恐ろしいことが」


 正直、ぞっとした。

 人間としての種を残していくことは同意出来る。しかし、問題はそれ以上のことだ。人間の種を保存していくために、人間の……。


「人間を、どうするつもりだ?」

『簡単なこと。人間の精神を、データ化する』

「人間の精神を……データ化、だと?」

『分からないかね? 人間の精神をデータにしてしまえば、管理はロボットに任せれば良いのだ。データセンターは既に完成している。ベータテストもこのプログラムが実行されている今、無事に成り立っていることを意味している。君たち【アビスロード】に刃向かっている者達が居る時点でね』

「……まさか! 彼らは既にそのプロトタイプにされたというの!? 本人の了承も無く!! 最低な人間ね、あんたは!!」

『ははは! 言っていれば良い。言っていれば良い! いずれにせよ、この世界は崩壊することの無い理想郷(ユートピア)だ! それを生み出すことが我々の使命であり、それを管理することが我々の役目だった!』

「結局、あんたは人間を実験台にしただけじゃないの!?」

「ああ、もう鬱陶しい!!」


 そう言ったのは、『白き女王』だった。

 彼女はそう言った後、何処かから魔法を放ち、上空に浮かんでいた『何か』を的確に破壊していった。


『「白き女王」! 貴様は、我々のプログラムには必要不可欠な存在……! 何故、裏切るのか!』

「裏切るとか裏切らないとか、そんなことはどうだって良いのです。私にとっては、戦うこと、それ自体は素晴らしいこと!! それを否定する貴方達は、たとえ創造主だろうと、命令に従うつもりは無い!!」


 筋が通っているのか通っていないのか。

 いずれにせよ、『白き女王』がこちらの味方になる可能性が僅かに高まったことは事実だ。


『「白き女王」よ、貴様には罰を与えなくてはならない。私達「創造主」にとっては悲しいことだけれどね』


 そして。

 そして。

 そして、だ。

 それを契機として、『白き女王』はゆっくりと倒れていった。

 それを見た私達は、『白き女王』の力が弱まっていくのを感じ取った。


「『白き女王』が……倒れていく!」

「馬鹿な! 奴らにとって【アビスロード】、とどのつまり『白き女王』は必要な存在じゃなかったのか!?」

『【アビスロード】は我々「創造主」にとってはただの捨て駒に過ぎんよ。……そう、我々にとっては、な』

「捨て駒、ねえ?」

「うぐぐ……ぐぐぐ……ははは、ふふふふふふ!!」


 しかし。

 しかし。

 しかし、だ。

 崩れ落ちるはずだった『白き女王』の身体は、すんでの所で一歩留まった。

 倒れることなく、右足を使って、彼女はその場に留まったのだ。


『馬鹿な! 今の攻撃で倒れない、いいや、「実行終了しない」プログラムがあるはずが無い! 貴様、「創造主」に逆らうつもりか!?』

「創造主、創造主と鬱陶しいんだよ……! 私は、【アビスロード】。確かに『計画』を実行するために生まれた存在だ。だから、だからってどうした!? 私達は、いいや、私は! それだけのために動いていて良いのか!? いいや、良いはずがあるまい!! 私は、私達は……!」

 


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