第四章2『対決、白き女王(1)』
そして、次の日。
私たちは、再び白き女王と対面するために、山頂に辿り着いていた。
念のため『ヤルダバオト』の首も持参した上で、だ。
ちなみに今回はメンバーを増やすということはしなかった。それをすることで、白き女王の機嫌を損ねる可能性がある、と私が言ったためだ。
「……しかし、ほんとうに大丈夫なのか?」
「何が?」
「私たち四人で来て問題無いのか、という話だ」
メディナの問いに、私はしっかりと頷いた。
「問題無いでしょう! だって、あの『白き女王』が私たちにアポイントメントを取ってくるのよ? これって普通に考えて有り得ない話だと思わない? まあ、戦闘は必要になるだろうけど。もしかしたら向こうが諦めてくれるかもしれないし!」
「諦めてくれる、って?」
「そりゃあ勿論、向こうが『拿捕』している人間の解放よ。それをしてくれなきゃ話にならない。勿論、やってくれるかどうかは相手の裁量によるだろうけど」
「絶対穏便に解決しないだろそれ……」
「いつ、私が穏便に物事を解決させるって言ったかしら?」
「駄目だ、こいつ。早くなんとかしないと……」
まったく、何を勘違いしてるのやら。
私は最初から『この戦いに勝とう』なんて思っちゃないよ。
考えてるのはずっとこのことだけ。
如何にして、どうやって、少年を、人々を、助けることが出来るのか。
「……一応聞いておきたいのだが」
「何よ」
「あの少年とはどういう関係なのだ?」
「…………それ、言わないと駄目?」
ぴくり、と眉を動かしてしまうのは情景反射か。
ほんとうなら、あんまり把握して貰いたくなかったのだけど。
「……もう一度言うわ。それ、言わないと駄目? ゲーム内において、プライベートのことが禁句とされていることを知っていても、なお?」
「……良い。それ以上は言わなくて良い。つまり、プライベートに関することなのだと言うことは理解できた」
あ、やべっ。
それは言わないでおこうと思ったのについムキになってしまった。
悪い癖ね。
今度までに修正しておきたいとこだけど。
「とにかく! 今はそんなことを言ってる場合じゃないでしょ? それぐらい理解できてる?」
「理解してるさ、理解してるとも。……『白き女王』との対面、初めてのことになるが、……いったいどうやって倒せば良いのだろうな?」
「それは私に任せなさい」
「ほほう? 何か秘策があるのか?」
「ない!」
「ないのかよっ!」
「冗談よ、冗談。……あの『白き女王』には魔法耐性がある。だから」
「だったら殴って攻撃しろってのか? 確かに俺たちゃ、白魔導師であるレオンさんを覗けば全員物攻スキル持ちだらけだが……」
「それなら、分かりきってるんじゃなくて?」
「何が、だよ?」
「物語の決着、その先に何が見えているのかを」
◇◇◇
「ふふふふふふふふふ、ふふふふふふふふふ! ついに到着した! ついにやってきたわね、挑戦者! 分かっていたわ、分かっていたわよ。あなたたちがやってくるのは! ずーっと、ずっと監視していたんだから! ヤルダバオトの首を確保したのは見事だったわ、流石だとしか言い様がない。まさかほんとうにヤルダバオトの首を手に入れる人間が出てくるなんて思いもしなかった。流石としか言い様がない。完璧な人材ね。もしモンスターだったら直ぐ私の軍門に降るように命じるのに。それが出来ないのはほんとうに残念よ。残念ったらありゃしない。さて?」
白き女王は両手を広げる。
そして目を瞑る。
油断があるように見えた。隙があるように見えた。
でも、ほんとうに?
ほんとうに、隙も油断もあるように見えた?
答えは否。そんなことは有り得なかった。
明らかに油断してるように見えるのに。
明らかに戦うことを放棄してるように見えるのに。
彼女――白き女王に、一歩も近づくことが出来なかった。
「いい加減にしやがれでございますよ? 私にとってこの世界がどのような物であるか理解していないくせに、この世界で足掻こうとする意思がある人間が居ると言うこと! それについては否定しないけれど、肯定もしない。なぜなら貴方達がイレギュラーな存在だから! 貴方達が、私達【アビスロード】にとってイレギュラーな存在だから! それを理解しているのかしていないのかはさっぱり分からないけれど!!」
余韻はなかった。
だが、沈黙はあった。
その沈黙は無限に感じられる程だったけれど。
しかし、白き女王にとっては一瞬の出来事だったことだろう。
「えーさっきから黙っていやがりますが、分かっていらっしゃるのかね? お前達人間は、【アビスロード】には適いもしないってことを! 【アビスロード】の存在は、人間にとって上位の存在であり、その存在を皆無にすることは不可能であるということを! そうして私達【アビスロード】からは誰も逃れることは出来ないということを!」




