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レベルカンストの彼女とレベル1の僕  作者: 巫 夏希
第四章 その『白』き女王は最強なり
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第四章1『続々・作戦会議』

 次の日。

 『アビス・ファースト』オンラインカウンター二階にあるカフェテラス。


「……先ずは全員集まったことに感謝を述べる必要があるかしらね」

「全員集まらないとでも思ったのか?」

「正直なところね」


 誰一人欠けがなかったのは有難いことだったが、これからの戦いで人数が減るとも限らない。ならばできる限り人員は確保しておきたいところだ。……だが、そうすると、白き女王がまた手を封じてくる危険性だって孕んでる。


「白き女王の障壁はどうなってるんだ?」

「なんとも言えないのが現状ね。破壊されてるままなのか、修復されてるのか」

「もし前者なら?」

「ラッキーと思って突入するしかないわね。それが敵の罠かどうかは別として」

「後者なら?」

「もう一度破壊するしかない。出来るかどうかは分からないけど」


 あのときは魔法使いが十人以上いて漸く破壊出来たのだ。今回、もし壁が修復されていたら簡単にそれを乗り越えることは出来ないだろう。


「……そこはもう、白き女王の気まぐれに頼むしかないわね」

「気まぐれ、ですか……」


 全員が落胆する。

 そう思うのも致し方無いと思う。

 でも、そう言い切るしかないというのが事実であり、それが問題であることは間違い無いだろう。


「……可能性の一つとして捉えて欲しいんだけど」

「はあ?」

「もしかしたら、白き女王はわざと『穴』を開けておいた可能性があるかもしれない」

「わざと? どうしてそんなことをするのよ」

「それは分からない、けど……。『白き女王』側からわざわざこちらに声をかけてきた時点で怪しいと気づくべきだったのかもしれない」

「何か、罠がある可能性がある、と?」


 メディナの問いに、私はゆっくりと頷いた。


「だとしたら、バカ正直に向かう必要ないんじゃない? こっちだってまた人員を集めて魔法障壁を破壊すれば良い。そして今度はそのポイントから『私たちだけ』侵入する」

「……それを破った人間が居たら?」

「そのときは、そのときね。彼らのミスと思えば良い」

 

 はっきりと、言い放つ。

 それ以上のない、完膚なきまでに決めつけられたその一言。


「……しかし、それで人が集まるものかしら?」

「『白き女王』側からアポイントメントを取ってるのに?」

「それはそれ。これはこれ。ほんとうに実現出来るかどうかも危うい状態なのに、それを信じるのがまたおかしい話だとは思わない? 別にバカだとは言わないけど」

「それ、バカと言ってるようなものよね?」

「あら? そうかしら」


 メディナと私の間に、火花がバチバチと散るような感覚があった。


「……おいおいおい! ここで喧嘩している場合じゃないって! 今は『白き女王』にどうやって攻撃を加えるか。それを考えるところじゃないのかよ!?」


 言ったのは、ゴードンだった。

 それを聞いて私たちはすっかり怒りも冷めて、彼の話を聞く羽目になった訳だが。


「……彼、随分と手綱がお上手ね。いつもこんな感覚なのかしら?」

「さて、どうでしょうね?」

「ひそひそ話していてもなんとなく内容は分かるんだよ! 良いからさっさと作戦会議を再開するぞ!! いずれにせよ、俺たちには時間がないってことぐらい理解して貰わないと困るんだよこちとら!!」



◇◇◇



 白き女王と鬼の少女の通信。


『……ところで、いつ頃来るかなんてことは把握してるんですか?』

「私がそんなつまらないことをするとでも思ってるの? あんたは少し私の価値観を理解した方が良いと思うけど」

『……ああ、そうでしたね。あんたはギャンブルが好きでしたね』

「言い方!」

『何かミスでもありましたか? 私の発言は常に正しいことしか言わないようにセットされてますけど』

「……ほんと、あんたムカつくわね。なんつーか、一番年下だから何言っても良いと思ってんじゃねえぞ?」

『やーん☆ こわーい』

「てめえ、ほんとうに巫山戯るなよ、ぶっ殺すぞ?」


 そして、通信は一方的に打ち切られる。

 白き女王と、人間の戦いの火蓋は切って落とされる。

 その勝敗はどちらに軍配が上がるか、それは誰にも分からない。



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