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レベルカンストの彼女とレベル1の僕  作者: 巫 夏希
第三章 その『黒』の神は怒り狂う
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第三章15『…後日談。』

 オンラインカウンターに戻ってきて。

 一言目に発したのは、ゴードンのこの台詞だった。


「……俺たち、何のためにヤルダバオトを倒したんだろうな」

「でも、倒したことによって『白き女王』は私たちの話に応じてくれることになった」

「応じてくれるだけじゃねえか。俺たちが求めていたのは、未だ解放されていない二十人もの人間(プレイヤー)を解放して貰うことじゃねえのか?」

「それはそうかもしれないけど……」


 でも、間違ってない。

 私たちにとって、やるべきこと、やらなくてはならないことは何か。

 それはただの任務(クエスト)達成ではない。もっと重要なことだったはずなのだ。


「白き女王の討伐、私たちに出来るでしょうか……」

「出来る、出来ないの問題じゃない。やるしかないんだ。しかも、俺たち四人で」

「どうして? もっと人を雇えば効率的に物事を進めることが出来るのに……」

「いや、きっと……白き女王は私たち以外の人間を連れてきたら、また『封印』をしてくるに違いない。犠牲者を増やす訳には、いかないのよ」

「それは……」


 レオンの思う気持ちも分かる。

 でも、これは出来ることなら、私たちだけで解決しなければならないこと。

 ほんとうならレオンすらも除外しておきたかったことなのだけど、「今更除外なんて言わないでください!」と言われてしまい、一緒に来て貰うことになってしまったのだ。

 そもそも、あの時点で白き女王に目をつけられてる。

 ならば、一緒に来ないと話にならないのは当然のことか。


「あんた、ほんとうならついてくる必要も無かったのよ?」

「何を今更。私も白き女王に目をつけられた人間ですよ。だったら最後まで付き合うのが道理です」

「……そう言って貰えると、ほんとうに有難いわね……」

「今更じゃないですか。貴方達と手を組んだときから、これは決まっていたことなのかもしれないですけれど」

「……というと?」

「私にも私なりの価値観があるということですよ」

「……そういうもんかね」

「そういうもんですよ」


 そうして、レオンと私の会話は終わった。


「……さて、となると後は『白き女王』討伐に向けた作戦会議ですけれど」

「もう疲れちゃったし、後は明日にしない?」


 私はヤルダバオト戦で大分精神を使っていた。

 だから窶れていたというか、疲れていたというか、とにかく今すぐ休みたかった。


「休みたい気持ちも分かりますけれど、今、苦しんでいる人の気持ちも考えたことがあるんですか!」


 メディナの言葉に、私は俯くことしか出来やしなかった。

 分かってる。分かってるんだ。

 けど、今はゆっくりと休ませてくれないか。

 休ませてくれるだけで良い。あとは命令ならばどんな命令でも受け入れようじゃないか。


「……休むのも仕事のうちだろ、休ませてやろうぜ」


 メディナの言葉を否定するように入ってきたのは、ゴードンだった。


「ちょっと、ゴードン!?」

「確かに俺たちは今日の戦いで疲れた。心も身体も、な。その状態で次の戦いの作戦会議を満足に出来る状態かと言われるとまた話は別だ。そうは思わないか?」

「それは……。じゃあ、あんたも疲れているって訳?」

「そりゃあ勿論。どんだけ俺の『盾』が役だったと思ってやがる」

「言うほど使ってないような気がするけど……」

「何だと?」

「まーまー、ここで喧嘩する話でもないでしょ? 私の言うとおり、休んだ方が良いんだって。後はそれから考えましょ。ね?」


 結局。

 私の鶴の一声で今日は休むこととなり、また明日作戦会議を立てるということに相成ったのだった。



 ◇◇◇



「……ふんふふーん」

「上機嫌ですね、白き女王。それ程、人間にヤルダバオトが倒されたことが嬉しかったのですか」

「だってあいつ、私の言うこと一切聞いてくれなかったし! まあ、また復活するからそのときはそのときで服従させてあげるんだけど。一回ああいう目に遭わないと分からない人だって居るでしょ?」

「あれは人と呼ぶべきかどうか微妙な存在ですが」

「まーまー、そんなことはおいといて! 私が言いたいのはそんなことよりも無事に人間達が私への挑戦権を得た、ということなんだから」

「……ほんとうに戦うおつもりですか? もし何かあれば、『アビス・セカンド』に逃げ込んでも良いんですよ」

「戦争を仕向けたのは彼らの方よ。だったらあちらが納得するまで戦ってあげるのが、【アビスロード】の役割と言っても造作ない。そうでしょう?」

「それは……」


 否定しなかった。

 画面に映っている、鬼の少女は否定などしなかった。


「ま、今日は来ないだろうから後は明日の話ね。明日以降どうなるかほんとうに楽しみなんだから。もしあれだったらあなたもここまで来れば? 別に統治なんてしちゃいないんだから毎日暇なんでしょー?」

「それはそうかもしれませんが」

「ほらほら。だったら、やってきなさいな。私と人間の戦いを見られるなんて、珍しいことこの上ないんだから。ね? 分かったならさっさとやってきてね?」

「分かりました。では、明日から」

「そうね。それが一番良いかもね」


 そうして、二柱の会話は終了した。

 ヤルダバオトを倒した彼らに待ち構えるのは、【アビスロード】『白き女王』。

 彼らが勝つか、白き女王が勝つか。その答えは、神のみぞ知るといったところになるだろう。

 


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