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レベルカンストの彼女とレベル1の僕  作者: 巫 夏希
第三章 その『黒』の神は怒り狂う
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第三章14『決戦、ヤルダバオト(後編)』

「やるな……! 流石に、私の首を狙うだけはあるということか!!」

「褒めて貰えて光栄、とでも思えば良いのかな?」

「だが、それだけで倒せると思ったら大間違いだ……!」


 何だろう。力が湧き出てくる感覚がある!

 勿論、私の方じゃなくて、ヤルダバオトの方からだけど!

 それをゴードンも分かってたらしく、声を上げ始める。


「おい! 何だか怒らせちまったんじゃねえか、これって!!」

「分からない。分からない、けど……」

「けど、なんだよ!」

「……ヤルダバオトは倒せない敵ではない、と思う!」

「思う、思うって……。言っているだけじゃねえか! そんなこと出来ると思っているのかよ!」

「五月蠅いわね、さっきから。あーだこーだと! だったらあんたは出来るのか! 私が出来ないと何も出来ないじゃないの、特にレベル的な意味で!」

「さっきから聞いていればお前は……! いい加減にしろよ!」

「仲間割れしてる場合じゃないわよ!! 今は、ヤルダバオト討伐に集中しなさい!!」


 メディナの言葉に、私たちは身体を強張らせた。

 確かに、今はそんなことをしてる場合じゃない。

 そんなことをしてる暇は、一切存在しない。


「どうした、攻撃の手を緩めたか>enter」


 ヤルダバオトの言葉が、不意におかしくなった。

 まるでノイズが混じったかのような、そんな感覚。


「レベルカンストだかどうだか知らないが、それで攻撃の手を緩めるとは笑わせる。>enterそれに、未だ戦いは終わっていないのだから>enter」

「戦いは終わってない、だと? それぐらい理解してるさ。だが、お前はもう終わってるように聞こえるがな。感じないか、言語機能に異常を来していることを!」

「ははは。>enterそれぐらい理解しているとも。>enterだが、それがどうしたというのかね?>enter>spaceそれを知ったところで何が分かるというのか?>enter>space分からないだろう?>enter>space分かるはずがないだろう?>enter>space分からないならば、口を出すな、若造が」


 言語機能に異常を来していてもなお、戦いをし続けるというのか。

 何というか、哀れな存在だ。

 それならば、さっさと戦いを終わらせてしまえば良いのだけど。


「……どうした、どうした?>enter>space何を疑問に抱いているのだ>question>enter>space未だ、戦いは終わっていないぞ>enter」

「戦いは終わってない。それはそうかもしれないわね。でも、あんた、もうお終いよ。言語機能に異常を来してもなお戦いをし続けるなんて間違ってる」

「間違ってる、だと>question>enter>space何を言い出すかと思えば、そんなことか>period>enterそんなこと、理解しているとも>enter」

「なら、あんたはどうすれば良いのか分かってないだけのただのバカよ。若造と言っているかもしれないけどね、それで済めば苦労しない。あんたはさっき左腕を部位破壊された時点で終わってるのよ。未だ五本の腕が動くかもしれないけどね」

「そうだ>period>enter私には未だ五本の腕が残っている>exclamation>enter>space腕が一本なくなったから何だというのだ>exclamation>enter>space私は、未だ終わっていない>period>enter終わっていないんだ……>exclamation>enter」

「いいや、お終いよ。終わり」


 私は剣を構える。

 いつまでも終わりを認めようとしない、その神に。

 終わりを認めようとしない、愚かな神に最後の鉄槌を捧げるために。

 私は、一瞬の弱点(ウィークポイント)を見逃しはしなかった。


「終わりよ、これで」


 刹那、私はヤルダバオトの身体を切り刻むように斬撃(ざんげき)を加えた。ヤルダバオトの背後に回ってたことに気づきもしないだろう。ヤルダバオトは、今もなお立ってる。だが、


「ぬ、ぬおおお……>period>enter私は、私は負けない>period>enter負ける筈がないんだ……>exclamation>enter」

「お終いよ、あなたの負け」


 私の言葉が言い終わると同時に。

 ヤルダバオトの首が右にスライドしてく。

 私はそれをじっと見つめてた。

 そうして、首が落ちたところで私はそれを受け取った。


「……これで、お終いって言ったでしょ、ヤルダバオト」

「やったな、アリス! これで後は、『白き女王』に首を差し出せば問題無い」

『と思っていたのかしら?』


 声が聞こえた。

 振り返ると、そこには、白いワンピース姿の少女が浮いてた。

 私は直ぐに確信する。これは遠隔で情報だけ送信してるだけに過ぎないのだ、と。

 そうして、彼女は話を始める。


『先ずは、ヤルダバオト討伐おめでとうございます。と言えば良いでしょうか。貴方達がほんとうにヤルダバオトを倒すことが出来るとは思ってもみませんでしたけれど』

「何を!」

「俺たちにだって出来ることはあるんだぞ!」

「ってか私、必要でした?」


 最後のレオンの言葉には突っ込まないでおく。


『ヤルダバオトの首を持ってくれば、先ずは「私に挑戦するチャンス」を与えることになるでしょう』

「何だと……?」

『言っていませんでしたか?』


 にっこりと、白き女王は微笑む。


『ヤルダバオトを倒しただけで、彼らを解放するほど私も甘くはありませんよ?』

 


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