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レベルカンストの彼女とレベル1の僕  作者: 巫 夏希
第三章 その『黒』の神は怒り狂う
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第三章7『続・作戦会議』


「……どうやってヤルダバオトを引きずり出す?」

「問題はそこになるんですけど……」

「前回はどうやったんですか?」

「前回は、結局私たちがヤルダバオトを倒す冒険者だとバレて、相手側……とどのつまり、村人側がヤルダバオトを呼び寄せたんですよね……」

「だったら、それでいいじゃない。今回も呼び寄せて貰いましょうよ」

「それじゃ私たちが隠れて挑む意味が……!」

「…………ああ、そうだったわね」

(この【剣聖女】、ほんとうに分かってるのかしら……?)

「でも、どうやって挑むのかは決まってないでしょう? だったら、そっちの方が効率的なような……」

「もうアリスさんは黙っててください」


 そう言ってきたのはレオンだった。

 そう言うのも当然だろう。今まで『隠れて挑む』のが普通だったにもかかわらず、この女、『真っ正面から挑む』ことばかり考えているのだ。まったく、よくその地位まで登り詰めたな、と言ってしまいたくなるレベルである。あ、この節では語り手は変わっているから要注意よ。私よ、私。誰だか分かるよね? 分からないとは言わせないわよ、メディナよ。メディナ!


「……おい、メディナも何か意見を出したらどうなんだ?」

「出したらどうなんだ? って。私だってちょっとは考えてますー」

「……例えば?」

「たとえが出せるほどの考えにまでは至ってないけど」

「それを『考えてない』って言うんだろうが」


 ゴードンの言葉は、ときに鋭く棘のように突き刺さることがある。

 ほんとう、分かってるんだか分かってないんだか。


「……ともかく、どうにかしてその祠に潜入しないと話が始まらないのよね」


 言ったのはアリスだった。

 だからそれを話しているんでしょうが!


「……そうね。確かにその通り。でもどうやって入るつもり? 流石に『さっきの』やり方は出来ないと思った方が良いと思うけれど」


 さっきのやり方、と言うのはわざわざ蒸し返す必要も無かろう。


「こうなったら、気づかれないように祠に向かうしか無いよね」

「だから、それをどうやって解決するかが問題であって……」

「いやいや、だから言ってるじゃない。出来るって、出来る」


 何が出来る、だ。それぐらい考えてるのか?


「とにかく、皆の考えをまとめると、どうにかして祠に侵入しなければ話が進まない。けれど、侵入するには『長老』のような誰かについてきてもらう必要がある、ということでオーケイ?」

「間違ってないですけど。でも、誰かについてきてもらう必要は無いと思います。……私が場所を覚えてますから」

「何だ。だったら最初からそう言ってくれれば良かったのに」


 確かに。

 なら、どうして最初から口にしなかったのだろうか?


「だって、言ったら私が注目されるじゃないですか」


 訊ねたらそんな返事が返ってきた。

 そういう問題か。


「……とにかく、これで一つ問題は解決ね」

「そうなりますね。でも、どうやって気づかれずに集落に向かうか、が問題ですが」

「あの長老とやら、忍者かってぐらい隠遁スキルが強かったような記憶しか無いんだけど」

「実際、忍者ですよ、彼らは。あそこはデータ上は、『忍者の郷』として登録されてるはずですから」


 何だって?

 さっきから私たちの知り得ない情報ばかりが出てくるような気がする。

 何というか、『もっと早く言え!』と言わんばかりの内容だらけだ。

 レオンの話は続く。


「今考えられる私たちのアイデアは、たった一つだけです。どうにかして長老たち忍者の郷の人間に気づかれないようにすること。人間ではなくて、NPCと言えばいいかもしれませんけれど」

「NPC……ねえ。ただのNPCでは無さそうな気がするけど」

「というと?」

「NPCじゃなくて、PC(プレイヤーキャラ)じゃないかしら、と言いたいのよ」

「……そんなこと、有り得る?」

「私たちの考えに至らなかっただけで、その予想は十分有り得ると思う。ヤルダバオトを隠すために、わざとNPCではなくPCを配置している。その『中の人』が誰になっているのかは分からないけれど。もしかしたら、テクノポップ社の人間がかわりばんこで対応している可能性すら有り得るわね」

「テクノポップ社?」

「この『アビスクエスト』を運営している企業の名前よ。それくらい覚えておきなさい」


 と言われましても。

 覚えておけと言われても別に中の人の名前まで覚えておく必要性はないと思うけどね。

 それにしても、テクノポップ社……ねえ。あまり聞いたことがない会社名だけど、元はどういう会社だったのかしら?


「さて、とにかく作戦を整理しましょうか」


 言い出したのは、アリスだった。


「私たちがどうにかして、『隠遁スキル』を利用すれば問題無いと思っているのだけれど、どう?」

「隠遁スキルをどうやって手に入れれば良いの?」

「……さっき店のチラシでこんなものを手に入れたのだけど」


 アリスがそう言ってポケットからあるものを取り出した。

 そこにはこんな内容が書かれていた。


『これを着れば隠遁スキル上昇! 「隠れ蓑の装備」一万七千ダイスにて販売中!』

「……、」

「……、」

「……どうした? 何か文句があるなら言い給えよ」

「最初からこれを出しとけば良かったんじゃないですかね……」


 代表して発言した私の言葉に、アリス以外の全員が頷くのだった。



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