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プロローグ サブクエスト受付はこちらから! オンラインカウンター


「どうなさいました、冒険者の方?」


 机の向こう側には、胸を強調させるような白いブラウスを着た女性受付員が居た。

 人間の足で三時間もあれば一周できそうな小さな島『アビス・ファースト』の中心にあるオンラインカウンターには今日もたくさんの冒険者がやってきていた。

 しかしながら、冒険者の大半が見ているのは、カウンターの脇にある巨大掲示板。ボス級モンスター、通称【アビスロード】の目撃情報が掲載されているのである。ちなみに、ロードとは道路の英語表記ではなく、神という意味なので、ということは神が何柱も居るのかということになってしまうのだが、細かい話はどうだっていいのである。

 問題は、目の前に居る冒険者。

 オンラインカウンターには酒場も併設されており、そこで酒を飲む人間も少なくない。しかし時間的には未だ『クエスト』を攻略出来る時間だからそこに行く人は少ない。そもそもクエストを攻略したらカウンターに向かう必要があるので、もしクエストを攻略したのなら直ぐにカウンターに行けば済む話である。

 しかし、目の前の冒険者は違う。

 何処か怯えている様子にも見えるその冒険者は、一見冒険者ではなく『依頼者』のようにも見える。しかしながら、持っている装備――腰の右側にナイフ、左肘に革製のシールドを装備している――からして冒険者であることは間違い無かった。


(もしかして、オンラインカウンターを利用するのが初めて?)


 オンラインカウンターはここ以外にも複数箇所存在している。だからこの場所のオンラインカウンターを使わずとも、プレイしていくことは可能だ。

 オンラインカウンターを使うのが初めてならば、ヘルプを使えば良い。ヘルプも使えないのならば、説明書を見れば良い。でも彼は今目の前でおどおどとした様子で立ち尽くしている。

 はっきり言って、明らかにおかしい。

 オンラインカウンターを使うように促すべきか?

 それとも、オンラインカウンターの意味から説明するべきか?

 『アビス・ファースト』オンラインカウンターの受付員、メイビス・ガーバウンドは窮地に立たされていた。

 メイビス・ガーバウンドは思い出す。こういった場合は、マニュアルに沿って行動すれば良いのだと。そしてその場合のマニュアルは――。


(確か、『最寄りのオンラインカウンターまたはカセドラル』に案内する、だったっけ?)


 カセドラル。

 アビスクエスト運営が直接運営しているサロンのような施設だ。仕組みはオンラインカウンターそのものであり、オンラインカウンターと同様の設備を保持している。アビスクエストにログインしたユーザーが必ず最初に立ち寄る場所であり、そこから依頼を受けるユーザーも少なくない。


(つまり、彼はカセドラルでしか依頼を受けたことが無い、のかな?)


 ちなみに最初に声をかけてから、冒険者のユーザーはずっと無視を貫き通している。

 無視、というよりかは緊張していて話す事が出来ない、という方が正しいのかもしれないけれど。


「ええと……」


 漸く言葉を発した。ボーイソプラノの声だった。ボイスの種類としては、ソプラノに所属するだけであって、ボーイだろうがガールだろうが選択は出来る種類だったはずだ。何故彼女がそこまで詳しいかと言えば、それは運営に所属している人間――正確にはバイト――だからだ。

 冒険者の話は続く。


「ええと、ここに来るのは初めてで。どういうものなのかさっぱり分からなくて。そして、僕はどうすれば良いのか分からなくて」

「ええと、カセドラルで依頼は受けたことはあるかな?」


 こくり、と頷く冒険者。


「じゃあ、そこと同じシステムだよ。だから、簡単に君は依頼を受けることが出来る。先ずはあのボードから依頼を確認して、」

「やあやあ、少年。待たせたな!」


 声が聞こえた。

 そちらを向くと、立派な鎧に身を包んだ女性だった。鎧、と言っても下半身はスカートのようになっていて機動性がうまく出来ている感じがある。防御力が著しく低下してしまうが、それでも、全身鎧で固めてくるよりかは問題が無い。

 装備の軽装化は、一言で言えば自信の表れと言えるだろう。逆に言ってしまえば、軽装化することによってダメージを受ける可能性は高まってしまうのだから。

 それにしても何処かで見覚えのある姿(アバター)だが――。


「済まないな。少年が迷惑をかけていないだろうか?」


 受付員である私たちに丁寧に声をかけてくる彼女に、私たちは見覚えがあった。

 何せ、この『アビスクエスト』で数少ないレベルカンスト勢なのだから――。


「あ、アリス様でございますか!! 少々お待ちください、今、依頼を持って参りますので!!」


 ざわざわ、と冒険者たちの視線がこちらに向く。

 アリス、と聞いて知らない冒険者はいなかった。

 アビスクエストサービスイン時からログインし続け、常にトップランナーとして走り続けた、レベルカンスト勢のうちの一人、剣聖女アリス。

 しかし、疑問は解消されない。

 どうして、彼女とレベル1と思われる少年が一緒に旅をしているのだろうか?


「さあ? どうした?」


 剣聖女アリスは私たちを急かす。


「少年に見合う任務を、探してきてはくれないかな? 何せ少年はログイン数日目の新参者なものでね」


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