アイテムボックス
コージは咄嗟に、これは冒険RPGの夢だと判断し、特典のアイテムボックスに指を這わせ、受け取るをタップする。
ピロン
頭の中に電子音が流れ、ステータス表示の下に新しく文字が浮かび上がった。
「アイテムボックスを受け取りました…か。無限表記ってことは容量無限ってことだよな?何かしまう物…鞄くらいしかないか」
どうやってしまうのだろう。というか、アイテムボックスはどこにあるのだろう。
手元を見ても新しく増えた装備はないので、アイテムボックスの使い方すらわからない。
こう、説明書じゃないけれどもこちらの問いに答えてくれるような自動説明機能があったら便利なのに。
「このスキルの未登録部分に登録出来ないかな…?」
指でスキル 未登録 をタップする。すると文字記入欄が出て来た。が、文字入力する為の文字が出てこない。どうやら文字は音声入力らしい。
「自動音声説明」
ピコン
「何々…"一度決めたスキルの変更は出来ません。このスキルで登録しますか?"か。へぇ、変更出来ないんだ。でも使い方わからないと何も出来ないし、決定!」
ピロン
電子音と共に、"スキルを常時オンにしますか"と表示されたので、スライドタップでオフからオンに直し決定を押す。
ピロン
《スキル 自動音声説明 を起動しました。説明が必要になりましたら、音声、または思念にてお呼び出し下さい。尚、この会話はスキル所持者であるコージ様にのみ適用されます。》
どこか機械的な、よくオペレーションセンターなどで聞く女性の音声が流れた。
「ではまず、アイテムボックスの使い方」
《アイテムボックスは所持した時点で常時発動可能になります。アイテムボックス起動、と思念すれば目の前の空間がアイテムボックスとなります。》
なるほど。そういう仕組みだったのか。
「(アイテムボックス起動!)」
コージは目の前の空間に両手を突っ込む。
すると空間が歪み、そこにあるはずの手が無くなった。空間を押し広げ中を覗くと、ただただ広い空間がそこに広がっていた。
「これ、中に入れた物ちゃんと取り出せんの?奥の方行っちゃうと届かないと思うんだけど…」
《大丈夫です。アイテムボックスの中は自動で整理され、コージ様が思念した物が一番手前に来るようになっております。》
「へぇ!便利!じゃあさ、中に何入れたか忘れた時はどうなんの?」
《ステータス画面の左上に三本線がありますので、そこをタップするか思念して下さい。メニューバーが開きますので、そちらにあるアイテムボックス中身一覧を選択して頂くと、アイテムボックスの中身が一覧で表示されます。》
試しに通勤鞄の中身を全て出し、アイテムボックスの中に投げ入れてみる。音声案内に従い今回はタップで操作をすると、案内の通りアイテムボックス一覧が画面表示され中身が直ぐ分かるようになった。
「おおっ、本当だ。一覧になってる。んじゃ、試しに筆箱取ろうかな」
コージは頭の中で筆箱、と唱え、アイテムボックスに手を突っ込む。
すると直ぐに手応えを感じ引き抜けば、間違いなく先程一番最初にしまった筆箱が簡単に引き出せた。他の物が邪魔になることは一切ない。
再び筆箱をアイテムボックスの中に戻し、音声に問いかける。
「これ、ずっと開きっぱなしなの?」
《いいえ、終了と唱えれば閉じます。》
「ふーん。じゃあ、終了!」
もう一度手を突っ込むが、アイテムボックスが開く事はなかった。






