人生一発逆転サヨナラホームラン
初投稿でございます。
感想等いただければとても嬉しいです。
特に悪い点については是非とも教えていただきたいです。
起死回生の一発逆転サヨナラホームラン、俺が望むのはそれだけだった。
野球ではなく、人生の話だ。
不登校から引きこもり、そして順調にニートへと、流れるように負け組街道を一直線にひた走り続けてきた我が人生。
ただただ惨めな毎日が今後も温かく保障されているクソッタレな人生を、全て綺麗にぶち壊してしまうような逆転の一打。
そのたった一打を追い求めて、俺は今日も考える。
プロ野球選手になって楽しく野球をしているだけで大金を稼ぐ。
なんて無邪気でバカげた夢は小学生の頃のもの。
今から俺が野球選手になれるなんて、天地が10回引っくり返ってもありえない。
こんな毎日寝てばかりの身体で、一体野球の何ができるというのか。
真面目に勉強して一流企業に就職してエリートコースを歩む。
なんて現実を見ているようで見えていないアホらしい夢は中学生の頃のもの。
結局は遊んでばかりで県内有数の底辺高校に見事入学した俺を、その頃より遥かに知能が低下しているであろう今の俺を、雇おうとする一流企業なんてものがもし存在するのであれば、もはやそれは一流企業ではない。
俺に出来る仕事なんて糞尿の生産ぐらいだ。
宝くじを当てて働かず遊んで生きていく。
なんて現実逃避まっしぐらな情けない夢は高校生の頃のもの。正確には不登校状態のときのものか。
確率は平等、誰にでもチャンスはある、自分が当てても何の不思議もないと、小遣いのほとんどを費やしてわずかな希望に望みを託していたが、いや実に無駄な事をしたものだ。
ただ可能性があったことだけは事実だし、そのために行動できたというのは無駄ではなかったかもしれない。
宝くじは買わねば当たらない。今の俺には、もはや宝くじ1枚を買うことすらできないのだ。
いつものように考えながら、窓の外を見る。
雲一つなく晴れ晴れとした青空から降り注ぐ光は、俺の薄暗く寂しい部屋を暖かく照らしてくれる。
それだけで俺は優しく穏やかな気持ちになれるし、このクソッタレな人生をぶち壊すための勇気を出せる。希望を見出せる。
そうだ、行動せねば何も変わらない。今日こそ、今日こそは勇気を振り絞ろう。
プロ野球選手だとかエリートコースだとか一攫千金だとか贅沢は言わない。
ただ毎日この優しく温かい光をのんびりと浴びれるだけでいいのだ。
勇気を出せ、と震えてろくに動こうとしない身体に発破をかける。
恐れるな、と不快なほどにうるさい胸の鼓動を落ち着かせる。
急げ、と俺ではないような俺の声が聞こえる。
止めておけ、と自分が真に望んでいるであろう思考も流れてくる。
だがもう考えて決めたのだ。毎日毎日毎日毎日、無為に流れる時間の中で考えて決めたことなのだ。
だから、だから。
「ねえ、C105号室の患者さんが自殺未遂したって本当?」
「舌を噛み切ろうとしたらしいよ、凄いことするよね」
「まあ、まだ若いのに毎日寝たきりの生活じゃあねえ、気持ちは分からなくもなくない?」
「治る見込みもないし絶望したんだろうね。本人が望むんなら、ってのは医療に携わる者としては言っちゃ駄目かな」
「ああ、そういえばあの患者さんのお父さんって有名な会社のお偉いさんだし、お兄さんはプロ野球選手なんだっけ? やっぱ色々イメージとかあるんだろうねえ。延命治療のお金も十分あるんだろうし?」
「病気になるまではあの患者さんも幸福満足贅沢三昧だったんだろうね。そう思うと、せっかく生きていられるのに自殺しようとするってのも贅沢な話なのかな」
贅沢を言うつもりはない。
ただ、こんなクソッタレな人生からサヨナラしたい、それだけなのに。
俺は今日も考える。
死にたい。どうすれば確実に死ねる。こんな殺風景な病室に使える道具はろくにない。死にたい。身体もほとんどろくに動かない。本当に死にたいのか。何もできない何も無い人生は嫌だ。死んでしまいたい。どうすればいい。嫌だ、生きたくない。
死ねばこんな苦しみから解放されるはずだ。
父や兄にも一矢報いることができるのではないか。
窓の外を見る。鉄格子をものともせずに、温かな光は今日も降り注ぐ。
俺は今日も考える。
きっと天国は、こんな光でいっぱいのところなのだろうな、と。
読んでくださった方、本当にありがとうございます。
これから頑張っていきたいと思いますです。