第1話 第一街人発見!....というか発見されたのは俺でした。
再び目を開けると横になっていた。
背中は柔らかい感触に包まれている。
おそらくベッドの上だろう。
耳を澄ますとカーン、カーンと言う音が聞こえてきた。
下の階に誰かいるのだろうか...。
(下の階に誰かいるならちょうどいい。この世界の事を教えてもらおう)
そう思った時雨は起き上がった。
階段を下りると、時雨と同い年くらいの赤髪の少女が何かを打っていた。
「あ、あの~....」
恐る恐る声をかける。
「お、気がついた?」
少女は嬉しそうに聞いてきた。
「あ、はい。それであなたは....」
「あ、そうだった。私はシリエス・レイベット。
シリエスでいいよ。見ての通り鍛冶屋をやってるの。それであなたは?」
シリエスと名乗った彼女は逆に聞いてきた。
「北條時雨です」
短く答えた。
「ホージョウ?シグレ?どっちが名前?」
「時雨が名前です」
「じゃあ、シグレでいいね。
あなた、森で倒れてたけどなにがあったの?」
「えっと....」
どう説明したものかと悩んでいるとあることを思い付いた。
「実は名前以外覚えて無いんです」
それは記憶喪失を装うことだった。
「う~ん、もしかして悪魔に記憶抜かれたのかも....」
「悪魔がいるんですか?」
「悪魔って言うか魔王の手下なんだけどね。
普段は魔界にいるらしいんだけど、たまに人間界にきて悪さするらしいんだよ」
「...は~」
時雨は気の抜けた返事をする。
「まあ、この話は友だちから聞いた話なんだけどね」
そう言うと、シリエスは考え込んだ。
すると
「シグレ、暫くうちにいなよ!」
と言い出した。
「え?」
さすがに時雨は驚きの声をあげた。
「だって、泊まる所ないんでしょ?お金も持って無さそうだし....」
「いいんですか?迷惑じゃ....」
「迷惑じゃないよ、どうせ独り暮らしで部屋余ってるし」
時雨は考えた。
確かに泊まる所もお金もない。それに本人がいいと言ってるんだ。なら泊まらせてもらおう。
「分かりました。暫くお世話になります」
「とりあえず、必要なもの買いそろえないとだね」
そう言われ時雨はシリエスとともに外に出た。