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第1講 面接

こんにちは、にとろんと申します。

神様の塾講師、今回から本編でございます。

今回には新キャラが二名登場いたします。

それではどうぞ。

榊真司は緊張している。

今日は人生初のアルバイトの面接があるのだ。場所はフレイヤ塾という神野駅前の大通りに建つビルの三階の小さな個人経営塾で、3日前に電話で面接が決定してから何度も確認をしたので間違いない。

入学式以来のスーツに身を包み、階段を上がる。二階にはスナックがあるようだが、昼なので明かりはついていなかった。

三階に上がり。「フレイヤ塾」と書かれた金属製のドアの前に立つ。何事も最初が肝心、最高の第一印象のために気合いを入れる。履歴書、筆記用具、ハンカチはある。色んなサイトを見て面接の質問対策もばっちりのはずだ。大学受験の際におばあちゃんにもらった合格祈願のお守りも胸ポケットに入っている。一度大きく息を吸い込んで、ノックするために拳を握った。


「あのー?」

「のわああああああああ!?」

「きゃああああああああ!?」

突然横からかけられた声に思わず情けない声が出て、尻餅をついてしまった。向こうもそれに驚いたようで悲鳴が聞こえる。

なんとか声の方を振り向くと、長い金髪に青色の瞳をした美少女がそこにいた。服装から察するに学生だろうか。短いスカートから覗く健康的な太股辺りに思わず目がいってしまう。

「な、なによ!いきなり大声だして!」

少女からの問いかけでようやく我にかえる真司。

「あ、ええと、今日ここでバイトの面接を受けさせていただきにいらっしゃいました!榊真司です!19歳、大学生でございます!」

緊張と焦りからのめちゃくちゃな自己紹介である。

「はあ?バイト?そんなのフレイヤには聞いてないけど……。」

少女の方は少し冷静になったようだ。そんな掛け合いをしているうちに、真司の正面のドアが開き、中から赤みがかった茶髪のロングヘアーの女性が現れた。緩めのカールに少し垂れた緑の瞳、服の上からでもわかるその豊満な胸からは彼女が美女であるということがこれでもかというほどに伝えられる。真司は気づいていないが、この時彼の顔は真っ赤である。ドアから現れた美女は二人を見た後に、金髪の少女に声をかける。

「ゼウスちゃん、この方彼氏さん?駄目よー、ここに連れてきちゃー。」

ゼウスちゃんと呼ばれた少女は一度真司の顔を見て、顔を真っ赤にした後大声で返事をする。

「はあ!?何言ってるのよフレイヤ!こんな地味でどうしようもなさそうなのがこの私のか、彼氏なわけないじゃないの!」

地味でどうしようもなさそうな真司くんの心に少女の言葉がザクザク刺さる。

「あらー、そうなのー?じゃああなたはどちら様?」

美女の質問の対象が自分になったと気づいた真司はひとまず立ち上がり、軽く咳払いをしてから自己紹介をする。

「はじめまして、私本日こちらのフレイヤ塾でアルバイトの面接を受けに参りました。榊真司と申します。」

今度も完璧とはいえないが、まあ普通の自己紹介になった。

「あら、あなたが榊さんだったのねー。私はフレイヤ、ここの塾長をしている者ですー。」

「塾長!?ええと、本日はよろしくお願いします!」

「はーい。よろしくお願いしますねー。」

フレイヤは納得がいったようで、真司を面接のために塾内に招き、真司もそれについて中に入った。

「あれ?私は………?」

金髪の少女、ゼウスは呆然としていた。


塾内は入ってすぐが少し幅のある廊下のようになっており、右と正面にそれぞれ教室があった。廊下の左側の壁には資料の入った棚やコピー機が置かれている。

「ここの中で待っててもらえますかー?」

フレイヤに右側の教室に入るように指示され、中に入ると学校机とイスのセットが向かい合わせに一組並べられており、そこで面接をするのだなと真司は理解した。

座って待っているとフレイヤがドアをノックして入ってきた。

真司も立ち上がり、先ほどと同じように挨拶をする。お互いに向き合って座り、面接がはじまる。

「えーと、榊さんは今大学生でしたよね?」

「はい!」

「どうしてうちの塾で働こうと思われたんですか?」

「私は、以前から人に勉強を教えることが好きでして…………」

まさかカミコロ4のためですとも言えないので、なんとなくそれっぽいことを答えておく。

「そうなんですねー。今回は夏期講習のアルバイトですがどのくらいの日数出ていただけそうですか?」

「ええと、盆には帰省を考えているのでそれ以外であれば可能です。」

「わあ、それはありがたいですねー。」

その後もいくつかネットで見たような質問をされ、ネットで見た返答を返していった。

「それでは最後に。これは重要なことなんですけど、榊さんは何か信仰されている宗教はありますか?」

「え?」

宗教。宗教といわれても経を読んだこともないし、クリスマスは家族とケーキを食べる日で、豚肉だって食べるし大学も文学部だ。今までそんなことを聞かれたこともなかったし、考えてみたこともない。どうしてこんな質問をするのだろうか。もしかして何かに勧誘されるのだろうか。いやいや、決めつけてはいけない。ここは正直に答えるべきだ。そう考えをまとめた真司は「特にないです。」と答えた。

「あらー、よかった。それなら大丈夫そうですねー。榊さん、合格です。これからよろしくお願いしますね。」

「本当ですか!?ありがとうございます!こちらこそよろしくお願いします!」

合格という言葉に真司は胸を撫で下ろした。これでカミコロ4へ一歩近づけた。

「えーと、それで勤務内容なんですけどー。」

「あ、はい。何年生の担当だとかどの教科担当だとかですか?」

「いえいえ、何年生とかはないんですけど、榊さんに担当していただく教科は人間学ですー。」

「人間学?倫理だとかですか?」

「まあ似たようなものですねー。うちの神様たちに人間はこんなものなんだよーっていうのを教えていただく感じですー。」

この人は何を言っているんだろうか。お客様は神様ですとは聞いたことがあるが、本当に神様と呼ぶものなのか。それに人間はどのようなものか教えるとはどういうことなんだろう。

「あの、あんまり話が見えないんですが………」

「あらー、でしたらもう少し細かく説明しますねー?」


フレイヤの説明によるとこうだ。ここ、フレイヤ塾では神様の子供たち、つまり神様見習いの子が集まっている。神様は人間からの信仰がないと生きていけないので、人間について理解しておき、崇められなければならない。そこで本物の人間に人間とはなんたるかを教えてもらおう。ということらしい。


「あの、そんな神様とか言われても正直信じられないというか…」

真司は素直な感想をフレイヤにぶつける。

「そうですよねー。では、信じてもらえるように少し奇跡をお見せしますねー。」

ますますわけがわからなくなる。やっぱり変な宗教の勧誘なのか。

そう考えている真司をよそに、フレイヤはポケットから何かの種を取りだし、手のひらに乗せた。

「ちゃんと見ててくださいねー。」

フレイヤがそう言うと、彼女のての中にある種が光りはじめた。

「うわっ!?」

真司は思わず手を顔の前に持ってきたが、不思議とその光は眩しくなく、なぜだか暖かいような、心が安らぐような感じがした。

まもなく、フレイヤの手のひらの種は芽をだし、茎を伸ばし、葉がしげり、小さな赤い実をつけた。

目の前で起こった 奇跡 に真司は目を疑った。手品だとしてもどんなタネを使っているのか理解できなかったし、小学生のころ見た教育番組の植物の成長の早送り映像でも見せられたようだった。

「すごい………」

思わず口に出る。

「やだなーもう、誉めても何も出ませんよー?」

目の前の奇跡を起こした女性は少し照れながら微笑んでいる。まるでこんなことできても当たり前だとでも言うかのようだ。

「信じていただけましたか?」

フレイヤの問いかけで真司はようやく思考するだけの余裕を取り戻した。今日はよく圧倒される日だ。

目の前の女性がやってのけたことは正直信じられないし、彼女が神だと言われても簡単にはい、そうですねとは今まで19年間積み上げてきた真司の常識が言わせてくれない。しかし、少し考え直してみると、特に真司にデメリットもないのである。仮に、今までの説明が本物のことだとして、人間はどのようなものかを教えるだけでお金がもらえ、そしてカミコロ4が手にはいる。もし変な宗教に勧誘されそうになったらその時は逃げてしまえばいい。


「わかりました。人間学、教えさせていただきます。」

真司はフレイヤ塾で働くことを決意した。

「わー、ありがとうございますー。授業は明日からなので今日は帰っても大丈夫ですよー。朝の10時に授業開始なので9時半までには来ておいてくださいねー。」

色々疲れていた真司はこの言葉が一番嬉しかったかもしれない。

「はい、それでは明日からよろしくお願いします。」

そう返事をしながら、真司は何かを忘れているような気がした。


ズバーン!!


教室から出ようとしたところでドアが勢いよく外から開け放たれる。真司とフレイヤが驚いていると、そこには顔を真っ赤にして怒りに震えるゼウスの姿があった。

「あ、忘れてたわ。」

思わず口に出た真司の言葉を聞いて、ゼウスは真司を睨み付ける。

「あ、忘れてたわじゃないわよこの地味メガネ!いかにも正ヒロインって感じに登場したこの私を放っておくなんて!」

いやいや、ヒロインとか何を言っているんだこの子は。

「もー、ゼウスちゃん、新しい先生になんてこと言うのー。明日からお世話になるんだからちゃんとご挨拶するのよー?」

フレイヤがゼウスをなだめようと声をかける。先生という響きに真司は少し心がときめいたが、ゼウスの大声にむりやり意識を戻される。

「フレイヤだってひどいわよ!私がこの教室に入ろうとしたら結界張ってあるし!」

「だってそうしないとゼウスちゃん面接とか関係なしに怒りに入ってきちゃうじゃない?」

「当たり前でしょ!面接の前に私を無視しなかったらこんなことしてないわよ!」

「あらあらー、構ってほしかったのねー。ごめんね、ゼウスちゃん。」

フレイヤさん、それ謝罪じゃなくて煽りです。

「はあ!?違うもん!違うわよ!違うんだから!」

顔をさらに赤く染め、ゼウスは教室から走り去っていった。フレイヤさん、優しそうな人だと思っていたがもしかしたらものすごく怖いかも。

「あらー、ごめんなさいね榊さん。彼女ちょっと怒りっぽいけどとってもいい子なのよー。許してあげてねー。」

「は、はあ。」

ゼウスに怒鳴られてまた圧倒されていた真司は微妙な返事しかできなかった。

神様の塾講師 第1講を読んでいただいてありがとうございました。物語のメインの舞台となるフレイヤ塾で、いよいよ次回から真司のアルバイトがスタートです。まだまだ他のヒロインもおりますのでどうぞお楽しみに。

では、よろしければまたお暇なときにでもお付き合いください。

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