五年前の誓い (草魏×不知火)
すっごく、甘いです。甘いのが苦手な方は見ないことをお勧めします。
「うわぁ…」
「綺麗だな、桜」
「うん!」
俺達は今日、芙蓉園に来ている。
理由は俺が偶々暇だったから。それで草魏を誘おうと想ったまでだ。
彼奴は桜が大好きだと言っていたし、今の季節丁度芙蓉園は桜の花見客でいっぱいになっていると思う。
でも理由は其れだけじゃない。
最近、有る真実を知ってから草魏の表情は暗くなっていたから。
せめてその顔を笑顔に戻してあげたかったから。
今の草魏は、今までに無い位のとびっきりの笑顔。
近くにあった桜を枝から手折る。
「一寸!芙蓉園の花を折っちゃ駄目じゃない」
「いや、ちゃんと理由があるから」
「…え?」
俺は、その桜を草魏の髪の所にそっと挿す。
丁度桃色の服を纏っていたのか、更に可愛いと想ったのは言うまでもない。
それ以前に、一つ一つの仕草に俺は心拍数が異常な数になってしまう。
「似合うな、草魏が付けると」
「そ……そうか?私、そんなに可愛い女じゃないと思うけど」
「其れとこれとは違うんだよ」
(とっ取り敢えず……可愛すぎ何だよ、草魏)
若干からだが熱く感じた俺。
…本気で草魏が好きなんだなぁ…。
改めてそう思った瞬間だった。
俺は、惚れ弱みを偶に起こしてしまう。
木刀を交えずとも惚れ弱みの所為で負けてしまうこともしばしば。
…いい加減、告白って奴をしないといけないのかなぁ…。
「不知火?」
大丈夫?と俺の顔をのぞき込む草魏に更に顔の温度が上がる。
(くそっ、反則だぞ草魏!!)
大丈夫だ、と言ってまた歩を進める。
春になれば一段と草魏が可愛く思える。
桜が好き故に可愛さが引き立つのかもしれない。
「な、なぁ草魏」
「ん?どうした?」
「俺がさ、もしも『草魏が好きだ』って言ったらどうする?」
「ど、どうって…?」
「取り敢えずどう答えるかって事」
「…………『私も好きだよ』って答えるかもしれないなぁ…。ってまさか不知火私のこと…!!!」
「いや、ちっ違うって!」
「はぁ吃驚させないでよね」
違うわけ無い。
本気でお前のこと、好きなんだぞ?
この世で一番。
例え、草魏より可愛い奴が出てきてもお前しか見ないから。
大胆に言うと、お前を中心に世界が回ってるみたいな。
草魏の身に何かあったら、俺自身が平常心でいられなくなる。
この手で、必ず草魏を守ると決めたから。
…あの五年前の約束で。
『草魏』
『どうした、不知火』
『俺、決めたんだ』
『何を決めたの?』
『必ず、草魏は俺が守る。危険な目に遭わせないって、誓う』
『し、不知火…?』
『ずっと俺、考えてたんだ。…あの事件で、草魏が凄い怪我を負ってしまったのは………俺の所為なんだって』
『不知火……』
『だから…絶対、俺が守るって。何があっても必ず、俺が守るって』
『それだったら、私も不知火のこと守る。…此処まで真剣なら、私だって真剣なんだからね!』
……ふっ、と笑った瞬間だった。
何処からか、悲鳴のような声が聞こえてきた。
俺と草魏も同時に振り向く。
(ぞ……賊!!!!)
辺り一面が血の海に変わっていた。
凄い勢いで賊、一人がこちらに向かっている。
(まさか、草魏狙い!?)
「不知火…あれ、私が狙いなのか」
「恐らくな!!!」
そう言ったと同時に、懐に忍ばせておいた剣を抜き、賊の剣を受け止める。
「ふん、邪魔が入ったか」
「草魏狙いなんだな!?」
「そうだ。私が狙っているのは草魏娘子のみ。後は要らぬ」
「草魏には指一本触れさせない!!!例え、俺が草魏より剣術が下でも必ず守ると誓った!だから絶対に草魏には指一本触れさせない!!!」
「誓いだかなんだか知らないが、今のお前の力じゃ私を倒すことは出来ない」
そう言われた瞬間、俺の腹当たりに痛みを覚えた。
賊のもう片手にあった短剣で腹に一発食らわされてしまった。
「不知火ーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
草魏が思いっきり叫んだ後、倒れた俺に向かって賊は一言言った。
「だから言ったのに。今のお前の力じゃ私を倒すことは出来ないって」
「良くも…良くも不知火を!!!!許さない!」
霞の向こうで、草魏と賊が剣を交えていた。
草魏の表情が明らかに怒りに満ちていた。
馬鹿だな……俺。
自分で守るとか言っておきながら、弱すぎじゃねぇか。
やっぱり、草魏には勝てないんだな。
剣も、何もかも…。
そう思ったと同時に俺は、意識を失ってしまった。
***
何で!!!何で不知火をこんな目に!!!
「アンタは何で私を殺りに来た!!」
「邪魔だと総帥が言っておられた。…だからだ」
「だから何だ!私はそう簡単に死にはしない!少なくとも不知火の前では……絶対に…死なないんだから!!!!」
そう言ったと同時に、賊の腕を斬りつけ次は横っ腹を斬る。
賊はぐらっと揺らめいたが直ぐに立った。
だけど、口から出た台詞は意外な物だった。
「ちっ……覚えてろ」
賊はそう言って、そそくさと去っていった。
後ろ姿が消えた途端、不知火の方に駆け寄る。
「不知火!!不知火!!!ねぇ、起きてよ!不知火!!!」
気が付かないうちに涙を流していた。
息はあるから、まだ生きている。
起きてよ…と二三度言ったとき、うっすらと緑の瞳を開けた不知火。
「くさ……ぎ?……お前、何泣いてるんだよ」
「だって………心配だから」
「…心配してくれて、有難うな草魏。…それと、御免」
「え?」
「五年前、約束したのに『必ず、草魏は俺が守る。危険な目に遭わせないって、誓う』って。なのに、こんな様になるなんて」
「そんなのどうだって良い!不知火が傷ついたの……私の所為だ」
「お前の所為なんかじゃないから……俺が、弱かったから。心も剣術も何もかも」
不知火は、そう言って力なく笑った。
まだ草魏には何も敵わないよ、と更に言った。
「だけど、そのお陰でお前無傷で済んだんだろ?」
「そんな…こんな形で守られても、嬉しくも何ともないよ」
「だよな……。俺、また特訓しないとお前を守ってやれない」
「…………守らなくても、良いよ」
「え?」
「私が守ってあげれば良いじゃないの。もう……不知火が傷つくの、見たくないんだよ」
私はそう言って、また新しい涙を作った。
「ったく、泣きすぎ」
「五月蝿い」
不知火はいつの間にか起きあがっていた。
傷、痛くないの?と問うてしまう。
「痛くねぇよ、これ位。……本当に有難う、草魏。お前に守られっぱなしだな、俺」
「馬鹿言うな。私の方こそ守られっぱなしなのに」
「今の今までこうして生きてられたのお前のお陰だよ。…本当に、心の底から感謝してる」
「やだな、私そんなに感謝されるようなことして……!!!!?」
ふと視界が暗くなる。
……唇が重ねられて、言葉自体が言えない。
唇が離れた後、私は一瞬固まって物が言えなかった。
「ちょ……不知火!?」
「御免。…今まで言えなかったけれど……好き、なんだ」
「そんなっ、どうして…」
「知ってる?俺、あんな約束お前のこと想ってないときっとしてなかったはず…そのころから既にお前のこと、好きだったんだぜ?」
「……どうして」
「え?」
「どうして、早く言ってくれなかったのよ!!!」
「え…いや、ちょ…」
同じなのに。気持ち、全て同じなんだよ私も。
不知火と、全く。
「…え?」
「ずっと想ってた。…どうして、こんなに不知火って格好いいんだろうって」
闘う姿も、何もかもが格好良くて惚れていた私が居た。
(こんなにべらべら喋る私って何か変じゃない?)
「馬鹿みたいな話だけどさ、本当のことなんだ」
「……有難う、草魏」
「へ?」
「ホント、お前みたいな奴好きになって良かったよ。…とっ、取り敢えず何とか治療してくれね?腹思いっきり刺されて痛ぇんだ」
「はいはい。…歩ける?」
「何とかかな。…治らねぇと、お前の稽古受けられない」
「やだなぁ絶対受けろとは一言も言ってないのに」
「駄目だ。治らないとお前を守ってやれない」
「まだ言うか。私は大丈夫だって言ってるでしょ?心配すんなって」
「するから言ってるんでしょうが!!!」
そんな言葉を交わしながら私達は邸に向かって戻っていった。
後日――。
「…もうっ!!本当に恥ずかしい思いした!!」
「あーだから御免って言ってるだろ!?彼はわざとじゃないって!!」
「分かってるよ!わざとじゃないの分かってるよ!緊張って言うか……接吻とか未経験だから!!!」
「俺の思いが詰まった奴で緊張だとぉ!?巫山戯るんじゃない!」
「巫山戯てなんか無い!!今、言ってることは全て本当なんだから!!!って言うか、俺の思いが詰まったって言うのが凄く余計!!!」
「はぁ……取り敢えず、御免」
「う、うん」
いきなり謝られて一寸拍子抜けた私。
…だけど、正直嬉しかった。
想いをこうして伝えられたから。
さぁ稽古やるぞ、と私は朝日に向かってそう叫んだ。
あとがき
はっずかしいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!(←
滅茶苦茶恥ずかしかったです>///< これ描いてるとき。
何画詐欺と不知火って甘いのしか思い付かなかったんですよ。といっても、今は一寸別のを作成中ですけど。
取り敢えず…恥ずかしすぎて我ながら変なことをしたと反省中(苦笑)
ではでは。