こんな夢を観た「今日の占い」
つけっぱなしのラジオが時報を告げた。ぼーっとした頭でラジオからの声を聞く。
「はーい、たった今、朝の6時になりましたよ-。今朝の『面占い』を始めましょうねー。本日の『鼻ぺちゃ』さんの運勢は……おやおや、何だか不穏な雲が近付いていますよ。これは……。ま、まあ、占いなど気にしないことです。今日も1日、無事に過ごせますように!」
わたしは思わず、自分の鼻に手を当てる。「鼻ぺちゃさん」というのは、自分のことではなかろうか。
袋から取り出したままの食パンにマーガリンを塗って、冷たい牛乳と一緒に流し込む。
愉快とは言えない目覚めのせいか、いつにも増して味気ない。それでも、しっかりと4枚は食べる。
歯を磨いて顔を洗い、ポストに突っ込まれた新聞を取る。
何気なく開くと、またしても占いの欄。
「ふんふん、何だって? 『あほ毛のあなたの元に、望まざる訪問者来る』かぁ」もう1度洗面所へ行って、鏡を覗く。頭のてっぺんで、あほ毛が見事、ニョキッと立っていた。
今日は、わたしにとって「ヨナの日」なのだろうか。何だか、感じが悪い。
「ごめんくださーい、『朝飯サービス』ですっ!」と声がし、ドンドンッとドアを叩かれる。
「はーい、はいはいっ」わたしは急いでドアを開けた。
いかにも「食堂のおばちゃん」といったふうの相手から、布巾の掛けられたお盆を突き出される。
「毎度っ。はい、朝飯っ!」
「あ、ありがとうございます」朝食の出前らしい。
「何の、朝飯前っ!」
それならもう済ませました、と言い返したいところをぐっと押さえ、代金を払う。
考えたら、こんなサービス頼んだ覚えはなかった。
「でも、受け取っちゃたんだから、食べるよりないな」
2度目の朝食を、もそもそと取り始める。
食後は、つい甘い物が欲しくなるものだ。
「昨日買った、高島平屋のエクレア。あれをミルク・ティと一緒に食べようっと」
1個だけのつもりが、箱に入った分すべて、ぺろっと消えていた。
「エクレアって、稲妻のようにあっという間になくなっちゃう」などと言い訳をしている。この部屋には今、わたし1人しかいないというのに。
お昼が近くなり、ポテトチップスをつまみながら、ソファーでテレビを眺める。
「グルメ占い『グルグルンパッ!』の時間がやって参りました。さてさてさて、今日のグルメは『納豆餃子グラタン』でございますよっ。『納豆餃子グラタン』が大好きだという、そこのあなた!」そう言って、司会者がカメラに向かって指を差す。
わたしはドキッとして、身をのけぞらした。そんな無気味な料理をグルメと呼んでいいのかどうか。
悲しいかな、自分で自分の品性を疑うが、わたしは「納豆餃子グラタン」が大好物らしかった。
「ソファーにかけて、ポテチを食べてる、そこのあなた、あなたですよっ!」司会者は畳みかけるように訴える。「もう間もなく、あなたに、木炭と水の化け物が、総重量780キロで襲いかかることでしょう!」
わたしは恐ろしさに震えあがった。
木炭と水の化け物だって? しかも、780キロもあるという。きっと、トールキンの物語に出てくるエントのようなモンスターに違いない。物語の中では話のわかる、比較的穏やかな種族だったが、これからやって来るという化け物もそうとは限らない。
第一、襲いかかってくる、とはっきり言っていたではないか。
玄関や窓の戸締まりをしっかり確かめ、毛布に身を潜ませた。懐中電灯やおやつの箱入りドーナツ、ドクター・ペッパーなどと一緒に。
家の周りを何者かが忍びよる足音がしやしないか、じっと聞き耳を立てる。
けれど聞こえてくるのは、クルマや、時折通り過ぎる自転車の音ばかり。怪しい物音は、何一つしなかった。
毛布の中でドーナツに囓りつきながら思う。
「そいつはどこから来るって言ってたっけ?」毛布の端が、少しめくれてきた。隙間から怪物が手を伸ばしてきそうな気がして、慌てて塞ごうとする。
さっきまであんなにゆったりとしていた毛布が、すっかりパンパンだった。まるで、洗濯に失敗して縮んでしまったウールのように。
「もしかして、もう来てるのかもしれない。外からじゃなく……」
毛布はますます、めくれ上がっていく。




