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Loves And Bonds  作者: katy
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始まり

 もうすぐ5月も終わる。

 そう、それは夏休みが始まるということ。


「これが今学年最後のテストです。みなさん、気を抜かず頑張りましょう。それでは・・・」


 先生の合図がかかるまで、どのくらいの時間待っていただろうか。1分?10分?いや、1時間だろうか。


「始めてください」


 実際には5秒も待っていなかったかもしれない。だけど、私にはもう何分も、何時間もこの言葉を待ちわびていたような気がする。

 そして次に思う。

 テストを終えて、最初にこの教室を出るのは誰?

 私には今回も消しゴムの用意は、特に必要ではなかったようだ。


私は鉛筆を置いた。そして、少し後を向いてサムに目配せをする。

 だが・・・

 サムは机の上のテスト用紙に額をつけて、びくとも動かない。

 ルーナは厭きれた顔をし、そのまま席を立つ。そして、テスト用紙を教卓の上に置き、教室から出た。

 テストを終え、教室の扉に初めに触れたのは・・・

 彼女だった。



 初夏のまぶしい太陽の光がアスファルトに反射してまぶしい。濡れた芝生に当たるキラキラと輝く日光が視界を包み込んでる。

 夏は特に好きではない。嫌いでもない。ただ、退屈に感じるだけ。でも周りのみんなは夏休みが永遠に続くことを望んでいるみたい。私には相当考えられないことだけど。


 夏休みのどこが天国なの?2ヶ月も学校が無いなんて、みんなそんな長い期間何をするっていうの?

 私にはそんなに長い休暇が必要だなんて思ったこともない。考えただけでいつも答えは出ないし、考えるだけ無駄。私には毎日の学校、毎日の生活、毎日の友達。それだけで十分だと思う。もちろん新しい何かを求めるのもたまには可能なことかもしれないけど、今の自分には必要ないこと。


 だってよく言うでしょ?子供に一番必要なのは「学力」だって。みんな言われるでしょ?ママやパパに勉強しなさいって。

だから私は思うの。今の自分に合っている生活を繰り返して成長していけばいいって。まぁ言ったら簡単だけど、私には新しいことをしようと思ってないってだけかもしれない。そう、私には新しいことは必要ないの。

 夏休みなんて、必要ないの。



「おかえりー」


 玄関の戸が閉まる音と同時にリビングからハリーの声がした。野球の試合をTVで観ている様だ。


「ただいま」


 ルーナは肩から外したリュックをキッチンのカウンターに置き、冷蔵庫からオレンジジュースのビンを出した。


「テストはどうだった?」


 ハリーはビール缶を手に持ちながらソファーの背もたれから身を乗り出す。


「いつも通り・・・」


「楽勝」


ふっと笑ってルーナはコップに注いだオレンジジュースを一口飲んだ。


「さすが」


 そう言ってハリーもそれに続いてビール缶を口に運んだ。ルーナはリュックを持ち二階へ上がる階段へ向かう。

 するとハリーが忘れていたことをちょうど思い出したかというように言った。


「あぁ・・・、今日はサムと帰ってきたのか?」


 ルーナは顔をしかめた。


「パパ。サムとはテストの日に一緒に帰ってきたことは一度も無いわ。知ってるでしょ?」


「あぁ、そうだったな。」


 そう言いながらハリーは少し申し訳なさそうな顔をしてまたTVに視線を戻した。


 そう。私はサムと毎日登下校を共にしている。というか、登下校ってだけの仲じゃない。

 家が向かいだし、お互いにその家に生まれて育ってきた。要するに幼馴染ってこと。しかも私のママとサムのママが高校時代からの親友で、私たちもその流れって感じ。

 サムは小さい頃から強気な性格で、彼女のお兄ちゃんのジョンとは常に対立してた。言ったらサムに怒られるけど、それはまさに男VS男の戦い。本当に凄いの。喧嘩の発端はとても些細なことなんだけど......。なぜかわからないけど、私もよく巻き込まれるの。もう本当にうんざりしちゃう。関係のない私まで最後には怒鳴り散らしちゃうんだから!でも喧嘩の後は絶対に仲直りしてる。ベタベタくっついてっていう程仲がよい兄妹ではないけど、普段はちょっと意地悪な行為にお互いにふざけ合ってもめてたりするわね。見てるのが凄く面白いの。あの二人と一緒に居るのはいつでも時間を忘れちゃうほど楽しい。


 私は一人っ子だから兄妹についてはあまりよく分からないけど、ジョンは最高のお兄ちゃんだと思うわ。だからサムをとても羨ましく思う。

それから......、サムは勉強が苦手。いや、苦手なんじゃなくて、できないの。そう、サムは勉強ができない。それはサムが悪いんじゃなくてサムのママのジェンナが......できない子だったから。そう、遺伝なの!私もそう。私が勉強できるのは、ママが天才だったから。ほらね、絶対偶然なんかじゃない。遺伝なのこれは。サムがどんなに勉強しても、頑張っても、ジェンナにできなかったのだからサムにはできない。まぁサムが自分から勉強するなんてことがあったら、この時期に大雪でも降ってきちゃうんじゃないかしら!逆に私が勉強をしないなんて言ったら......。同じね。太陽が照りつける中、地面が凍ってしまうと思う。私たちは全く正反対の性格だけれども、ずーっと一緒なの。親友なの。私のママとジェンナもそう。性格なんてみんなそれぞれだし、共通点が全くなくても互いの間に強い絆があれば、それが人と人を結んでくれるの。


とにかく、そんなことがあってサムとはテストの日だけはどうしても一緒に帰れないの。だってテストが終わって一番初めに教室を出るのは私で、一番最後に出るのが......

サムなんだもの!


ルーナは二階に上がり自分の部屋に入ると、リュックから教科書とリングノートを取り出した。

そして勉強机に向かい、教科書とノートを広げ、ペンを走らせ始めた。



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