トマドイ× 2
我に返ると 阿部さんが 覗き込んでいた
「大丈夫ですか?」
「 大丈夫です 少しボ〜ッとしてしまって」
「もう びっくりしましたよ 何を話しかけて
も全然反応ないから」
「驚かせて ゴメンよ」
「儂は そろそろ仕事に戻るからの〜」
「あ 色々有難う御座います」
「先生 有難う御座いました」
俺達が礼を言うと 医者は少し誇らしげな顔を
して 言った
「大した事はしとらんよ」「じゃあの〜」
医者が出て行って 暫くして俺達も病室を出た
病院の廊下を 俺達は無言のまま 歩いた
話題がない訳ではない ただ二人で歩いている
それだけで いい そんな気分になった
阿部さんは どう思っているだろうか?
全然 会話が無くて つまらない とかって
そんな風に 感じているだろうか?
そう思われても 仕方ない
そんな事を考えている時だった
「あの 帰りは どうするんですか?」
阿部さんからの素朴な疑問だった
そう言えば 倒れたから 救急車で運ばれた筈
帰りの事は 何も考えてなかったな・・・
「帰りはタクシーにするよ」
「タクシーにするなら 私が送りますよ?」
「え?」「いや そこまでしてもらうのは
悪いから いいよ」
「そうですか」「そうですよね 私なんかに
送ってもらってるのを もし会社の方に見られ
たりしたら 嫌ですよね・・・」
「いやいや そういう事じゃなくて」
「あ 大丈夫ですよ 気にしないで下さい」
手を横に降りながら 寂しそうな目をした様に
見えた その目を見て 俺の胸が何故か 痛んだ
「あ〜 そう言えば 手持ちのお金が 少なくて
タクシー代が 足らないかもしれない〜」
「困ったな〜 誰か送ってくれないかな〜」
すると阿部さんの顔がパッと明るくなった
「じゃあ 是非私に 送らせて下さい!」
「おおお! 有難う!助かるよ!」
そして二人は顔を見合わせて笑った
俺は思った 何か こんな感じ いいなって
ダメだ 俺の勘違いだったらどうするんだ!
会社の上司に言われて 来たかもしれないんだ
それに それに・・・
「何してるんですか〜置いていきますよ〜」
「あ〜 ちょっと 待って〜」
あれやこれやと 下らない事を考えながら
阿部さんの車に乗り込んだのだった




