カイソウ
俺が頬を押さえていると 医者が口を開いた
「二年程前にある男性が 検診に来たんじゃ」
「二年前に ある男性?」不思議そうな 顔を
している俺に構わず 医者は 話を続けた
その男性の会社は 倒産寸前で大変じゃった
重要なポストの役員達は 頑張った
その男性も 役員の 1人でね
休みも返上で役員達は頑張った
その内男性は 体調がおかしいのに 気付いた
だが そんな事言ってる場合じゃない
そう言い聞かせて男性は 仕事に打ち込んだ
だけどその体調不良は 直ぐ家族に気付かれた
妻は男性の体を心配して 病院に行く様にと
何度も言ったが 男性は全く耳を貸さなかった
上司の進言にも 耳を貸さなかった男性が
ある日娘さんに連れて来られて 言ったんじゃ
「娘にお父さんだけの 体じゃないんだよって
泣いて怒られてね 全く情けない話ですよ」
「いい お子さん・・・」
レントゲンを見たら その先の言葉に詰まった
男性は手のうち様の無い 末期癌だったんじゃ
医者にはそれを 家族に伝える義務があったが
それを 娘さんに伝えるのは とても辛かった
そして 男性は急な呼出しで 会社に戻った
儂は娘さんに 男性の余命が半年だと 告げた
泣き出すと思ったが 娘さんは泣かなかった
「言ってくれて 有難う御座います」
そう言って お辞儀をすると 帰ったんじゃ
「その娘って ひょっとして・・・」
「そうじゃ 阿部 和美じゃよ」
そして 叩かれた頬と言葉の意味が分った




