オレイ
阿部さんに 腕を引っ張られたまま 表に出た
そして暫く歩くと 手を離して 言った
「気を使ってくれて ありがとう」
その言葉に 驚いた
何故 ありがとう なんて 言えるんだ・・・
俺は 何を言えばいいか分らず 黙っていた
するとそれを察したのか 彼女が口を開いた
「父が亡くなり 母が精神的に追い込まれて
おかしな宗教にハマって 騙されたのよ」
「最後には金品を全部 差し出しちゃってさ」
「 止めたけど 父の為だからとか言って」
「母は 騙されてるのが 分ってて それでも
何かに縋りたかったんじゃないかな? 」
「そう思うと 仕方ないかなって」
そして少し沈黙の後 空を仰いで 言った
「お金も何も 無くなったけど 私にはまだ
母が居る だから貧乏って言われても大丈夫」
「大事なのは これからだから」
そう言って笑顔で俺を見た
その笑顔に 俺の胸がドクンと 高鳴った
「顔が赤いけど 大丈夫ですか?」
そう言って 覗き込まれて 俺は驚いた
「だ 大丈夫」「それより店もうすぐだから」
「はい でもやっぱり何だか悪い気がします」
「俺が誘ったんだから 気にしないでいいよ」
「それに お見舞いと送ってくれた 御礼も
兼ねてだから」
「でもお見舞いと言っても 何も買ってないし
送ったのもあんなボロ車だったのに・・・」
俯きながら 阿部さんは 呟いた
「お見舞いと送ってくれた御礼だから」
「分った?」
俺がそう言い直すと 顔を上げ笑顔で言った
「は はい」「ありがとうございます」
そして 目的の店へと 向かったのでした




