シャコウジレイ
阿部さんの車・・・凄いな・・・
「あの ボロい車で すいません」
「いや・・・そ そんな事 な ないよ」
明らかに社交辞令 そう分かる返事だった
だが 本当に ボロかった・・・
窓が手動で これカセットテープを入れる様に
なってるし エアコンも付いてないって
それに走りながら 時々変な音もしてる・・・
だ 大丈夫か 分解しないだろうな
等と失礼な事を考えていると
「こんな車でホントにごめんなさい」
そう言った 阿部さんの目から 涙が一筋の
線を引き伝い落ちた
その光景を見て思った 阿部さんに泣きながら
そう言わせたのは 俺の所為だ 最低だと
そう思った時 自然と口が開いていた
「車は走れば どれも一緒だよ」
これは社交辞令じゃなく 本心だった
「有難う 嘘でも 嬉しいです」
「いやいや 嘘じゃないよ」
「有難う」そう言って 阿部さんは笑った
涙を拭いながらの笑顔だった
その阿部さんの 笑顔が見たかった事に
この時の俺は まだ気付いていなかった
そして 車が揺れる度に 途切れる音楽を聴き
ながら 俺は無事 マンションに 着いた
「色々と有難う 本当に助かった」そう言うと
阿部さんは ハンドルを握り 前を見たまま
「会社では 私に話しかけない方がいいかも」
「え? ちょっ・・・」
走り去った車を 俺は暫くの間見ていた
何故あんな事言ったのかは 気になったが
俺は 三日ぶりの我が家に 戻ったのだった




