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けっちゃくがついても、それでおわりではありません

本来このお話は2話で完結する予定でした

それがどうして3話となったかというと・・・長くなっちゃったんだね!


ではでは、最後の1話、少しばかりお付き合いくださいませ

 さてさて皆さん、そろそろこのお話に飽きたりはしてきているでしょうか?もしもそうであったら、私の力不足により皆様に不快な思いをされてしまったことをお詫びしたいかと思います。申し訳ございません。

 しかしそうでもなかったら、どうか後少しばかし、皆様の貴重なお時間を頂けたら恐悦至極です。

 ところで、皆様の中でこのお話に『バトル』やら『レンアイ』ましては『ユージョー』等という、お話を面白おかしくする魔法の言葉を求めている方はいらっしゃいますか?もしも居たら悪いことは言いません、そんな幻想はお捨てなさい。

 このお話には笑いも感動も、ましては涙もありません。そういうことは一番最初に申し上げたとおりでございます。では一体何があるのか?とお思いになられた方は、聞き終えた後にこの話には何があったのだろう?と少しばかし考えていただけたらと思います。

 味噌なしの味噌汁の様な、何とも不思議な味を堪能頂けたら、語り手としてこれほどうれしいことはありません。

 では、お話の希望をへし折る前置きもこのくらいにしてお話を続けることにしましょうか。



□ □ □ □



 ギィギィと我が家で最速の名を欲しいままにしている乗り物が悲鳴をあげます。『韋駄天号』と名づけられたソレは、世界でも有数の速さを誇る人力二輪車の仲間と言えるでしょう。製造されてから推定10数年、絶えず雨風に晒され続けたソレは、純粋だった少年が大人の階段を上っていく過程で輝きを失ったかの様な銀色のボディ・・・には落ちようの無い赤茶色の錆びがこびり付き、明日をも知れぬ風格を漂わせています。

 そんな危うい風格の助手席を優雅に乗りこなしているのは、もう皆様にも覚えていただけたであろう私です。以前申し上げたとおり、私は空気の様な存在であり、また自身の重さも羽の様に軽いので、韋駄天号が悲鳴を上げているのは勇者の重さによるものでしょう。

 もはやがたがたで何時荷物が飛ぶか判らない韋駄天号の籠には、動く死亡フラグと名高いスライムさん対策の食物や我々の飲食物等が詰め込まれています。武器の類はありません。もしもあったとしても、スライムさんにはさほど効果は無いかと思われます。

 魔王の城は我が城という名の小屋から韋駄天号で約3日ほどの距離にありました。

 その特に盛り上がりの欠片もない旅の過程は無いものと考えてください。せいぜい、動く死亡フラグであるスライムさんがご登場なさり、お腹いっぱいになられた程度です。

 魔王城は山の上、それも一般人がちょいと散歩に行けば辿り付ける様な場所にちんまりと立っていました。これでは禍々しさも風格も何もあったものじゃありません。

 そしてその下の城下町では平和そのもの。そこには『破滅』や『危機』という言葉は全く感じることが出来ません。仮にも魔王として、それで良いのでしょうか。

 早速街の宿屋さんで部屋を取ると、限界を突破しているのに老後を迎えることなく酷使され続けている韋駄天号を置いて、とりあえず見に行こうかと魔王城へと歩き始めます。

 昼下がり、勇者がのんびりと近寄る姿は宿命の戦いに行く姿には見せません。何とか贔屓目に見たとして・・・お散歩ですか?

 しかも肩透かしというのか何と言うのか、門までたどり着いても何も起きません。もしかして、無人城というオチではないでしょうね?


「ふむ・・・平和ね」


 門の前まで着いてから空を見上げると、ピョンピョンと鳥が飛んでは森の中へと消えて行きます。こんな展開でいいのでしょうか?他の方のお話で聞く魔王城というものはもっとこう、何処に潜んでいたのか判らない量の魔物が現われて行く手を阻んだり、一度足を止めたり迂闊な事をすると天に召される様な罠が満載では?

 私の胸中を、とてつもなく嫌な予感がしてきました。このままでは、勇者が盛り上がりの欠片も無い『魔王不在』とかいう終わらせ方で結末を付けかねません。


「どうやら魔王も居ないみたいだし」


 ものすごく綺麗な笑顔で勇者が締めようとした瞬間、頭上からタライが降って来ます。私は人生で初めて、タライが人の頭にヒットする姿を目撃しました。

 蹲る勇者の代わりに頭上を見上げると、門の上では悪魔さんが微笑んでこちらへと手を振り、勇者が立ち直る前に城の中へと戻っていきました。


「・・・ふっふっふ」


 その様子を眺めていたら、勇者が不気味に笑っているではないですか。どうしたのでしょう?打ち所が悪くて、ただでさえ悪い頭が手遅れになったのでしょうか?どちらにしても、コイツに関して私に為せる事はありません。

 一人頭を抱えて笑っている姿は不気味以外の何者でもありません。

 私が遠巻きにその様子を眺めていると、勇者はガバっと顔を上げ、門から距離を取ります。

 そのまま準備運動をすると、門目指して全速力で掛けていきます。そして数歩手前で地面を踏み切ると、捻りを加えた回し蹴りを門目掛けて放ちます。

 とても痛そうな音がしました。


「・・・っ・・・っ」


 再び蹲って声にならない痛みを訴えている勇者は見なかったことにして、門に寄って触れてみます。木製のソレは少しでも力を入れれば壊れそうな風格が漂っていますが、どれだけ力を入れてもビクともしません。


「・・・あいつら、結界張ってるわね」


 痛みから復活した勇者も私と同じく、門に触れながら呟きました。まぁ、魔王も誰でもオープンという訳にはいかないでしょうし、結界の一つや二つは張っているでしょう。しかし・・・そういうことは・・・。


「もしかして、結界の事はご存知だったのに蹴りを入れたのですか?」

「この私がそんなことも知らずに蹴りを入れたと思うの?」

「・・・」


 やはりこの方は手遅れの様です。

 それからしばらくの間、勇者の無謀とも言える戦いが始まりました。

 ピザの宅配から始まり、警察、探偵、旅人、泥棒と多種多様なコスプレをして、門を開けようと企みます。どうせ挑戦するならもっと可能性を感じさせる挑戦をすればよろしいのに・・・爆破するとか。私的にどう考えても、コスプレで開く事は無いと思うのですが。


「ふむ・・・万策尽きたわね」


 もはや趣味に走っていた最後のコスプレも終えると、勇者がポツリと呟きました。もう少しがんばっても罰は当たらないかと思います。

 見れば日も落ちてカーカーとカラスが鳴いています。


「・・・帰ろうか」


 勇者もさすがに空しくなったのか、私達は宿へと戻り始めます。どうやら勇者と魔王の初戦は魔王サイドの完全勝利と言えるでしょう。



□ □ □ □



 その夜、私が持っていく菓子折りは何が良いかということを考えていると、勇者がポチポチと携帯を弄って誰かに電話を掛け始めました。


「もしもし?師匠?ちょっとお願いしたいことがあるんだけど・・・」


 どうやらコイツ、自力での突破は諦めて偉大な師匠の力を借りようとしている様子。何という事でしょうか!という憤りを覚えるのも何だか無駄の様な気がしたので、お星様を数えて暇を潰します。

 10ほど数えてはどうなったのか判らなくなり1に戻る、ということを繰り返していると、電話を掛け終えた勇者が私の隣に並んで空を見上げました。


「3日くらいで着くってさ。後、菓子折りはチョコレートが良いって」

「なるほど」


 ちょこれぃとですか。けれども、甘いものが苦手な方が居らした場合はどうしましょう?



□ □ □ □



 それから瞬く間に三日の時間が経ちますが、私達がしたことといったら街で観光で『魔王饅頭』を手に入れた程度です。程よい甘さのソレは大変おいしゅうございました。日持ちもするようですし、これをお土産として購入します。

 ところで皆さん『ファンタジー』それも『勇者と魔王』という場合はほとんどの方が『剣と魔法』という言葉を連想するかと思われます。決して『(ガン)防弾服(アーマー)』等という言葉を連想する方は居ないかと思われます。

 そもそも、この世界での銃は『人にはまぁまぁ、魔物にはほぼ絶望的』という立ち位置を確立しております。いくら馬車と自動車がデットヒートを繰り広げるとはいえ、銃を持って魔物と戦うくらいなら、果物ナイフを持って戦う方が効果はあるだろうと言う事実は今や子供でも知っております。

 これははるか昔、時代のことも考えずに大規模な魔女狩りが起きたことに原因があるのですが、その辺りの云々は全く持ってお話には関係ありません。

 そして、魔物の爪は防弾服も布の服も対して変わりません。

 何が言いたいのかというと、勇者は魔王と戦うに当たって用意した武器が銃という事実です。コイツは一体何を考えているのでしょうか?まさかチンピラに殴りこみを掛けるつもりではないでしょうね?

 明日はいよいよ決戦。私の胸中には不安しかありません。



□ □ □ □



 決戦の日、奈々師匠はその偉大さをちっちゃな身体に秘めて、魔王城の門までやってまいりました。師匠は一見すると手ぶらの女の子に見えますが、油断するなかれ。彼女が一旦その気になれば、全身凶器の如く何処からともなくワイヤーやら大剣やらを取り出し暴れ始めます。風の噂では神様すらも切り殺したといわれる彼女。我らが師匠ながら、恐ろしい存在です。

 恐ろしいとはいえ、見ただけではただの女の子なのでその恐ろしさはわからないでしょう。彼女は水色のワンピースの上からぶかぶかの赤いコートを羽織っており、暑いのか寒いのかよくわからない格好をしております。例え猛暑だろうが、中の服は変わってもコートだけは脱がないのですから一種の狂気ですね、アレは。

 しかし師匠とは呼んではいるものの、厳密に言えば私の師匠は別の人であり、主に奈々師匠は勇者に教えていました。尤も、我が師匠を人と呼んで良いのかは判りません。本人曰く、人ではなく幽霊だそうですし。まぁ、そんなことを言ったら奈々師匠も人なのかどうかは疑問が湧きますが。

 まぁ、そんな人外かそうではないかという疑問は置いておいて、奈々師匠の事でしたね。あれはまだ勇者が女装などしておらず立派な男児であった頃、このままでは野に骨を埋めるのではないかと危惧した頃、私達は奈々師匠に拾われました。突如現れたちんまい方を警戒する勇者を師匠は『何となく』という大変意味深な台詞で切り捨て、名前を下さりました。

 そして師匠は勇者に生きる術を叩き込み、戦い方を教え、人生ではあまり使用したくない技術を叩き込みます。一方で、私には炊事や洗濯、食物の集め方などの基本的なことを教えてくださいました。

 今考えるとアレは、私達に別々の事を教えることでお互いが依存しあうようにする、奈々師匠の狙いがあったのではないかと思われます。幸か不幸か、その狙いは見事に的中し、今現在も私は勇者と共に打倒魔王の旅に付き添っているのでございます。


「あんた達は何時までも変わらないね・・・」


 何処かうんざりしたような、けれども嬉しそうな奈々師匠の第一声。私的には、師匠の方こそ何年たってもちんまいままだと言いたいのですが、それを実行するには魔王に棒切れで挑む以上の覚悟をしなければなりません。

 久しぶりに出会ったことによる、感動が巻き起こらない挨拶もほどほどに、師匠は開かずの門へと向き合います。


「で、コレ?」

「うん、そうなんだけど・・・出来る?」

「こんな程度で呼ばれたのか・・・」


 仮にも魔王の結界をこんな程度と一蹴する師匠は、やはり恐ろしくも頼もしい存在です。

 やがて師匠は何処からともなく大剣を取り出すと大きく振り上げ、静かに振り下ろします。大剣は寸分違わずに門と門の間を通過していくと、ガラスの割れる様な音と共に門が開きました。


「さっすが師匠!」


 パブロフの犬の様にすかさず賞賛する勇者。師匠は威厳を保とうと難しい顔をしていますが、思わず緩んでいる頬が何とも可愛らしいです。


「じゃ、師匠。これもって」


 その隙をついて師匠へとバックを手渡す勇者。パンパンとは言わないまでも、ある程度まで膨れたソレは、師匠のちっちゃな身体を半分ほど隠しています。


「ちょっと・・・コレ何?」

「中で食べるおやつとか、もしも中が広かったときに退屈しないようにするトランプとか、その他諸々」

「・・・」


 無言でバックを地面へと落とす師匠。重力に逆らうことの出来ない哀れなバックは、ガチャンという切ない音を経てて地面へと墜落しました。さて、ココからは私も参加しなければなりません。


「あ・・・」

「あ・・・」

「え・・・?何?どうしたの?」


 事前にした打ち合わせどおりに「あ・・・」と呟くと、師匠は不安そうに私達の顔を見渡します。


「あの・・・師匠?言いにくいんだけど」

「・・・何よ?」

「そのバック、武器とかも入って・・・」

「・・・」


 勇者が告げて師匠が無言になると私の出番。がちゃがちゃと中に入っているおもちゃをどかすと、壊れた小銃のパーツや割れたマガジンなんかを地面へと広げます。勿論、これらは最初から壊れていたものを安く仕入れたわけで、落とした際に破損したものではありません。

 最後に唯一壊れないで残っていた拳銃と閃光手榴弾をいくつか取り出すと、無言のまま勇者の隣へと並びました。


「あちゃー・・・見事に壊れちゃってるわね」

「・・・何!?私?私が悪いって言うの!?そういいたいの!?」

「いやー・・・そんなことは言ってないんだけど・・・どうしよう?」

「サァ?コウナッテハ、一度出直スシカナインジャナイデショウカ?」

「・・・」

「そうね・・・せっかくココまで来たんだというのに・・・残念ね」

「・・・」


 私の棒読みが間に挟まりましたが、師匠はそんなことを気にする余裕何ぞ無い様子で、破損したパーツをくっつけたりばらしたりしていました。その姿は子供が玩具を壊したようで大変愛くるしいのですが、ココは踏ん張らないといけません。私は心を鬼にして表情筋に力を入れます。


「わ、わかったわよ!私が付いてけばいいんでしょ!?」


 その努力も無駄と悟ったのか、半分やけになった様子で叫んでしまう師匠。哀しきことに、全ては勇者の手のひらの上と言えるでしょう。手ひらの上でちょこちょこ踊る奈々師匠・・・ソレはそれで、大変愛くるしいものですね。

 こうして、奈々師匠という仲間(バランスブレイカー)も加わり、私達は魔王城へと堂々潜入します。



□ □ □ □



 お城の中ではまさかあの馬鹿勇者が突破してくるわけがないと踏んでいた様で、エプロンをつけ、包丁と鉄の鍋で武装したメイドさんや、箒や叩きをを手にとりあえず時間稼ぎをしようというメイドさん。辛うじて武器は手にした様子ですが髪等はぼさぼさのメイドさん何かが私達を待ち受けていました。可哀そうに、余りにも襲撃が突然すぎてまともな準備をしていなかったのでしょう。

 しかしもっと可哀そうなことに先頭を行くのは奈々師匠。そのちっちゃい身体に秘められた風格は、とりあえずで道を塞ぐメイドさんたちの戦力を根こそぎ奪うには十分でした。

 中には無謀にも震える手で武器を手にする者もいらしたのですが、師匠が一睨みするだけで武器を落とし、腰を抜かし、何も出来ない己の無力さに哀しみの涙を流しました。世知辛い世の中です。

 考えても見てください。

 たとえば、この魔王城が勇者レベル40でクリアできるとしましょう。そうなると、警備の皆様のレベルは大体30弱。そこにレベル100どころか200くらいの化け物が放り込まれたのです。レベル30対200ではどうあがいても勝ち目は見当たりません。

 師匠を一目見ただけでメイドさんたちが戦意を喪失するのも、仕方が無い事と言えるでしょう。しかもその後ろを金魚の糞の如く付いている勇者が自分達より弱く「へっへっへ・・・奈々師匠は本当にお強いお方」等と溢れんばかりの小物臭を振りまいているので、彼女達の哀しみと悔しさは計り知れません。


「そ・・・それが勇者のすることか!」


 武器を持ち挑んだものの、一睨みで腰が抜けてしまったメイドさんが叫びました。その魂の叫びは私達の心に響き、足を止まらせます。当然、勇者も足を止めました。

 そして勇者はその叫んだメイドさんの方へと近づくと、腰が抜けて立てない彼女を見下ろします。


「はっ、負け犬ほどよく吠える!」


 彼女が慟哭をあげる中、我々は奥へと進みます。世の中は世知辛いですが、ここまで外道な勇者もさほど居ないでしょう。いずれコイツが髪型をモチヒカンにし『ヒャッハー』等という謎の奇声を発する事が無い事を祈っております。

 こうして、奈々師匠が戦意を剥ぎ取り、勇者が見下し、私が菓子折りを渡す。という一連の流れで魔王の城をドンドン攻略していきます。もはや無人の野を駆けるが如く、師匠の前に敵なしと言えるでしょう。問題があるとしたら、尤も活躍をしなければならない勇者が何にもしないで進んでいるという事実ですが、こればかりはどうしようもないので目を瞑ります。

 さてさて、いくら魔王城とはいっても他人の家。その様子を細密に語ることは憚られます。たとえ、思わず落としちゃったみたいな色々欠けた壷があったり、廊下の下のほうにある収納部屋に人骨の様な何かが収まっていたとしても、皆様にその事実を語ることは無いといえるでしょう。

 やがて最上階とも言える場所へと付くと、一つの扉がありました。メイドさんの言葉が正しければこの先が魔王の居る場所と言えるでしょう。

 ギィィィィと嫌そうな音をたてて開くラス前の扉。そこには、先日もお会いした悪魔さんがお辞儀をして待っていました。


「お待ちしておりました。魔王様はこの先となっています。ですが・・・です・・・が・・・え・・・?」


 しかし先ほども申した様に、先頭はバランスブレイカーの奈々師匠。いくら中ボスの悪魔さんとはいえ、勝ち目なんぞ全くありません。


「・・・何?邪魔する気?」

「い、いえ・・・少しお待ちください」


 苛々を隠そうとしない奈々師匠にお辞儀をすると、悪魔さんは私の事を手招きしております。はて?この私に一体何の御用でしょうか?


「そ、その・・・あの化け物は何なんですか?」

「奈々師匠です」

「えっと・・・勇者・・・は・・・?」

「師匠の後ろで小物臭を撒き散らしているアレがそうです」

「・・・」


 悪魔さんが見た視線の先では、勇者が「いつもすみやせんね・・・へっへっへ」と溢れんばかりの小物臭を出して遊んでいます。師匠の苛々はアレが原因とも言えるのですが・・・哀しいことに、師匠は勇者が戦えないのは武器を壊した自分のせいと思い込んでいますので、その苛々は積るばかり。


「で、出来れば弱点なんかを教えていただければ・・・」

「そうですね・・・弱点ですか・・・」


 このままでは、悪魔さんが描写不可能な肉片へと変貌を遂げるのは目に見えていますので、どうにか生き残ろうと彼女は必死です。ならば、それに応えて私も必死に考えなければならないでしょう。


「ああ、そういえば」

「あ、あるんですか!?」

「甘い物が好きだと仰っていた事があります」

「は、はぁ・・・」

「お力になれず申し訳ございません」

「い、いえそんなことは・・・」


 私は最後にお辞儀をしてから、師匠の下へと戻りました。その際に勇者が「へっへっへ・・・何話してたんでげすか」等という戯言をのたまいましたが、華麗に無視しました。


「相談は終わったの?いーかげん退屈なんだけど」

「は、はい、そうですね・・・話は変わりますが、今魔王様は午後のお茶の時間なんですが・・・」

「で?」

「ひっ・・・そ、その・・・私はここを守らなければならないので、もしよろしければご一緒して頂けないかと・・・」

「ふーん・・・」


 泣き出しそうな笑顔を保つ悪魔さん、生存戦略に必死です。


「お菓子は?」

「ス、スコーンとクリームが・・・」

「3つね」

「は、はい!それではどうぞこちらへ・・・」


 花が咲くような笑顔で奥の間へを指し示す悪魔さん。同じく、思わぬお菓子にありつけてほっくほくの顔の奈々師匠。


「え・・・ちょっ・・・師匠?」


 そうなると困るのは勇者です。こいつが頼れるのは師匠だけなのですから、ソレも当然といえます。私は戦闘力皆無の付き人なので論外です。


「ココまで連れてきてあげたでしょ?」

「そ、そんな!」

「うっさい!何とかなるでしょ!」


 捨てられた子犬の様な勇者に言い捨てると、師匠は奥の間へと入っていきます。どさくさに紛れて、私も付いていくことにしましょう。寄らば大樹の陰。君子危うきに近寄らず。

 奥の間では写真で見た事あるような魔王が、ナイフとフォークを手にテーブルにお茶の時間を待ち望んでいましたが、突如入ってきた我々を不思議そうに見ます。


「実は・・・」


 無言のまま席に着いた奈々師匠の代わりに、私は悪魔さんからお茶に誘われたということを簡単にご説明します。彼女も納得がいったのか、最初の怪訝そうな顔とは打って変わって、最後にはにこやかな顔で歓迎してくれました。

 魔王は写真で見た格好そのまま、ちんまい身体をローブで包んでいます。けれどもこうして実物を拝見したところで、やはりただの子供にしか見えません。しかしそんなことをいったら奈々師匠も子供にしか見えないので、この場にはお菓子を待ち望んでいる子供が二人居るということになります。しかし世界の命運は未来あるちびっ子が握るより、未来無い大人が握った方がよろしいですね。ちびっ子たちには限りある今を幸せに生きて貰いたいものです。

 テーブルへと着くと、メイドさんが優雅な仕草でカップに紅茶を注ぎ、スコーンとクロテッドクリームをお皿に持って目の前まで運んで来てくれました。その優雅な仕草には師匠もご機嫌のようで、目を輝かせてお菓子と紅茶が運ばれていく様を見つめています。メイドさんの背中には悪魔さんと同じ羽がゆらゆらとしていますので、きっと親戚か何かなのでしょう。

 そしてテーブルの中央付近には水晶があり、監視カメラの様に勇者と悪魔さんの姿を映しています。これは一体何なのでしょうか?

 不思議に思って眺めていると、先ほど紅茶やスコーンを運んでくれたメイドさんが説明をしてくれました。

 どうやらこれは勇者が何処でなにをしているのかを監視するアイテムで、これを見ながら迎撃の準備などをする様です。


「ですが、これには音がありませんが?」

「作戦会議」


 疑問に思ったことを聞いてみると、魔王がぽつりと答えてくれました。答えてくれるのはありがたいのですが、一言過ぎて逆にわかりません。

 謎の言葉の意味を考えていると、今度は口の周りにクリームを付けた奈々師匠が説明をしてくれました。

 何でも作戦会議などを聞いてしまう恐れがあるので、このアイテムは音を拾うことが出来ないそうなのです。

 何というフェアな精神なのでしょうか!魔王サイドがココまで堂々としているというのに、家の馬鹿といったら・・・。

 師匠に付いたクリームをナプキンで拭き拭きしながら水晶へと目を向けると、そこでは戦いを始めた馬鹿と悪魔さんの姿がありました。

 悪魔さんは何か黒い影の様なモノを生み出してはソレを手足の如く操り、勇者へと襲い掛からせています。悪魔さんは一歩も動いていないのに、一人ぎりぎりの回避行動を続ける勇者。一応は合間合間で銃撃しているようですが、弾は届くことなく黒い何かに阻まれます。どちらが優勢に見えるかは言うまでも無いでしょう。

 一方奥の間にて、勇者がぎりぎりで避けていく様を冷めた様子で見守るのは、私と奈々師匠。しかしその勇者の挙動にいちいち手に汗握る様子で真剣に見つめているのは魔王という、どちらが勇者サイドなのかわからない光景が広がっています。

 魔王は自身のスコーンも手につかない様子で、水晶の方を熱心に見つめています。しかし、早くも自分の分を食べ終えた師匠が、魔王のスコーンを魔王と同じくらい熱心に見つめていました。

 師匠が余りにも物欲しそうな目で見つめていたからか、先ほどのメイドさんが溢れんばかりの笑顔で師匠のお皿にスコーンとクリームを盛り付けていきます。そのメイドさんの鼻に血の滲むティッシュが埋め込まれていたということは、さらりとスルーするのが大人というもの。

 気付けば二人の戦いは小休憩に入ったようで、お互いに何かを話しています。けれども音が無いので、私には何を話しているのかわかりません。私に読唇術の心得はないのです。


「大口叩いていたわりには、そんな程度ですか?やはり勇者とは言っても、所詮は人ですか」


 哀しんでいると、ご丁寧に奈々師匠が翻訳をしてくれました。途中からとはいえ、ありがたい限りです。


「・・・忘れたの?それとも無知なの?」


 悪魔さんの挑発に対して、勇者は大胆不敵に笑うとサングラスを掛けます。正直言って、あまり似合っているとは言えません。


「一番最初の勇者は人だったのよ?」

「っ・・・」


 その言葉を聞いたとき、魔王が目を見開いて驚きました。そして私の鋭い観察眼は、魔王だけではなくメイドさんまで硬直している姿を捉えます。その反応は、長年見てなかった人が突然目の前に現われたかの様。しかし、今のやり取りの一体何処に驚く根拠があったのでしょうか?私達は先ほど出会ったばかりです。

 しかし、そんなどうでもいいことを悩んでいる場合ではありません。私と師匠はスコーンを無駄にしないためにもせっせと口へと放り込み、紅茶で流し込みます。

 勇者はそのまま銃を振り上げると、何かを呟きました。すると、今度は奈々師匠が硬直します。どうやら私の知らないところで、何かの因縁が働いているご様子。


『・・・我が名の下に命ずる』


 奈々師匠がポツリと呟くのと、勇者が銃を振り下ろすのと、馬鹿の動作に気付いた私が水晶から顔を背けて視界を手で覆うのはほぼ同時でした。

 水晶からすさまじい光が飛び出しているのが、手の隙間から感じられます。

 ところで皆様は閃光手榴弾というものをご存知でしょうか?名称は様々ですが、ご存知ない方のために簡単にご説明しますと『ピカッドカーン』という奴です。抽象的過ぎてわからないという贅沢な方のために少しだけ詳しくしますと、爆音と閃光が同時に起きます。つまり、目と耳が一時的に使用できなくなります。

 さて、何故今の展開でこんな話をしたのかというと、勇者は銃を持った手を振り下ろす後ろで、閃光手榴弾を放り投げたからです。

 幸いにも音は無かったので私への被害は皆無ですが、直接現場に居合わせた悪魔さんや、水晶をまじまじと直視していた師匠と皆さんはそれはもう・・・言葉に出来ない状態になったでしょう。

 皆さんがそれぞれのポーズで目の痛みに悶えていると、どたどたとドアの向こうから音がしてきて、勇者が飛び込んできました。ここだけ言うと何だかかっこよく思えるかと思いますすが、実際はもつれる足を必死に動かして、前のめりになりながら転げ込んできたと言った方が正しいでしょうか。

 ドアの向こうでは聴力と視力にダメージを受けた悪魔さんが、辺りを出鱈目に切り刻んでいます。どうやらこの勇者、あの地獄の暴風域の中をこちらまで駆けて来た様子。

 しばし生きている喜びを全身で感じていた勇者は、今居る現状を把握しようと辺りをキョロキョロすると、私と目が合いました。


「・・・」

「・・・」


 そのままお互い無言で見詰め合っていたのですが、勇者は状況に気付いた様に立ち上がるとパンパンと埃を払いました。


「ま・・・まさか・・・」


 何故かこちらに銃口を向けて戯言を言い始める勇者。必要以上に音声が大きいのは、まだ音量の調節が上手く出来ないのでしょう。

 一方魔王も突然の勇者登場に視力と思考が追いついたのか、慌てて椅子から立ち上がろうとします。


「よ、よくきた・・・」

「あなたが魔王だったのね・・・」

「・・・」

「・・・」


 私から銃口は外さずに・・・コイツハナニヲノタマッテイルノデショウ?


「あの・・・」

「おかしいと思ってたのよ・・・突然の手紙を持ってきたのもあなた、そしてあの悪魔を連れて来たのもあなた!」

「・・・」


 魔王を完全に無視して何かをのたまう勇者。呆れて何も言えない私に、相手にしてもらえずに涙目になっていく魔王。他の方は未だに閃光の衝撃から抜けれない様子。


「・・・」

「・・・」

「・・・違うの?」

「・・・明日から自炊しますか?」

「済みませんでした」


 勇者はあっさりと、土下座をしました。コイツにプライドという文字は無いのでしょう。今更ですが。


「で、魔王は何処?」

「そちらにいらっしゃいます」

「・・・ひっく」


 私が指し示すと、勇者は無言で涙を堪えている魔王を見つめます。


「冗談でしょ?」

「恐らく本気です」

「だって、どう見てもこど・・・のふ!」


 禁断の言葉を言う直前、奈々師匠のドロップキックが勇者をフッ飛ばしました。勇者は綺麗な放物線を描いて頭から墜落し、意識は闇の中へと旅立った模様。ついでに、勇者の掛けていたサングラスはその短い生涯を終えます。今度生まれてくるときは、もっと素敵な主人にめぐり合える事を心よりお祈りしております。


「あんっ・・・たね!ああいうのを使うなら使うって最初からっ・・・!」


 師匠はまだ怒りが収まらないらしく、意識の無い勇者の足を掴んでは放り投げ、そのまま空中コンボへと繋げていきます。このまま放っていては、いずれ天に召されることとなるでしょう。いえ身体はもう浮かんでいるのですが、もっと大切なものが。

 私的にはそうなっても構わないのですが、夜な夜な化けて出られると非常に面倒な事態となります。ココは恩を売っておくのが得策というもの。


「師匠、奈々師匠」

「・・・何?」

「もう意識を失っています」

「・・・」

「・・・」


 今気付いたかのように、ぼろきれとなって墜落した勇者を見下ろす師匠。魔王はえぐえぐと泣いていますし、勇者はぼろきれで危篤状態、主役二人がこうでは進むものも進みません。


「コレ死んでないよね・・・?ね?そうだよね?私悪くないよね・・・?」

「はい、辛うじて生きているかと思われます」

「ど、どうする?」

「そうですね・・・」


 今更ながら事態の重大さに気付いた師匠がおろおろとする中、私は次なる一手を考えます。

 そしてコレしかないと覚悟を決めると、高らかに宣言をしたのでした。


「仕切りなおし!」



□ □ □ □



「では、準備が整い次第突入します」

「はい、お願いします。後は手筈通りに」


 メイドさなんに最後の確認をとった後、ぼろきれを私の背に乗せ・・・ることは出来なかったので引きずりながら、仕切り直すべく奥の間から立ち去ります。何かを忘れている様な気がしたのですが、一体なんでしょうか?

 その忘れ物は、私がドアを開けた瞬間に判明しました。


「このっ・・・人間風情がっ・・・!」


 怒り心頭の悪魔さんが相手も見ずに黒い影を操り、私を襲わせます。

 何度も申し上げていますとおり、私の戦闘力は限りなく0に近いです。なので哀しいことに、私には悪魔さんの攻撃を避けれる様な奇跡も技量も持ち合わせてはいません。

 槍の様な造形となりこちらへと向かってくるソレは、このままでは寸分違わずに私の胸を貫き、たちまち奇怪なオブジェを製作するでしょう。

 しかしそうはなりませんでした。

 私を貫くかと思われた槍は、私の目の前でぴたりと止まると、トロトロと溶けて地面へと吸い込まれていきました。悪魔さんが止めたのではありません、師匠が切り裂いたのです。その現場を見た悪魔さんたちに、衝撃が走りました。私としてはその驚きを共有できないのが、少しばかり残念です。

 ところで水を切り裂くことが出来ないが様に、魔力で出来た物を切り裂くことは基本として出来ない、ということは皆様もご存知かと思われます。しかし、どういうわけか我らが師匠はソレが出来ます。なので、奈々師匠は魔法に関してはほぼ無敵の強さを誇ります。当然です、師匠の前では防御の結界も、攻撃となる魔法もほとんど意味を成さないのですから。

 勇者が結界を斬らせるために師匠を呼んだのも、その辺りを考えてのことであり、だからこそ私もあんな三文芝居に付き合ったのです。


「喧嘩売ってるなら買うけど?」


 ありえないことが起きた事による衝撃からまだ立ち直れていない悪魔さんへと師匠が大剣を向けると、彼女は腰が抜けた様でその場に座り込んでしまいました。

 戦意が無いのは誰にでも明らかです。師匠はつまらなさそうに大剣をしまうと、私達が来たドア・・・帰りのドアへと歩いていきます。


「どちらへ?」

「これ以上は私が居るとめんどーなことになるでしょ?だからここらで身を引くの」

「そうでしたか」


 奈々師匠は腰が抜けたまま立てない悪魔さんを何処か哀しそうな目で見ると、通り過ぎていきました。このままではいけません。

 私は素早くぼろきれを捨てると、師匠の後を追います。ゴンっという音がしたのですが、気のせいでしょう。


「あの・・・!」

「何?もう後は自分達で出来るでしょ?」

「いえ、これをどうぞ」

「・・・?」

「ちょこれぃとです」


 師匠も最初はキョトンとした様子で私の差し出した菓子折りを見つめていらしたのですが、やがて「ありがと」と笑って受け取ってもらえました。

 私の用意した菓子折りは甘いのが苦手な方でも大丈夫な様に『10の味が楽しめるちょこれぃと』という、苦いのはとてつもなく苦く、甘いものは脳が溶けるのではないかと心配になるほど甘い、という触れ込みでしたので、必ずしや師匠にも満足していただけるでしょう。

 師匠も見送ったので、次は悪魔さんの元へといくと、腰が抜けて立てない彼女のために手を差し出します。


「大丈夫ですか?」

「は、はい・・・先ほどは済みません。怪我はありませんか?」

「お気遣い感謝します。幸いにも私は無傷ですし、過ぎたことですのでもういいんですよ」

「ありがとうございます・・・ところで今の現状は?」

「仕切り直しです」


 簡単に悪魔さんに現状の説明をすると、彼女は何度もぺこぺこしながら奥の間へと消えていきました。

 さて・・・残ったのは勇者ですが・・・何時目覚めるのでしょうね?

 放り出された体勢のまま、安らかに寝息を立てている様子を眺めながら、とりあえずは向こうの準備が終わるのを待つことにしました。



□ □ □ □



 お互いに準備も済み、再度突入となりました。

 今度は先ほどの様な飛び込み方ではなく、堂々とドアを開けて入っていきます。

 魔王の方も、なにやらふかふかと椅子に腰掛けて、両脇にはメイドさんと悪魔さんが控えており、正直見違えるほどでした。


「良く来た」

「ええ・・・決着を付けに来たわよ」


 挑発的に笑いかける勇者。いつもの顔なのですが、こういうぴりぴりとした状況で見ると不思議と勇者っぽく見えるもの。しかし、そのぴりぴりとした状態も長くは続きませんでした。


「・・・」

「・・・」


 お互いに無言なのです。勇者は勇者として、何を言えばいいのか判らず、魔王は魔王として目が泳いでいます。このままでは間が持ちません。


「ねぇ、ちょっと・・・私は魔王に応えてればいい手筈じゃないの?」

「そういう話だったのですがね?何かハプニングが起きたのでしょうか?」


 表情は崩さず、小声で聞いてくる勇者に同じく小声で返します。

 そんな私達の様子も目に入らない様子で、魔王の目は泳ぎ、傍に仕えているお二人の羽は焦るように忙しなくパタパタと動いています。

 やがて、悪魔さんが魔王にこっそり小さな紙を渡すのが見えました。


「・・・提案」

「な、何かな?」


 不意を付かれた勇者が戸惑ったように応えると、魔王はチラチラと小さい紙を見て続けます。私が思うに、アレはカンペという奴ではないでしょうか?


「仲間、入る?」

「・・・」


 これはつまり『私の仲間になれ』的なことを言いたいのでしょうか?

 辛うじて意味は読み取れますが、ココはもっと『部下になったら世界の半分をくれてやろう』とかそういう気の利いた言葉を言うべきところではないのでしょうか?この誘い方では、酒屋で一人寂しく飲んでいる冒険者を仲間に誘っている光景には何とか見えても、魔王が宿敵である勇者を引き入れようとしている光景にはどう転んでも見えません。

 しかし他の二人にはそうは見えないのか、悪魔さんとメイドさんはまるで我が子が劇の主役をしているかのようなテンションの上がりようです。主に羽が。特にメイドさんに居たっては、だらだらと溢れ出そうになる鼻血堪えているご様子。・・・先ほどから魔王が自信なさげにチラチラ見ているあのカンペには一体何が書かれているのか、非常に気になるところです。


「んー・・・」


 どうやら勇者にとっては魔王の誘い方なんぞどうでも良かったのか、本気で悩んでおり、魔王はその様子を告白の答えでも聞くかの様にそわそわと落ち着きなく見つめています。私としては、魔王と勇者という因縁事態がどうでもよくなってきました。


「条件は?」

「三食、昼寝」

「よし乗った!」


 勇者の返事を聞くと、パーっと笑顔になる魔王。もしもコイツが断ったら、泣き出していたのでは無いかとも思わせる喜びようです。

 けれども一応は魔王としての自覚があったのか、すぐに難しい顔を作ると、一連のやり取りで回収不可能となっている威厳を取り戻そうとし「うむ」と頷きました。

 こうして、勇者と魔王の因縁の対決は幕を閉じます。

 今日も今日とて世界に平和は訪れず、道では歩く死亡フラグ事スライムさんが元気に闊歩することでしょう。

 そして、この結末は私や師匠にとって、そして皆様にとっても、極めてどうでもいい終わり方と言えるでしょう。



□ □ □ □



 一連の流れが終わった後、勇者は身支度を始めました。


「それじゃ、魔王も片付いたことですし行きましょうか?」

「・・・?どちらへ?」

「何言ってるの?」


 疑問を問いかけた私を信じられないとでも言い足そうな顔で見つめると、勇者はその言葉を言います。


「あの子達に帰ってくるって約束したじゃない」


 ・・・ああ・・・約束を覚えていらっしゃったのですね。


「・・・そうですね」


 私はそう応えると、勇者の後を追うべく歩き始めました。

 しかし、私達の行く手を阻むものは、メイドさんや悪魔さん他数名の皆様。


「勇者様はもう魔王サイドの方、勝手に動かれては困ります」


 代表ともいうように悪魔さんがそういうと、警備の皆様が武器を手に微笑み掛けてきました。


「それとも、強行突破を試してみますか?」


 勇者はむしろそうして欲しい、とばかりに微笑む皆様を見つめていたのですが、何かを思いついたように背を向けると携帯を取り出してポチポチと電話を掛け始めます。


「もしもし?師匠?ちょっとお願いしたいことがあるんだけど・・・」


 どうやらコイツ、自力での突破は諦めて師匠の力を借りようとしている様子。最後の最後で、何という事でしょうか!という憤りはそっと胸に仕舞っておきます。

 どういう流れでアレ、勇者は師匠を呼ぶことを最善の手と考えたのです。ならば私は語り手として、その傍を付き添っていくだけです。

 私達は生死を共にするほど一緒ではありませんが、お互いがお互いに依存しあう関係なのですから。



□ □ □ □



 今回のお話はコレで終了とさせていただき、後は最後の挨拶となります。どうか、少しばかりのお時間を。

 まず始めに、皆様の貴重なお時間をこんなわけのわからない勇者の話のために費やしていただき、真にありがとうございます。

 今後私が語り手を勤め、皆様の前に現れる事があるかどうかはわかりませんが、もしも機会がありましたら、どうか家の勇者をよろしくお願いします。

 それでは、またいつか願える日を願いまして、このお話を終了とさせて頂きます。

無事完結だー!

途中からオチが読めてるような気がしますが、気にしたら負けだぜ!


書き手的には一番好きですが、一番人気が無かったとも言えます

(・ε・ )タイトルとあらすじで省かれちゃったんだろうなー

また後日談などは用意しておりません、あしからず


テーマというか目標は 明るく!テンポよく! を目標にかかげていきましたけど・・・テンポの方は微妙ですね


一応、続けようと思えば続けれます

続きが欲しい方はご一報を

続けるとしたら・・・レンアイ系とか入るのかな?


ではでは、少しでも楽しんでいただけたら幸いです

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