異能という名の暴力
サブタイトルが少しあれですが特に残酷描写は含まれません。
「暁留さん?いらっしゃいますか?」
「あ、雪白。早いね。」
ドアの向こうから声がする。
「不審者により校内状況異常とみなします。よって許可を下します。好きに暴れて結構ですよ。」
「ん、了解。じゃ、楽しい宴を始めようか。」
そう言って目を閉じる。次に目を開けた時には暁留の瞳は本来の色……暁のような血のような赤になっていた。
『幻想を現実に……』
その口から出るのは異国の言葉。英語でも、フランス語でも、ドイツ語でもない。この世界とは違う、異世界の言葉。そして、狙撃主の周りは赤く染まる。暁留の領域へと化す。
『動くはずの手が動かなくなる。』
狙撃主の両手は動かなくなった。
『出るはずの声が出なくなる。』
声を失った。
『こちらへ来る気がないのに来てしまう。』
狙撃主がこちらに現れた。口をパクパクさせている。餌を与えられた金魚のように。暁留は顔に雨欺の頬笑みをたたえ、最後の言葉を紡がんと口を開く。
『幻想が現実と化した時、ヒトは恐怖を覚える。君もまたしかり。さあ、何処よりも美しく狂わしい幻想の庭園で朽ち果てろ。』
狙撃主は倒れた。
「ん、まあこんなもんでいいかな?雪白、入ってきていいよ。」
どこまでも白い少女が入ってくる。白いスーツに白い髪、灰色の目。
「さすがですね。暁留さん。」
「まあね。この人、縛って家に入れといて。」
狙撃主は死んでない、だって幻想で死んだわけであって現実で死んだわけじゃないからね。ただ気絶しただけ。
「はい、そのように。ところで、あと二つ不穏な気配を感じるのですが……」
え?二つ?さっき暁留は一つって言ってなかった?
「そうだねぇ。ま、でも問題ないよ。」
「そうなんですか?」
「とっととUSBを渡せこのマッドサイエンティスト!」
「うわ!ちょっとすみません、かくまっていただけます?」
入ってきたのはどこまでも白い青年。白衣に白い髪、灰色の目。
「あ、雪兄久しぶり。」
「あれ?暁留?なんでお前こんなとこいんの?」
彼は多分暁留の従兄の雨欺白雪さん。年は二十四歳で、つい最近までアメリカにいてたはず。
「まあちょっといろいろあってさ……雪兄こそどうしたの?」
「んー向こうで思わぬ副産物ができてさぁそれを某組織が狙ってる。てかなんでここ能力使えないわけ?」
一体どんな副産物ですかそれは。
「学園長の土地だからね。雪白か学園長か……まあそんな感じの人に許可取ったら使えるよ?」
「はぁあぁ……じゃ、雪白、悪いけど許可ちょうだい?」
そういって雪白に微笑みかける白雪さん。でも雪白は白雪さんに銃を向けていた。
「あなた、誰です?」
はい、また新しい人出てきたぜ。すみません、まだまだ増えます、が、今回出てきた白雪はかなり主人公達に関わってきます。でもってキャラ濃いです。自分が楽しければいいという野郎です。暁留とは何年か一緒に住んでいました。暁留が歪んだのはおそらくその数年間のせいだと思われます。また従兄弟同士で一緒に住む前から仲は良かった様子。とある事情により雨欺一族の一部を憎んでいます。気に入らないものは身内であろうと徹底的に排除するため一族からは今世紀最悪の奇跡と呼ばれています。ちなみに親しい人たちからは惚れ惚れするほどの鬼畜外道と呼ばれていたりします。雪白さんについてはまた次回。