小話 エイプリルフールという名の本心を伝える日
本編より一年ほど過去です。まつりが不憫な日とも言う日です。クラスメートはまつりが仄亞を好きって知ってます。まつりも仄亞も分かってます。あと、みんなアキトさんっていうのが仄亞の恋人であることも知ってます。
仄亞が荒れてます。実は荒れてます。暁留の情緒不安定は分かりやすいけどこの子分かりづらいなぁ。
今日はエイプリルフール。嘘をついてもいい日。
「やっほーまつり。」
「……おはよ。ったく、なんだってこんな面倒なことしなきゃならないんだよ。」
「サボればいいんじゃない?」
「俺に死ねと?」
「ま、確かに行かなかったら殺されそうだけどね。」
今日はエイプリルフール。すなわち春休み中。なのになぜ、私とまつりが会っているかというと、クラスメートの一人により、エイプリルフールパーティーしようぜ! ってなったから。
「本当意味分かんねー。なんで朝八時招集なんだよ。」
「午前中じゃなきゃ意味がないからじゃない?」
「はぁ……」
溜息をつくまつりは無視して、暁留のことを考える。変な嘘ついたら面倒なことになるしなぁ。どうしようかな。
「っと、ついたな。」
「え? ああ。そうだね。うわ、もう結構集まってるや。」
まあ一番遅いってことはないみたいだけど。
「やっほー二人とも。」
「うん、おはよう。」
「おーっす。」
「今日はじゃんじゃん嘘ついていいからね!」
「はいはい。」
「めんどくせー。」
そして、数分後、皆が集まった。
「さてさて、皆さま。本日はエイプリルフール。一年に一度の嘘をついてもいい日。ってなわけでじゃんじゃん嘘つきまくろうぜ! あ、でも後々に響きそうな嘘はなしで。それだけ守ってねー!」
なんであんなにテンション高いのかなぁ。あの子は。
「あーダルっ。」
「何で来たの……ま、いいや。ねえまつり。」
「あ?」
「好きだよ。」
「……」
にっこり笑っている私と、ピシリと凍っているまつり。ついでににやにやしながら見ているクラスメートたち。
「お、前。」
「ん?」
「お前が好きなのは……」
そんな時、私の携帯が鳴った。相手は……お兄ちゃん?
「あ、ごめん。ちょっと待ってね。」
「え、ああ。」
「もしもし?」
『もしもし? 仄亞?』
「じゃなかったらすごいよ。」
『まあエイプリルフールだからそういうこともあるかなと。今大丈夫か?』
「うん。大丈夫。だけどできれば手短に話してほしいかも。」
『あー……あのさ。暁留に電話かけるなりメールするなりしてやってくれね? 見てて可哀想。』
「いったいどんな生活してるの……」
『エイプリルフールだし。毎年お前電話してやってるんだからさ。今年もよろしくなっていう念押し。じゃあな。』
「あーうん。じゃあね。」
プツッ。
「うーん……電話、ね。」
ま、ここでかけるも一興かな。
「今の誰?」
「ああ、お兄ちゃん。ちょっとした念押しだった。」
「はぁ?」
さてと、電話電話。
「もしもし?」
『仄亞?』
「うん。おはよう。起きてた?」
『まあ、一応。』
「ならよかった。あのね。暁留。」
『うん?』
「大っ嫌い。」
電話の向こうから押し殺したような笑い声が聞こえた。
『僕も君のこと大っ嫌いだよ。仄亞。』
「それだけなの。じゃあね。」
『うん。じゃあね。』
プツッ。
「……アキトさん?」
「うん。」
「……そっか。」
まつりは苦笑いをして別の友人のところへと歩いて行った。
「ホノちゃんさー。」
「んー?」
「ありゃないよ。」
「なんのこと?」
分かってるけど聞いておく。
「まつりに好きって言った時より、アキトさんに大っ嫌いって言った時のほうが……なんていうか、笑顔だったって言うか、幸せそうだったっていうか……とにかくまつりが可哀想。」
「そうだった?」
「無自覚って余計にタチ悪いよ。」
知らない知らない。
それに、一番可哀想なのは、
ずっとずっと私を待って、待って待って待って、電話一つで喜んじゃう、
暁留だと思うよ。
これで荒れてるっていうね。本当分かりづらい子だなぁ。まあ仄亞は基本的にこんな子です。暁留いないから普段よりひどい感じです。彼女にとってまつりなんてどうでもいいんです。ついでにクラスメートもどうでもいいんです。もちろん無自覚でもなんでもありません。自覚しててやってます。
本編だと仄亞が苦労してるように見えるけど、過去見ると暁留といい勝負だと思います。結局似てるんだよ君ら。