いい子という名の何でも聞く子
ちょっと長めですかね? 仄亞、スイッチ入っちゃった編。
「また入ろうね?」
「……はい。」
「むー……私は?」
「仄亞はいつでもオッケーだよ?」
「じゃあいい。」
ところで、ブレザーってどこにやればいいんだろう。どっかにほっぽったら皺になっちゃうしなあ。椅子まで歩いて掛けるか。
「ごくろうさま。」
「起きあがっちゃダメ。」
「僕が言われたことを聞くようないい子だと思ってる?」
思ってないけど少しくらいおとなしくしてくれてもよかったと思う。
「っていうか寒いんだけど。」
「ここ暖房きいてるよ?」
まあエコのためにそこまで設定温度は高くないと思うけど。
「ネクタイも取るのー。」
しゅるりと音をたててネクタイを外す。
「はいはい。」
「えへへ。」
そのまま抱きつく。
「こうすればあったかいでしょ?」
「あーうん。両方体温低いから何とも言えないけどね。」
「あったかくないの?」
「アッタカイデス。」
棒読みだけどまあいっか。
「ねえ仄亞。」
「なあに?」
「猫みたいに鳴いてみて?」
「にゃあ。」
「よくできました。ああ、本当にスイッチ入ってる。入っちゃってるよ。」
うん、入ってるよ。完全にオンだよ。言われたことは基本的に何でも聞いちゃう仄亞さんになってるよ。
「うまくできたごほーびは?」
「後でね。」
「にゃー……」
「いや、悲しそうに鳴かれてもね。今の仄亞にとってのご褒美は恐らくとんでもないものになるからね。これで僕までスイッチ入ったらもう取り返しがつかなくなるからね。分かった?我慢したら、家でたっぷりご褒美あげるから。」
「スイッチ入れよ?」
一瞬、空気が凍った気がした。
「だからそれ反則だって……!」
「ね、入れよ?」
こくりと音がする。音がした喉を撫でる。
「遊ぼうよ。ねえ、暁留。」
「雪兄、僕が今スイッチ入れても何もおかしくないと思うんだけど!」
「うん、問題ない気がする。」
「じゃあ入れよう?入れて、たくさんたくさん遊ぶの。きっと楽しいよ?」
「はいって答えたくなるのはおかしくないよね!」
「何もおかしくない。」
「暁留。」
ぎゅうっと抱きしめて胸元に頬ずりする。
「誰かこの生物兵器止めてぇえぇえぇえぇ!!!!!!」
「にゃあにゃあ。」
鳴いてみた。
「分かった。止めろは言わないそのかわり部屋用意してください。どこでもいいから。いっそどっかの倉庫とかでも……埃っぽくなければ。うん、埃っぽくなければどこでもいいんで!」
「だってさジジイ。」
「いやあ、これはこれで見てて楽しいからのう。」
ええい、第一ボタン外しちゃえ。邪魔だ。
「ほんと、誰か助けて。もう帰らせて。」
「いや、それはだめじゃ。」
「……仄亞。」
「ん?」
「ちょっとごめんね?」
私は気を失った。
反則っていうのは上目づかいのことです。ちなみにこれが家で、二人きりならとっくに暁留の理性の弦が切れています。