諸悪の根源という名の報われない大人
「ほら、そう言った。ヘキとで千円ずつ分けようか。」
「ああ。」
「いや、だってそう言うだろ。」
「まあ僕もそう言っただろうね。だって諸悪の根源でしょ?」
諸悪の根源って……仮にもあんたの兄の兄(みたいな人)だろうに。
「ていうかご本人、登場?」
「え?」
ドアの傍に美青年。髪はかなり茶色に近い。目は髪と同じ色。胸元ははだけてるし金のチェーンネックレスつけてるしでいわゆるチャラい感じ。
「よう、白雪。つーかナニコレ。なんで俺こんなに注目浴びちゃってるんですかね。」
いや、まあ今までの会話が会話だったからって言うのもあるけど……それ以前に。
「叶多さん、なんでカナちゃんと冠薙持ってんの?」
「え?ああ、さっき廊下で拾った。なんか、不審者だったらあれだなと思って。」
両手に成年男子及び女子高生持ってたらそりゃあ誰だって注目するだろ。
「そっち、左手に持ってるほうは僕の友人。で、右手に持ってるのは知り合い。だから離していいよ。」
「あっそ。お前ら悪かったな。」
「「いえ、まあいいんですけど。」」
そういうしかないか。
「……誰だ?こいつ。」
「私も知らないんですが。」
「私も知らない。誰だこいつ?」
あれ?前及び現表当主とその秘書的立ち位置の雪白までもが知らないってこの人何者だ?
「暁留知ってる?」
「知らない。」
うえええ……誰?本当。
「んーま、隠してたしなぁ。」
「雨欺叶多。僕と暁留の父親の幼馴染……というかなんというか。」
「年は四十七になった。色は薄い水色っつーかなんつーか。あれだ、水平線の色。遥か彼方も見ることができそうな色だからカナタ。多くを叶えると書く。」
「の割に願いがほぼ叶わないと。」
「白雪がちょっとでも俺の物にでもなりゃ願いの一つが叶うんだが。どうよ、俺とイイコトしない?」
ああ、このテンションは紛れもなく雪さん。
「叶多さんが僕をこの世もあの世も含めて世界で一番好きって言うなら考えてあげてもいいよ?」
「そりゃダメだ。つーか知ってて言ってんだろ。一体いつからそんな子に育ったんだか。」
「さあね。まあそれくらい言えるようになったら遊んでもいいよ?」
無表情で淡々と言う白雪さんに叶多さんは悲しそうな瞳で笑う。
「じゃ、一生かかったって俺はお前と遊べないわけだ。」
「そう言うことになるね。ま、傍にいるくらいならいいけど?」
「いつからそんな子になったんだ。本当。」
「叶多さんに会ってから。」
「はっ、生意気な奴。」
笑いながら叶多さんはこちらを向く。
「ふーん……お前が暁留?」
雨欺叶多……諸悪の根源です。あと報われない人。一途っちゃあ一途ですね。隠してた理由はまあおいおい。
次の更新は恐らくクリスマスイブかクリスマスです。小話を書きます。