思考が残念な兄弟という名の強い兄弟
更新が遅れて申し訳ありません!そもそもここ数日パソコンにすら触れてませんでした……。
「んー結構幸せではあったかな。父親も母親も好きだったし。三歳の時に自分が本当の子どもじゃないって知ったんだけど、結構その時も平気だったしさ。暁留が産まれる時も逃げようとしたら捕まってさ、強引に引きとめられて。兄弟に平等に愛を注いでくれた。産まれた弟は我儘で、甘えたで、どうしようもなくて。でも可愛かったし、慕ってくれた。うん。言うことなしじゃない?しかもその後はまあ色々あったけどさ、可愛い《片翼》に会えて、その上義妹までできそうなんだよ?僕はきっと今、雨欺一幸せだね。」
ああ、この人は、強い。そりゃあおじい様も歯がたたないよ。だってこんなにも強い。
「ちなみに余談じゃが、白雪と暁留の名を知らないものはモグリだと言われているのはその事件からじゃ。白雪は十歳にして異常なまでに恐ろしい能力があった。恐怖を司る雨欺が恐ろしいと感じるほどに恐ろしかった。綺麗だと感じてしまうほど、恐ろしかった。のくせに、まだ二歳だった暁留はそれを怖がらなかった。むしろ、陶酔していた。」
「だって、綺麗だったんだもん。学園長たちはさ、綺麗だと感じるほど恐ろしかったのかもしれないけど、僕からしてみれば恐ろしいと感じるくらい綺麗だったんだ。綺麗で、綺麗で、すごく、美しかったんだ。」
「他の子どもは皆泣きだしたというのにの。それを見た大人は暁留も恐ろしく感じたんじゃ。だから、白雪と暁留を知らぬものはモグリなんじゃよ。」
ふうん。要するに……
「暁留は昔から歪んだものが好きだったと。」
「ああ、そういうことかも。」
「違うよ!」
妙に雪さんは納得してますよ。暁留君。
「ちゃんと、桜も、雪も、紅葉も好きだよ!」
「暁留さぁ、桜は人間の血を吸って咲くんだよって言ったら余計に好きになったよね。桜」
「だ、だって強かでしょ?」
「紅葉も血みたいに赤いって話をしたら……」
「ごめんなさい。僕が悪かったです。」
あら、負けちゃった。
「僕に勝とうなんて思わないほうがいいね。こっちは色々知ってるんだから。」
確かにね、過去を知ってる人とはやりにくいよね。
「……だって恐怖と綺麗は紙一重なんだよ?」
「はいはい。」
「い、歪なものほど美しいんだよ?」
「はいはい。」
「ちゃんと聞いてよ。」
「そーだねー。」
もう完全に遊ばれてるよ。あれか、惚れた弱みとか言うやつか。いや、違う……よね?
「むー……」
「あぁ、仄亞ちゃん、ごめんね?嫉妬?」
「そーだよ。どーせ嫉妬だよ。」
プイッと顔を背ける。
「ま、四人で仲良くしてればいーんじゃない?楽だしさ。」
うっわー……雨欺でそんなこと言う人初めて見た。
「っていうか僕が弟離れできそうにない。後、暁留は僕が仕込んだから、多分兄離れできない。ごめんね?」
「謝られても困るというか。」
「んー……だよねー……僕さ、雨欺でも異端だったでしょ?だからかな。どうせ自分には《片翼》なんてできないと思っててね。それじゃあとりあえず弟といずれできるであろう義妹を籠絡しちゃおうと思ってた時期がありまして。ていうかまあ今もそんな感じではあるけどね。」
うわ、この人いろんな意味で最悪だわ。というか思考が残念すぎるわ。
「まあそんな感じだから、許して?」
「もういい……諦める。うん。」
「そうしてくれると助かるね。」
微笑みながら私を背後から抱き締める雪さん……ってあれ?
《片翼》至上主義の雨欺の中では白雪のような人間は特殊です。かなり。そして彼は「特殊」で「異端」であるために、強い精神と肉体を持っています。また、自分がそのようなモノだったから同じような人の辛さも理解しているのでしょう。うん、いいお兄さんだ。そしてこいつをグレさせなかった両親たちはすごいと思う。まあ歪んでいるのは仕方ない。いくら「特殊」で「異端」でも雨欺ですからね。