いいお兄さんという名の残念なお兄さん
ちょっと長め?
「どうしようもないもん。自業自得。あ、そうそう。resignは運命なんかに甘んじて従うって言う意味。You should resign yourself to your fate. 直訳すれば、あなたは運命に身を任せるべきだってとこかな。」
「結局諦めろってことじゃないですか。」
かっこよく言ってるけどさ!
「うん。そういうこと。ついでに英語のお勉強。resignをこの意味で使う時はresign oneself to 目的語で使います。辞職するという意味もあります。そっちのほうがよく出てくるんじゃないかな?あ、fateは運命ね。」
「なるほど。お勉強になりました。ところでなんで発音がイギリス英語なんですか?」
アメリカにいたんだよね?
「好みの問題。暁留も雪白もイギリス英語の発音じゃないかな?僕が教えたから。」
そういえばそうだね。なるほど。白雪さんの好みでそうなったのか。
「にしてもずいぶん流暢な英語ですね。」
「そりゃあ何年も向こうにいたからねぇ。」
「英語で分からないことがあったら聞きに行きます。」
「英語に限らず何でも教えられるよ?」
「雪兄の教え方は上手だよ。」
そうなんだ。よし。聞きに行こう。数学とか数学とか数学とかね!
「仄亞ちゃんならタダで何でも教えてあげるよ。」
ああ、気に入られたからか。本当、いいお兄さんだね。基本は。
「保健体育もね?」
「これさえなければほんっとうにいいお兄さんなのにね……」
もう半ば諦めてるけどさ。
「でもそれを凌駕するくらい教え方は上手いですから。」
「あとそれを凌駕するくらい基本はいいお兄さんだから。」
それはなんとなく分かってるんだけどね。
「まあ家庭教師料と思えば安いものか……お金渡すより遥かにいいし。」
「本当に一回ちゃんとお話ししようね。やっぱり君の考えは一部おかしいからね。」
「そうですか?」
普通だと思うんだけど。
「うん。すごく普通じゃないよ。」
おかしいなぁ、普通にしているはずなのになぁ。
「あとね、仄亞ちゃん。」
「はい?」
「敬語、面倒でしょう。」
「そうでもないですよ?」
身内と暁留と雪白以外の年上には普段から敬語だし。
「長い付き合いになりそうだからね。面倒になると思うよ?」
「まあ確かに。」
知り合いの雨欺(暁留以外)の中では一番長く深いお付き合いにはなりそうですが。
「外していいよ?」
「え?」
いやいや、そういうわけには。
「どうせ向こうじゃ敬語なんてなかったし。暁留も敬語じゃないし。雪白はまあ昔からこうだったからあれだけどさ。仄亞ちゃんは別に誰にでも敬語ってわけじゃないでしょ?じゃあ別にいいよ?」
「白雪さん、でもですね。」
「呼び方もよほど変じゃなきゃ適当でいいし。暁留と結婚するなら僕の義妹になるわけでしょ?好きにすれば?」
うわー……すごい適当な人だ。この人。
「僕の名前呼びにくいしね。」
いや、まあ否定しづらいですが。男の人にこの名前で呼びかけるのは少し抵抗がありますが。
「本当にいいんですか?」
「仄亞ちゃんは常識はある子だからね。敬語外しても失礼な態度はとらないでしょう?じゃあ好きにしていいよ。」
まあそりゃ未来の義兄(みたいな人)に変な態度はとらないけれども。
「じゃあす、好きにするね?」
「どうぞご自由に。」
困ったなー……敬語は外すの簡単だけど、どう呼べばいいんだろう。
「んー……雪さん?」
あ、しっくりきた。これ。
普通にしているはず=普通を演じているはず。仄亞さんは利益のためなら何でもやる子です。
残念なお兄さん(笑)はその残念さを吹き飛ばすくらいいいやつ……になる予定なのになぁ。おっかしいなぁ……なかなかなってくれません。まあ事実好きな人に対してはいいお兄さんです。嫌いなやつに対しては……さあ、皆様合掌のご用意を。ええ、ただの鬼畜外道となり果てますが何か。まあ暁留も大概そんな感じなんですがね。