仲がいい二人の再会という名の壊れた二人の再開(軽度の残酷描写)
微妙な残酷描写を含みます。大したものではありませんが念のため。ちょっと長め?
「仄亞……?」
「……雨欺先輩。まだ終礼中で……っ!」
入ってきた人間に勢いよく抱きつかれる。雨欺暁留に。
「桐生の馬鹿……もっと早く言えっての……」
「お前に言ったら即座に会いに行くだろ?」
「だって何年も待った。近くにいると分かればもう我慢も自制もきくわけがない。」
「お兄ちゃん。」
遅れて入ってきたのは私の兄、深桜桐生だった。
「おかえり。仄亞。ここに直接来なくても家に一度帰ればよかったのに。そんなに暁留に会いたかったのか?」
からかうように言ってくるお兄ちゃん。でもそれはあながち間違いじゃない。
「うーん……まあそんなとこかな。」
「ふうん……お前ら本当に仲いいよなぁ。」
仲がいい?とんでもない。私と彼の間にある感情は壊れたものだ。
「はぁ……仄亞も連絡ぐらいしてくれればよかったのに。そうしてくれればジェット機だろうがリムジンだろうが寄越したのに。」
そんなところで雨欺の権限を出さないでほしい。金持ちめ。
「あのですね。まだ終礼中なんですよ。先輩。」
微笑んでだからとっとと帰れオーラを出す。
「それ、喧嘩売ってる?」
「何のことでしょう。」
「敬語と呼び方。喧嘩売ってるの?仄亞?」
「いえ、公私混同はよくないことはもう学びましたから。」
「売られた喧嘩は買う主義なの、仄亞も知ってるよね?」
ダメだこいつ、人の話を聞いちゃいねぇ。
「もう一度チャンスをあげるよ。僕のこと呼んで?」
「雨欺先輩。」
これみよがしに溜息をつかれた。
「はぁ……馬鹿だねぇ仄亞は……昔みたいに呼んでくれれば少しは優しくしてあげたのにね……?」
私がつけているペンダント、それをひねって輪を作り、その輪を外側に引っ張る。無論私の首は締まる。
「ま、少しは苦しそうにしな?愉しんであげるから。」
「うぅ……くっう……」
声を出そうにも出せない。銀の鎖が首を貫通するかも。
「そうそう。可愛いよ。」
「うぐっぐ……」
笑顔でその苦しげな私の姿を見ているあたり、彼の性格は全く変わっていないご様子で。というかなんかもっとひどくなってる気もする。
「さ、二度目のチャンス。名前、呼んで?」
「げほっ……ごほっ……公私混同はよくないってさっきからっぁ。」
「面白い子だなぁほんと。虐められたいの?」
くすくす笑いながらまた鎖で首を締め付ける。ダメだ。ここではそんな姿を晒しちゃいけない。
「うぐっく……ぅあ。」
「それとも僕を愉しませたいのかな?ま、どっちにしろ同じことだよね。」
昔は外ではまだまともな人だったのに。ほら、お兄ちゃんも先生もみんなも唖然としてるじゃない。
「んん……はぁっ……」
「三度目。」
「アキお兄ちゃん?」
「ま、それでもいいけどねぇ……変な眼で見られると思わない?確実に。」
それでもいいならまた締め付けないでほしいんだけど。
「はぁっ……うぅっあ……」
「ああもう……ほんっとに狂いそう。声、出そうとしなけりゃもう少し楽になれるのにねぇ……」
苦しそうにしろと言われたからわざと声を出そうともがいているなんて分かる人、何人いるのだろう。
「さ、四度目だよ。」
「暁留。」
「よくできました。あーあーもう……跡になっちゃってるじゃん。鎖。」
そう言いながらその鎖の跡を舐めていく。ここ、どこだか分かってるの?
深桜さんの家は四人家族です。心配性、苦労性の兄、桐生と策士、人間不信(一部を除く)の妹、仄亞。母最強伝説があったりなかったりする咲良、仕事人間であまり家にいない婿養子の数人で構成されています。ちなみに暁留は一人息子で、彼の両親は彼が八歳のときに死亡しています。