逃亡生活の終わりという名の転校
『はい、到着です。』
ついに来てしまった……あの人のいる場所へ……
「ありがとうございました。」
スクールバスの運転手さんにお礼を言って、私立欧里学園の地を踏む。
「えーと……三年一組ね。」
中等部の校舎の三階まで上がる。先生が廊下に立っていた。
「おお、深桜だな、入れ。」
まだ年の若い女の先生。なかなかの美人。確か名前は織原まひろ。年は二十七。担当教科は現代文。
「さっき言った転校生を紹介する。」
私は名前を黒板に書く。深桜仄亞。
「これでミオウホノアと読みます。半端な時に編入してきましたが、どうぞよろしくお願いします。」
今は中三の三学期。どう考えてもおかしい。
「質問に答える形式でいいか?」
「はい。」
「あー……じゃあ無難に誕生日と血液型。」
手は上がらないが質問された。
「誕生日は十月二十一日。さそり座。血液型はA型です。」
少しざわめくクラス内。
「趣味は?」
「読書です。」
「好きなもの。」
「そうですね。好きな食べ物は洋食です。嫌いなものはネギ類のもの。好きな科目は国語、英語。語学はなんでも好きです。嫌いな教科は数学。これは嫌いというか苦手です。あーあと、幼少時はブラコンでした。多分。」
笑いに包まれるクラス内。そりゃそうか。
「ちなみに兄は深桜桐生。ここの高一生ですね。」
「だからここに転校してきたの?」
「それは違います。私は別の人に会いに来ましたから。」
そう。彼に会いに来た。あの、残酷で狂ってて……それでいて恐ろしく美しい彼に。
「え、誰?」
「おい!お前聞きすぎ。」
さっきからいろいろ聞いてきた女子を、クラス会長の男子がたしなめる。
「いえ。かまいませんよ。ここじゃ有名なはずですから。」
なんせ学園長の親戚だし。
「雨欺暁留。」
アマギアキト。名前を紡いだ時、心が揺れた気がした。教室内がざわめく。数分後、そのざわめきを止めるかのようにドアが勢い良く開かれる。
次回、微妙な残酷描写を含みます。といってもそこまでのものではありませんが……血も出てきませんし。一応の警告。