最大の刺客という名の猫
「うわ!?」
誰かが扉を壊れそうな勢いで開けて、白雪さんにタックルをかましてきた。
「お前はなんてことをしてくれたんだ!」
「えーとカナちゃん?」
え?この人が奏芽さん?
「一体お前は何を考えてるんだ!」
「カナちゃん、地が出てるよ。ほら、少し落ち着いて?」
「誰が落ち着けるか!死ね!」
「うえぇぇええ!?一体何を怒ってるわけ?」
「しらばっくれる気か!」
「えーと本家の純真無垢な男の子をちょっとばかし遊んだこと?それはさっきも言ったけど大したレベルじゃないんだよ?嫉妬しないでよ。」
「はぁ?お前ついにそっちに目覚めたのか?っていうかそんなことじゃない。」
「じゃあ何?」
「……本当にお前知らないのか?」
「だから何のこと?急に抱きつかれて怒られても意味が分からないんだけど。いくら僕が賢くったってこれはちょっと予測しにくいよ。もしかしてウチから刺客が送られてきたとかそういう感じ?」
賢いとか自分で言うか。っていうか抱きつかれてって……いやまあ確かにそう見えないこともないよ?ないけどさぁ……。
「ある意味最大の刺客がな……家に猫がいたんだ。」
「はい?」
それってそんなに怒ることなの?
「厳密に言うと猫耳と猫の尻尾をはやした女子高生がいた。」
「それはまあ……なんというか。」
「それもベットの上で無防備にすやすやと寝ていた。」
「なんか男の理性を試されてる感じがするね。」
「とりあえず起こして、話を聞いたところお前の家の人間だということが判明した。」
あれ?それってもしかして……。
「それで?」
「その女子高生が好みだったんだよ。で、俺の好みを知ってる人間はお前だけで。しかもお前の家の人間だって分かったらもう疑うしかないだろ?」
「なるほどね。要はカナちゃんに僕が彼女候補を送ってあげたと思ってるわけだ。でも違うよ。」
「……そうか。疑って悪かった。」
奏芽さんは基本的にいい人。数少ない白雪さんの友人。これが務まるってことは相当神経が丈夫に違いない。