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第8話 超新星爆発 惑星セレフティアを救え 前編

【勇者ギルド本部 星界観測室】


星々の軌道を映し出す球形のホログラムが、天井いっぱいに輝いていた。その中心に、赤く脈打つ星があった。異常に膨張し、不安定な光を放っている。


ギルド長(竜種)

「お前たちを呼んだのは、他でもない。この星を見てほしい。名は“ヴォルクス”。太古より静かに燃え続けていた赤色超巨星だ」


リリィ

「ヴォルクス、確か、多くの移民が住む惑星がある星系が近くにありますよね」


ギルド長

「その通りだ。だが、3日前、“超新星爆発”を起した。予想よりも3年早かった」


ガルド

「3日前⁉ 爆発したら、近隣の星系は、」


ジャック

「即死圏内だな。このままだと爆心地からおよそ0.3光年にある惑星“セレフティア”は、3か月後に超新星爆発の影響で全生命が絶滅するだろう」


マーガレット

「そんなの、ヒドいニャ。その星系には、多くの人たちが住んでるって記録にあるニャ」


ギルド長

「セレフティアには現在、約20億人が住んでいる。大気も居住に適していて、生態系も豊かだ。しかし、移動用魔導回廊も輸送艦も足りん。避難先の『お盆の世界』も準備が間に合わん。3ヶ月で全員を逃がすのは、不可能だ」


クロシャ

「ならば、物理的な“遮断”しかありません。星ごと防御結界を張るしかない」


ギルド長

「なんとかしてほしい。方法は問わない。人々を、少しでも多く救う手段を探ってくれ」


リリィは静かにうなずいた。



リリィ

「了解しました。必ず、道を見つけてみせます。」


ギルド長

「頼んだぞ、リリィたち。お前たちにしか、この星は救えん。」


ホログラムに浮かび上がる“セレフティア”の青い惑星。


・・・・・

◆作戦会議 惑星セレフティア救出計画


【セレフティア軌道上 ステーション内 会議室】


宙に浮かぶ軌道ステーション。その一室に設けられた重厚な会議室では、青緑の惑星セレフティアが魔導ガラス越しに見えていた。


円卓には、リリィたち6人、勇者ギルド星拠点から駆けつけたホー博士とグネル、そしてAI義体コンがちょこんと座っていた。小柄な少年風の姿に、可動式の耳としっぽ。プリンを頬張りながら、無数の演算を行っている。


リリィ

「これより、惑星セレフティア救出のための作戦会議を始める。」


ホー博士

「ヴォルクス超新星爆発からおよそ0.3光年の惑星“セレフティア”までの到達で、残された猶予は82日。観測結果から、激烈なガンマ線、荷電粒子、超高温プラズマ、重力波による多層的衝撃が発生すると見られている」


ガルド

「まずは、できることからだな。衛星と艦隊で防ぐ!」


リリィが卓上の魔導投影装置を操作すると、宙に立体図が浮かぶ。無数の人工衛星と艦隊が惑星を取り囲み、反射と磁場を展開している。


リリィ

「【段階1】偏向案。人工衛星群で放射線を反射・吸収、宇宙艦隊の磁場装置で荷電粒子を偏向します」


ジャック

「理論上、多少は和らぐはずだが、、」


コン

「う~ん、それっぽいけど、はい、計算結果きたよっ!」


コンはぴょんと立ち上がり、前足、いや、手をひらひら動かした。


コン

「偏向率、たったの12.4%。ガンマ線の“刃”は防げずに突き抜ける! しかも磁場はすぐ飽和して崩壊~。無理っぽい~!」


グネル

「それじゃただの時間稼ぎにもならん」


コモン

「宇宙艦、無駄に壊すだけだね。回収も間に合わないし」


リリィ

「次の手を考えよう」


新たに表示されたホログラム。惑星の赤道に並んだリング型装置が、空を覆う巨大バリアを生成していた。


リリィ

「【段階2】惑星防御シールド案。赤道軌道にリング型装置を多数設置し、魔力と電磁場の複合結界を張ることで、直接衝撃を受け止める」


ジャック

「リングと地上施設を結んで、全方位魔法陣を構築。これは本格的な大規模防衛網だ」


ガルド

「地上からの魔力供給もできる」


コモン

「制御端末は俺の分身体に任せて~。反応速度もリアルタイムで調整するよ!」


リリィ

「コン、計算をお願い。」


コンはすでに、全体構造の数式をくるくる回転させ、しっぽをふりふりさせる。


コン

「うーん、これは、うわあああ、だめっぽいー!」


コンの目が赤く光り、警告サインが卓上に表示された。

「この防御シールド、耐熱圧力は基準の62%! 衝撃波が襲った瞬間、北半球は結界破壊、南半球はマントルごと“ベロン”て剥がれちゃう!」


リリィ

「他に方法はない?」


沈黙の中、ホー博士がゆっくりと立ち上がる。


ホー博士

「惑星ごと異なる位相空間に逃げる。“空間ずらし”によって、爆発の影響をすり抜ける方法がある」


全員がその言葉に息をのんだ。


ジャック

「星規模の空間魔法、本気か?」


コン

「うん、それっぽいけど成功率は不明、前例がないから。でもやるしかないよね~」


リリィ

「皆の力を合わせれば、必ずできる。準備に入るわよ。」


・・・・・


◆空間バブル試験計画 三段階の実験と突破口


【軌道ステーション テスト管制室】


惑星セレフティアの上空に浮かぶ勇者ギルドの軌道ステーション。その内部、試験用の魔導管制室には多数の観測ホログラムが投影されていた。


リリィ、ジャック、ガルド、コモン、マーガレット、クロシャ、ホー博士、グネル、そして分析支援AI・コンが集まっている。


ホー博士

「惑星を守る位相空間を作るには、惑星を包む物理結界が必要です。まずは無重力空間での安定性検証から」


ジャック

「次に、小型衛星全体を覆うバブル展開試験。そして最後は、無人惑星に対する本格シミュレーションだな」


リリィ

「そうね。惑星サイズの物理結界を張るのが最大の難関だけど、順に試してみましょう。」


コン

「うん、コンも準備OK! 3段階、全部にセンサー飛ばしてリアルタイム解析しちゃうからね~!」


・・・・

◆第1段階:宇宙空間試験


軌道ステーションから数十キロ離れた宇宙空間に、リリィとガルドが転移していた。背後では、直径20メートルの魔法陣が展開している。


リリィ

「結界魔法展開 試作第1号”発動!」


魔力が静かに宇宙空間に広がり、半透明の球体が発生。空間そのものがわずかに歪み、星の光がかすかに曲がる。


ジャック(通信越し)

「物理結界の展開、確認。内部位相、通常空間と0.2%ずれを検出。成功だ!」


ガルド

「ただし、長くは保たねえな。7分で崩壊」


コン

「うん。原因は“内圧の不足”と“フレームの不安定さ”。でも、方向性は合ってるよ!」


リリィ

「第一段階、突破ね。次は、もっと実戦に近い試験」


・・・・

◆第2段階:衛星試験 “防御泡の殻”


小衛星「キルティナIV」。直径800メートルの無人衛星だ。


その全体を包み込むように、リリィたちはダンジョンコアver3.0で物理結界と空間バブル魔法陣を衛星上に展開した。


ジャック

「衛星全体を覆うように、物理結界魔法陣を展開、よし、これで“擬似位相ずれ空間”が完成するはずだ。」


コン

「シールド展開、カウント3、2、1、発動!」


光の膜がキルティナIVの全体を包み、まるで星が水の中に沈んだかのように、境界がにじんだ。


グネル

「重力波を模した干渉テスト、発射!」


衝撃波を模した魔導波が衛星にぶつかるが、物理結界が吸収するように外縁で減衰していく。


マーガレット

「やったニャ~、耐えてるニャ!」


コン

「でも持続時間がまだ短いの。臨界点に近いと崩壊する~。あと、魔力消費が多すぎる!」


リリィ

「じゃあ、いよいよ最後の試験に移るわ。」


・・・・・・・・・

◆第3段階:無人惑星試験


大気の無い惑星「カザルトα」。かつて鉱山として使われていたが、現在は完全に人のいない惑星。


ジャックがにやりと笑い、魔導格納庫を開いた。

「出番だ。スペースメタルゴーレム!」


轟音と共に、真紅と漆黒の外殻を持つ巨体が姿を現した。全身が、スペースキングワームとスペースデビルワームの外殻を錬成・融合させた特殊金属で構成されている。強度はオリハルコンの2倍以上、熱拡散性能、魔導干渉反射能力も極限まで高められていた。


コモン

「すごい外殻、ガンマ線も跳ね返すレベル。やっぱりワーム素材、規格外だな」


ホー博士

「では、実験を開始する」


惑星地表に、100体のスペースメタルゴーレムが配置され、ジャックとコンの指示で広大な物理結界魔法陣が展開されていった。


ガルド

「準備完了。物理結界、起動!」


地面全体に光が走り、惑星全体を包むようにゆっくりと、巨大な魔法球体が形成される。空間の歪みは、星そのものを包み込み、時空を少しずらすように見える。


ジャック

「続けて衝撃テスト!」


魔導砲口から、紫電をまとった粒子の奔流が放たれ、惑星の物理結界とスペースメタルゴーレムに激突した。


ズガァァァンッッ!


地響きにも似た衝撃が大地を揺らし、荷電粒子が乱流を起こす。物理結界の外縁は一時的に震え、内部の空気が唸った。


ガルド

「よし、ゴーレム、立ってるぞ。」


コン

「解析完了。防御率98.7%! 熱も振動も、反射と拡散で“内部貫通ゼロ”!」


マーガレット

「ニャ、まさに、最強の盾ニャ」


コモン

「スペースメタルゴーレム。この外殻を“バブルの枠”にも使えば、物理結界を安定できる」


ジャック

「それだ。バブルを外から支える“骨格”として、ワーム外殻素材をベースにフレーム化すれば、持続時間と安定性が飛躍的に伸びる」


グネル

「この素材であれば、惑星規模の“防御結界”に十分な耐性がつく。勝ち目が見えてきたな。」


コン

「うんうん! 安定してるよ! 空間バブルの中の“位相角度”が0.93ずれてる! これなら、超新星の衝撃、すり抜ける~!」


マーガレット

「ニャ、でも、本番の星は、もっとずっと大きいニャ」


リリィ

「本番では、セレフティア全体を完全に包まなきゃいけない。そのためには、ダンジョンコアver3.0を安定配置し、より安定した大きな空間バブルが必要よ。」


ホー博士

「理論上は可能だ。あとは実行に移すのみ。」


・・・・・

◆惑星セレフティア防御計画見直し


【軌道ステーション 作戦会議室】


試験を終えた一同が、再びステーション内の円卓に集まっていた。ホー博士が表示した新たなホログラムには、惑星セレフティアを含む第1〜第5惑星の重力干渉マップが立体的に描かれている。


ホー博士

「今、極めて重要な事実が判明した。この星系の軌道は、複雑な重力バランスの上に成り立っている」


ジャック

「つまり、セレフティアだけを物理結界で守った場合、残る惑星が連鎖的に軌道を失う?」


ホー博士

「その通りだ。特に第1、第2惑星は超新星爆発の荷電粒子に巻き込まれ、第4、第5惑星は不規則なスイング軌道に入り、やがて衝突か、恒星へ落下する」


コン

「うわー、星系ぐちゃぐちゃになるね~。コン、再計算したけど、“救うなら、全惑星同時が前提だよ!」


マーガレット

「ニャ、つまり、ひとつでも救い漏らすと、いずれドミノ倒し、全員共倒れニャ」


ガルド

「じゃあ、全惑星を一気に位相ずらしってことか? 正気の沙汰じゃねえな」


コモン

「無理じゃないよ。ただし、“同時展開できる空間バブル”と“惑星ごとの安定化骨格”がそれぞれ必要。つまり、骨格材料、あのゴーレムが、もっと必要ってこと。」


リリィ

「スペースメタルゴーレムね。今の試作機をモデルに、大量生産できる?」


ジャック

「作れる。ワームの外殻はまだ備蓄があるし、熱魔導炉を2機追加すれば、あと300体は製造可能だ。」


コン

「それなら、惑星ごとに“60体のメタルゴーレム”を中枢柱として配置して、全方向から空間バブルを固定する方式が取れるよ!合計で300体でピッタリ!」


ガルド

「1体1体が星規模バリアの支柱ってわけか。いい、気に入った。メタルゴーレム部隊は俺が指揮する」


ホー博士

「物理結界の展開タイミングの同期は、共有水晶で可能だ」


コン

「全部、今の仲間の手で作れるってことだね~!ワームたちの素材が、星系全部の盾になるっぽい!」


リリィ

「なら決まりね。5つの惑星を、5つの物理結界と空間バブルで覆い、スペースメタルゴーレムで骨格を強化。すべてを同時に、別位相へずらす。」


リリィ

「うん、みんなで未来を守ろう。セレフティアだけじゃない。この星系すべてを!」

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