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第11話 流動生命体の救援要請 惑星フェルノアを救え 後編

1000年前、滅びゆく星に残った者たちがいた。

彼らの名は、流動生命体。

熱と毒に包まれた惑星・フェルノアの深奥で、ただ“待ち続けて”いた。


そして今、救援の信号が勇者ギルドに届く。

「魔素枯渇、結界崩壊寸前、救援、求む」


宇宙規模の災厄――潮汐加熱。

巨大衛星の重力が星を焼き尽くし、命を飲み込もうとしていた。


彼女らは宇宙を駆け、星を救う。


そして、氷の惑星より水を呼び、大地の毒を抜き、

再び世界樹を根付かせる日がやってくる。


帰還する流動生命体たち、

星に築かれる浮島群、

芽吹く新たな文明、


これは、そういうお話です。

◆再生への祈り――浮島と世界樹

【本星・新生海域】


一連の作業をメタルゴーレム達に任せて、3年が経過した。大量の氷の転移、硫化物抽出作業が続き、大雨が続いた。かつて溶岩に覆われた大地には、徐々に海が広がり始めていた。地鳴りと蒸気の音が収まり、新たに生まれた水面が静かに、光を映し出す。


リリィは空を見上げながら呟いた。

「奇跡だわ。この星に、また海が戻った」


ジャックもモニターを見ながら静かに頷く。

「大気中の硫化物濃度も、除去作業のおかげで激減している。これなら、地上生態系の再構築も現実的だ」


コンがはしゃぎながら、海面を指さした。

「海、できてる! これ絶対、冷却成功だよ~!」


マーガレットも両手を広げてくるくる回る。

「わぁ、海風ニャ〜!」


ホー博士は真剣な顔で新たな提案を出した。

「次は、流動生命体たちの定住地を確保しよう。この新しい海の上に、浮島を作る」


グネルがダンジョンコアver3.0を操作し、魔法陣を広げる。

「まったく、こんな汚染された土で植物を育てろっていうの? いいでしょう、挑戦するわ」


リリィは浮かび上がる魔力の光を見つめながら、力強く言った。

「よし、この星に、浮島をつくろう」


・・・

【新生海域・浮島群】


やがて、海面には大小さまざまな浮島が並び始めた。中央には特に大きな浮島が創られ、流動生命体たちの新たな拠点となるよう設計された。


リリィたちは、避難世界から、3年ぶりに流動生命体たちを少しずつ転移させた。


コモンが仲間たちに呼びかける。

「ここが、私たちの新しいふるさとです」


流動生命体たちは静かに波紋を広げながら、浮島の上に次々と着地していった。


ホー博士が、さらに次なる準備を進める。

「次は、あの存在を迎え入れよう」


リリィが頷く。

「世界樹。かつてこの星を守り、命を育んだあの大樹を」


【お盆の世界・世界樹転移拠点】


かつて救い出された世界樹。いま、その根はしっかりと大地に伸び、幹は天空へと伸びていた。


シルフィーナが世界樹に触れ、優しく声をかける。

「さあ、帰りましょう。あなたのために、新しい大地を整えてきたの」


グネルがダンジョンコアver3.0で『お盆の世界』全体を物理結界で包む。さらに、ガルドが『お盆の世界』に巨大な転移陣を展開する。


リリィが、静かに命じた。

「転移、開始!」


・・・

【本星・中央浮島】


光の柱とともに、巨大な世界樹のあるお盆の世界が浮島の上にそっと現れた。そして、ダンジョンコアver3.0で作られた巨大な浮島はお盆の世界を受け止めるように形状を変えた。さらに、グネルが『お盆の世界』の物理結界を解いた。


広がる青い海、緑の浮島、銀色に光る流動生命体たち、その中央に、堂々と根を下ろす世界樹の姿は、この星に新たな命の始まりを告げていた。


リリィは、世界樹に向かってそっと囁いた。

「おかえりなさい。そして、またここから、命を育んで」


マーガレットもにっこり微笑んだ。

「これからいっぱいお友だちできるニャ〜!」


コモンも静かにうなずいた。

「この場所を、大切に育てます」


やがて、世界樹の枝先から、小さな緑の芽がほころび、新たな季節の訪れを告げる光景が広がっていった。


・・・・・・・・

◆浮島群の誕生

【本星・新生海域 世界樹中央浮島】


新たに形成された広大な海、そこに、次々と形成する無数の浮島たち。

そして中央には、堂々と根を下ろす世界樹の姿


ダンジョンコアver3.0の力で、リリィたち『虹色の風』は、浮島創造計画を急ピッチで進めていた。


リリィが広がる海原を見渡しながら、静かに呟く。

「本当に、こんなにたくさんできたのね」


ホー博士が腕を組み、満足そうに頷く。

「現在、設置済みの浮島は102基」


グネルがデータを見ながら補足する。

「一つ一つが小さな“生きた大地”になっているわ」


コンが元気よく飛び跳ねながら指を指す。

「あっちの島はね、食べ物育てる農園っぽい!あっちはお花畑だよ〜!」


ジャックも地図を見ながら続けた。

「機能別に区分けしてある。居住区、農業区、研究区、医療区、教育区・・・必要なものは、すべて順次展開していく。」


マーガレットはふわふわと浮かびながら、一面に広がる花の浮島を指差した。

「ここ、わたしが作ったお花島ニャ〜!」


リリィも微笑んで応じた。

「いいわね、マーガレット。この島で、たくさんの命が育つわ」


中央の世界樹を囲むように、放射状に並ぶ浮島群。小さな川がいくつもの島を繋ぎ、水路網として生命の息吹を運んでいる。


ガルドが両手を広げて大声を上げた。

「なんだかもう、小さな国家だな、こりゃ!」


ホー博士はにやりと笑った。

「国家と言ってもいいかもしれないな。この星は、知識と希望の発信地になる」


リリィは遠く、群青に広がる海を見つめた。

「きっと、ここからまた、新しい世界が始まる」


世界樹が、静かに、しかし力強く枝を広げる。


・・・・・・・・・・・・・

【本星・新生海域 世界樹の浮島】


遠い宇宙へと旅立った流動生命体たち、1000年前、故郷を離れ、宇宙を彷徨っていた彼らが、この星の再生を知り、少しずつ、故郷へと帰還し始めた。


宇宙ポットや小型転移船が、次々に転移して現れる。


リリィ、ジャック、ガルド、マーガレット、そしてコモンは、浮島の中央、世界樹の根元に立って、その光景を見守っていた。


コモンは目を細め、声を震わせた。

「みんな、帰ってきた。」


リリィも、静かに微笑んだ。

「ここが、彼らにとって、かけがえのない故郷なのね。」


グネルは腕を組みながら、感慨深げに呟く。

「本当に、待ち続けていたんだわ」


流動生命体たちは、浮島の上に拠点を築き始めた。


魔力を込めた液体で形成された柔軟な建造物、彼ら特有の流動性を生かした「生きた都市」が、海辺に、そして世界樹を囲むようにして少しずつ広がっていく。


マーガレットがくるくると回りながらはしゃいだ。

「新しい町ができるニャ! お花もいっぱい植えるニャ!」


・・・・・・・・・・・

◆知恵の帰還――新たなる文明の芽吹き

【本星・新生海域 世界樹の浮島】


青い海、緑の浮島、中央にそびえる世界樹、かつて溶岩に沈んだこの星に、静かに、しかし確かに命が戻ってきていた。


そして今、空に幾筋もの光の尾が現れた。流動生命体たちを乗せた宇宙艇、宇宙ポッド、航行カプセル。それらは、はるか宇宙を旅してきた仲間たちだった。


リリィたち『虹色の風』は、世界樹の根元に立ち、その光景を見守っていた。


コモンは胸に手を当て、涙ぐみながら呟いた。

「みんな、帰ってきた。長い、長い旅を終えて」


次々に転移してくる流動生命体たち。その数は100体。1000年前、この星を救うために飛び立った者たちだ。


だが、彼らはかつてのままではなかった。その体は、それぞれの旅の記憶を映すように、さまざまな星の人種の姿をしていた。


ホー博士が驚嘆の声を漏らす。

「これは、1000年間、各地の星系で文明と交流し、知識と技術を蓄積してきたのか」


グネルも目を細め、静かに言った。

「彼らは学び、進化し続けてきた。だからこそ、今ここに、“未来を築く力”を持ち帰ったのね」


コモンは里帰りした仲間たちと触れ合い、一体一体、短い思念の挨拶を交わしていった。


そして、流動生命体たちはすぐに動き始めた。


浮島に、建設用の魔導フレームを展開し、液体構造体を編み上げることで、瞬く間に建築物の基礎を作り上げていく。


透明な膜のような建物、呼吸する塔、水と魔素を循環させる「生きた都市」が、目の前で立ち上がっていった。


ジャックがモニター越しに分析しながら、感嘆する。

「これは、各星系で得た技術を組み合わせている。魔導建築、バイオ工学、空間魔法、まさに文明の融合だ」


リリィも目を見開いて見つめながら、静かに呟いた。

「1000年。彼らは、それだけの時間を使って、知識を育ててきたのね」


マーガレットは嬉しそうに笑いながら、

「お花も、たくさん咲くニャ。新しい町、楽しみニャ!」


コモンも強くうなずく。

「この星に、新しい命、新しい文化をみんなで育てていきます」


ガルドが腕を組みながら満足そうに笑った。

「これなら安心だな。きっと、この星は、もう二度と滅びやしねぇ」


流動生命体たちは、世界樹を中心にして、次々に新たな都市群を作り上げていった。


水路を流れる澄んだ水、天空を舞う浮遊庭園、そして、夜空を彩る魔素の光。


すべてが、1000年の旅を経た知恵と希望の結晶だった。


リリィたちは、再び蘇った星を見つめながら、静かに、確信した。

「この星は、生きかえったわ」


・・・・・・・

◆最後の種達 シルフィーナの誓い

【世界樹中央浮島】


再生された灼熱の星、フェルノア。かつて溶岩に覆われていた地表には、今、青く穏やかな海が広がり、その中心にそびえる世界樹が、静かに枝を揺らしていた。


シルフィーナ・ローリセルは、世界樹の根元にひざまずき、そっと手を幹に添える。


ドライアドである彼女の魔素が、静かに木と共鳴し、世界樹の鼓動が、風とともに答える。


ゆっくりと、シルフィーナは背負っていたマジックバッグを開いた。


そして、ひとつ、直径1メートルほどもある、球状の種子を慎重に取り出して、そっと根元に置いた。その巨大な種子は、深緑の外殻に複雑な紋様が刻まれ、その中には何万種類もの植物の命が眠っている。


シルフィーナ

「これが、最後の種子集合体達。1000年前、あなたが命の灯を宇宙に打ち出したときの、希望の欠片。ひとつ、またひとつ。合計8個の巨大な種子集合体が、静かに、丁寧に、世界樹の前に並べられていく。


まるで、長い旅を終えた子どもたちが、親のもとへ帰ってきたかのようだった。


シルフィーナは、世界樹の幹に両手を当てた。

「あなたの子どもたち。この星に、また命を咲かせるために、私はこれから、8つの浮島にそれぞれを植えに行きます」


世界樹の枝が、ふわりと揺れ、一陣の風がシルフィーナの頬を撫でた。


まるで、感謝と祈りが込められた返事のように。


シルフィーナ

「ここから、また新しい命が広がっていく。この星がふたたび緑に覆われる日を、共に見届けましょう」


彼女は深く一礼し、再びひとつずつ、巨大な種子を抱えて浮島へと向かって歩き出す。


・・・・・・・

◆未来を築く、学園都市計画

【本星・新生海域 世界樹の浮島】


青く広がる海、芽吹いた世界樹、そして流動生命体たちが築き上げつつある生きた都市。

リリィたち『虹色の風』は、その光景を眺めながら、未来に思いを馳せていた。


そんな中、ホー博士がゆっくりと口を開いた。

「リリィ。少し、提案がある」


リリィは振り返り、微笑みながら答えた。

「聞かせて」


ホー博士は世界樹を仰ぎ見ながら、静かに語った。

「この星は、もう一度命を取り戻した。これから何百年、何千年とかけて成長していく。

だが、その成長をさらに加速させる手段がある」


グネルがホー博士の隣に立ち、続ける。

「それは、私たち自身が、この星に拠点を移すこと。研究所をこの星に建てて、未来技術の開発を続けるのよ」


コンも元気よく手を挙げた。

「ボクも賛成っぽい!この星なら、魔素も自然エネルギーもたくさんあるから、すっごい研究ができるよ〜!」


リリィは驚いたように目を見開いた。

「この星に、研究所を?」


ホー博士は頷き、さらに続けた。

「それだけじゃない。ここに、あらゆる世界から科学者たちを呼び寄せるんだ。流動生命体たちの都市と共存しながら、学問と魔法、科学と自然が融合する――新たな学園都市を築く」


ジャックが腕を組みながら慎重に言った。

「だが、そこまで大規模な計画を進めるとなると、資源管理、安全保障、自治体制、いろいろな問題も出るぞ」


グネルは微笑んで応じた。

「当然よ。だからこそ、私たちが最初の核になるべきだと思う。この星の再生と、未来を守るために」


マーガレットは目を輝かせながら叫んだ。

「すごいニャ〜!お花いっぱい、図書館いっぱいの町、作るニャ!」


コモンも力強くうなずく。

「知識を集め、未来を創る。そのために、私も力を尽くします」


リリィは、しばらく沈黙し、

青い海と世界樹を見つめた。


そして、静かに、しかし確かに言った。


リリィ

「いいわ。私たち自身が、この星の未来を育てる。学園都市を作りましょう」


ガルドが豪快に笑った。

「決まりだな。なら俺は、学園都市警備隊隊長ってところか?」


皆が一斉に笑った。


・・・・・・・・・・・・

◆開かれる星、宇宙港とエレベーター計画

【本星・新生海域 世界樹中央浮島】


流動生命体たちが築き上げた新しい都市は、日に日にその規模を広げていた。


かつて宇宙へ旅立った100体の流動生命体たちは、それぞれが訪れた星々との記憶とネットワークを持ち帰っていた。


そして今、彼らは提案した。


コモン

「私たちの仲間は、いろんな惑星に友人を持っています。この星を、宇宙の交流拠点にしたい」


リリィたち『虹色の風』も、その提案に賛同した。


ホー博士が手元のデータを広げながら語る。

「流動生命体たちのネットワークは広大だ。各惑星との行き来をスムーズにするため、

多数の転移魔法陣を恒久設置する必要がある」


グネルも頷く。

「地上と海上、それぞれに主要ゲートを配置。座標管理はダンジョンコアver3.0で一括制御できるわ」


コンが明るい声で付け加える。

「さらに!宇宙から直接アクセスできる、超大型の宇宙港も作っちゃうっぽい!」


ジャックも端末を見ながら提案する。

「惑星表面に宇宙ポートを設置、低軌道上に中継ステーションを建設。そこを転移ゲートとドック機能を持たせた宇宙港にする」


マーガレットがきらきらと目を輝かせる。

「宇宙のお友だち、いっぱい来るニャ!」


リリィは静かに、しかし力強く宣言した。

「そうね。この星を、宇宙に開くわ!」


・・・

◆本星・宇宙港建設拠点


ダンジョンコアver3.0が展開する巨大な魔法陣群。空間座標と魔力回路を精密に調整しながら、

数十基におよぶ恒久転移ゲートが次々と地上と海上に設置されていった。


さらに、高高度へ向けて、もう一つの大事業が始まった。


ホー博士が新たな設計図を広げ、静かに告げる。

「次は、宇宙エレベーターだ」


リリィ「宇宙からの災害や脅威に対抗するためには、宇宙に眼を向けておくのは必須ね」


ジャックが補足する。

「地上から静止軌道ステーションまで、ホムンクルス培養神器で生成した超強靭なケーブルを使って宇宙エレベーターを建設する。これで、大量の人員や物資も、魔力消費を抑えて輸送できる」


コモン

「すでに地球で作ったノウハウがある。AIゴーレムをメインに作業させれば、問題なく建造できる」


コンがうきうきと笑った。

「宇宙エレベーターまでの空間をダンジョンコアで結界すれば、安全に建設できるっぽい!すっごい丈夫なの作れるっぽい!」


ガルドがにやりと笑う。

「宇宙と地上を直接つなぐ階段ってわけだな」


リリィは世界樹を見上げながら、静かに呟いた。

「ここが、宇宙と命を繋ぐ新しい扉になる」


マーガレットは腕を広げて笑った。

「世界樹も、きっと喜んでるニャ!」


こうして、新たな命の星は、かつてない進化を遂げようとしていた。


宇宙港と転移ゲートの建設、そして天空へ伸びる宇宙エレベーター。


かつての溶岩惑星は生まれ変わり、惑星は、文明の発展とともに、宇宙へ開かれていくのだった。


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