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第9話 超新星爆発 惑星セレフティアを救え 後編

◆超新星爆発、観測宇宙船設置


【宇宙座標:ヴォルクスから0.25光年地点 観測宇宙船】


リリィ達は、2か月前に超新星爆発を起こした恒星ヴォルクスと惑星“セレフティア”との中間にあたる、0.25光年の空間座標に、観測宇宙船を配置していた。

この位置で、今日、超新星爆発の「ガンマ線バースト」と「重力衝撃波」が到達すると予測されている。


ホー博士

「2か月前の超新星爆発の波が、あと27分でこの座標に届く。本番を想定した、唯一の実地訓練になる。」


リリィ

「バブル展開準備は完了。今回は【観測装置α】、【スペースメタルゴーレムβ】、【制御カプセル】の3つに分けてテストを行うわ」


ジャック

「【観測装置α】は物理結界内に完全収納。【スペースメタルゴーレムβ】は通常空間に設置、【制御カプセル】は半位相ずれにする。影響差を観測する。」


ガルド

「ゴーレムの耐久力なら、いけると思いたいが、さて、どうなるか」


コン

「カウント開始っぽい! あと60秒で波が到達するよ~!」


観測ホログラムには、時空をゆがめながら迫ってくる“見えない壁”が映し出されていた。


到達。


空間に「ビリッ」と音が走るような感覚とともに、不可視の衝撃波が観測ポイントを通過した。


コモン

「今のは重力波だ。数分後にガンマ線とX線フロントの衝撃波が来るぞ!」


数分後、再び「ビリッ」という感覚。今度は空間の奥行きが歪むような凄まじい圧力波が通過した。


コモン

「このあと、約3時間後に荷電粒子嵐が来るぞ。陽子・ヘリウム核・電子などの高速粒子だ。物理結界がなければ、全滅する衝撃波だ」


【3時間後】


空間全体が真っ白に帯電していく。

突如として、巨大な雷のような閃光が走り、物凄い衝撃波が観測ポイントを通過した。


ジャック

「データ取得開始っ!? なにこれ、反応が異常だ!」


まず、空間バブルに覆われていた【観測艇α】が、突如内部から揺さぶられた。


コン

「観測艇、装甲30%損傷っ! 外壁が焼かれてる、で、なんで!? 内圧も位相も正常だったはずっ!」


次に、【制御カプセル】に衝撃。


ジャック

「内部構造70%損壊! 位相ずらしは合っていたはずなのにっ、完全に予測を超えてる!」


そして、最大の異変が、


ガルド

「ゴーレムが!」


スペースメタルゴーレムβが、何の予兆もなく、一気に崩れた。光の粒となり、まるで空間から“引き剥がされた”ように消滅していく。


コン

「外殻温度、急上昇じゃないっ! “外から来たもの”じゃなくて、“内側から破裂してる”!? そんなの、ありえないよっ!」


ホー博士

「この衝撃、ただの爆風でも放射線でもない。“何か別の力”が、空間そのものに干渉してる!」


ジャック

「位相ずれじゃ防げない。これは、“バブルの理屈”そのものが否定された?」


コモン

「何か、知らない種類の物理現象が混ざってる。これ、星系防御全体が危ういぞ!」


マーガレット

「ニャ、このままじゃ、だめニャ」


室内が沈黙に包まれる。

観測は成功した。だが、その結果は、『これまでの対策では不十分』という恐るべき結論を突きつけていた。


リリィ

「作戦が、暗礁に乗り上げた」


リリィたちは、再び立ち止まり、すべてを見直す覚悟を迫られていた。


・・・・・

◆ユリン局長からの情報


観測報告を勇者ギルドに届けた直後、リリィたちの魔導通信端末に突如、白髪の少女のホログラムが映し出された。狐の尻尾を揺らしながら現れたのは、勇者ギルド星の博物館探査局 ユリン局長である。


ユリン(ホログラム)

「そっち、試験、失敗したんだろ?」


リリィ

「ユリン局長、原因が分かったの?」


ユリン

「まあね。さっき観測ログ見て、ちょっと驚いたよ。あの宙域、ダークマターが異常に濃かったみたいだ」


ジャック

「ダークマター? でも普通、そこまで作用しないはずだろ」


ユリン

「普通の空間なら、な。でも、“位相をずらした空間”の方に、ダークマターが食い込んでたんだよ。おまけに、爆発の波もろとも、ずれた空間まで貫通してきた。結果、バブルの内側から壊されたってわけさ」


コン

「えっ、そんなの、ズルい~っ! 完全に外から守ってたのに、内からくるとか反則じゃん!」


ホー博士

「理論上は説明がつく。ただ、ここまでの密度と干渉規模は前例がない。あの宙域自体が異常だ」


ユリン

「で、対策だけど“今よりもっと深く位相をずらせ”。そっちで使ってる角度、浅すぎる。ダークマター帯とちょうど重なっちゃってる」


リリィ

「事前調査が甘かったということか。逃げるだけじゃダメ。“どこへずらすか”まで考えないといけないってことね」


ユリン

「そういうこと。“角度”が命取りになる。こっちでマップ引いたから、干渉の薄い層を選べ。ちゃんと送っといたよ」


ジャック

「つまり、全魔法陣の計算やり直しか。偏差ベクトルも再定義する必要があるな」


コン

「んもぉ~! でもしょうがない! 最初からやり直すよ~!」


ガルド

「要するに、もっと深く潜って、宇宙の“静かな底”に星ごと隠れろって話だな」


クロシャ

「厄介な話だが、筋は通ってる。やるしかない」


ユリン(微笑みながら、しっぽふりふり)

「じゃ、あとはよろしく。こっちはこっちで調査続けるけど、データと一緒に、甘いお菓子も送ってくれたら、もっとやる気出るかもな?」


ホログラムが消えると同時に、次なる戦いへの“座標”が、彼らの前に広がった。


リリィ

「次は、“もっと深い場所へ”」


その後、位相角を深くして、0.28光年の地点で再試験した結果は、良好であった。その結果を勇者ギルドに報告して、本番となる。


・・・・・・・・・

◆本番開始 ― 星々を包む転送の光


【星系中心惑星 赤道地下施設 司令室】


リリィたちは、星系の五つの惑星をそれぞれ包み込む空間バブルの制御に入り、いよいよ本番に向けた最終チェックを行っていた。


リリィ

「物理結界、空間バブル位相展開率、全惑星とも100%、スペースメタルゴーレム全300体、配置と同調確認」


ジャック

「時空構造は安定してる。誤差も0.0003以内。よし、これなら全体の“位相ずらし”がいける」


ガルド

「魔力供給ラインも全開。限界出力で支える」


コン

「うんうん! 全惑星、空間の“位相”がずれてきた! もう少しで、超新星の波が“当たらない場所”になるよ~!」


ホー博士

「大事なのは“逃げる”んじゃない。“波をすり抜ける”。空間の重ね合わせ構造を活かして、“存在の層”そのものを変えるんだ」


【観測宇宙船視点】


空間の遥か彼方、3カ月前に爆発した赤色超巨星の残骸。その衝撃波と放射線が、いよいよ星系外縁に達しようとしていた。


空間がわずかに震え、星々の周囲で張り巡らされた“空間バブル”が虹色に光り始める。


ジャック

「臨界到達! 空間位相ずらし、発動完了!」


リリィ

「全域に告ぐ!ショックに備えろ!」


観測ホログラムには、時空をゆがめながら迫ってくる“見えない壁”が映し出されていた。


到達。


空間に「ビリッ」と音が走るような感覚とともに、不可視の衝撃波が観測ポイントを通過した。


コモン

「今のは重力波だ。数分後にガンマ線とX線フロントの衝撃波が来るぞ!」


数分後、再び「ビリッ」という感覚。今度は空間の奥行きが歪むような凄まじい圧力波が通過した。


コモン

「このあと、約3時間後に荷電粒子嵐が来るぞ。陽子・ヘリウム核・電子などの高速粒子だ。さらに前回はダークマターが混在しる。今回の位相角は大丈夫だ」


【3時間後】


空間全体が真っ白に帯電していく。

突如として、巨大な雷のような閃光が走り、物凄い衝撃波が観測ポイントを通過した。


【到達】


瞬間、すべてが“止まったように”見えた。


爆発の波が、星系を“素通り”していく。


だが、それはバブル内にいる者には知覚できない。バブル外部の時空が一瞬だけ高速で動き、“この世界だけがわずかに重なっていない”という異常状態が生まれていた。


それでも、警報が鳴る。


コン

「やばっ、ゴーレムNo.9! 位相ずれ、遅れてるーっ!!」


外殻の1体が、わずかに本来の宇宙と接触を残したまま、爆発の波に“かすった”。


ガルド

「いかんッ――ッ!!」


閃光。


メタルゴーレムNo.9が、まるで“紙が燃えるように”崩れ、形を失っていった。


ジャック

「物理的には問題なかった。だが、“位相の内に”入れてなかったゴーレムだけが破壊された」


マーガレット

「つまり、全部まとめて、ちゃんと“ずらす”しかないニャ。自分自身も、道具も、居場所も、全部ニャ。」


ホー博士

「今、我々は“同じ場所”にいるが、宇宙にとっては“いない”存在になっている。これが空間位相ずらしだ」


【静寂】


やがて、爆発波の尾が通り過ぎ、観測データが“安全圏”へ戻ったことを示すアラートが鳴る。


ジャック

「爆発通過確認。すべて正常」


コン

「やったー!! 成功だよっ、成功っぽい!!」


リリィ

「私たち、逃げてない。ただ、重ならなかっただけ。星を、丸ごとずらしただけ」


ガルド

「だけど、それだけで救えたんだな。」


リリィはゆっくりと目を閉じた。涙があふれている。

「やっと、星の破局を守れたわ。」


今後、プラズマ膨張波が到達、星間物質や重力乱流が予測されるため、半年間は、全惑星をこのままの位相ずらしのままとする。


・・・・・・・・・

◆勇者ギルドに任務報告


【勇者ギルド本部 ギルド長執務室】


漆黒の石で造られた荘厳な執務室。天井には星々の軌道を模した魔導浮彫、壁には幾多の作戦記録が刻まれている。中央の重厚な机には、黒いローブをまとったギルド長が静かに座っていた。


その前に、リリィたち全員が並び、深く一礼する。


リリィ

「報告いたします。超新星爆発による星系消滅の危機、無事回避しました。全惑星、位相ずらし成功、被害なし。全住民生存を確認済みです。今後、プラズマ膨張波が到達、星間物質や重力乱流が予測されるため、半年間はこのままの位相とします」


ギルド長は静かに頷く。長い間、戦場と災厄の最前線を見てきた瞳が、わずかに細められた。


ギルド長

「本当に、よくやってくれた。誰一人欠けることなく、“星”を守った。それは、我がギルドの誇りそのものだ」


ジャック

「技術も魔法も、ギリギリでした。何かがかけていたら失敗していたかもしれません」


ガルド

「だが、俺たちは、諦めなかった。どんな理屈も、最後に押し通すのは“覚悟”だってな」


ギルド長は立ち上がり、ゆっくりとリリィに近づく。彼の足音が、広い部屋に静かに響く。

「リリィ。君は、この作戦を開始する前にこう言ったな。“どんな方法でも、必ず救ってみせる”と。」


リリィ

「はい。正直、怖かったです。でも、誰も諦めてなかった。それが、私の背中を押してくれました」


ギルド長は大きな手を彼女の肩に置く。かつて数多の英雄にそうしてきたように。

「今夜、星系連合が君たちのために祝賀会を開くと聞いた。素直に、楽しんでくるがいい。君たちはその資格がある。」


マーガレット

「ふふっ、静かで、落ち着いた時間。こういうのも、好きニャ~」


クロシャは黙っていたが、わずかにうなずいた。

彼もまた、全てが無事に終わったことに安堵していた。


ギルド長

「これは終わりではない。だが、一区切りではある。英雄たちよ、胸を張って、祝いの席に赴け。」


リリィ

「ありがとうございます。行ってきます。」


ギルド長は背を向け、再び執務に戻る。だがその背中は、どこか穏やかに見えた。


・・・・・・・・・・

◆ユリン局長へのお礼

リリィは手に持った小さな袋をちらりと見やり、微笑む。

「ユリン局長にお礼を伝えに行きましょう。今回の作戦、局長の協力がなければ、失敗していた」


ホー博士も同意するように頷いた。

「ダークマターの影響と正しい位相角、あれがなければ位相ずらしは成功しなかった」


グネルは表情を緩めながら、袋を持ち直した。

「アップルパイとコンビニボーソンの新作スイーツ。あの人、甘いもの好きだから」


三人は軽く笑い合いながら、博物館探査局へ向かった。


【博物館探査局 本部棟】


扉が開くと、そこはいつもと変わらぬ、落ち着いた空気が流れる空間だった。


局長室の前に立ち、リリィが静かにノックをした。


リリィ

「リリィです。お時間、いただけますか?」


中から、声が返ってきた。


ユリン局長

「おや、めずらしいな。入れ」


扉を開けると、窓際の大きな机に腰かけ、資料を広げていた白髪の少女、ユリン局長が、

小さく手を振った。


ユリン局長

「作戦、成功したんだろう? 顔を見りゃわかるさ。」


ホー博士は苦笑しながら答えた。

「まあ、結果としては。無事に全星系を救ったよ。」


グネルが袋を掲げ、静かに言った。

「そのお礼に、ささやかですが。アップルパイと、新作スイーツを」


ユリン局長は目を細め、にやりと笑った。

「へえ、ありがとう。こっちも、役に立てて嬉しいさ。」


リリィは小さく頭を下げた。

「本当に、ありがとうございました。ユリン局長の支援がなければ、今回の奇跡はあり得なかった。」


ユリン局長は、受け取った袋を軽く持ち上げながら、

いつもの飄々とした口調で言った。


ユリン局長

「いいさ。あんたたちが星を救ったってんなら、それ以上の勲章はない。それに、次に何かやらかすときにも、また助けてやらんとな。」


ホー博士がふっと笑った。

「次も、頼りにしてます。ユリン局長」


ユリン局長は、アップルパイの袋を小さく揺らしながら、

親しげに言った。


ユリン局長

「おう、次はもっとたくさん土産、期待してるからな」


三人は小さく笑い、静かに礼をしてから部屋を後にした。


背後で、ユリン局長が、ホログラムに広がる星空を見上げる姿が、どこか頼もしく見えた。


・・・・・

◆祝賀会 ― 守られた未来


【惑星セレフティア 首都 ガラスドーム式ホール】


透明な天井からは、澄み渡る夜空と星々が見える。静かな音楽が流れる中、ドームの中央には水晶でできた舞台。その上に、リリィたちの姿があった。


この日、星系連合の大統領をはじめ、各惑星の首脳陣、科学者、魔導技術者、そして多くの市民たちが集い、リリィたちの偉業を称える祝賀式典が開かれていた。


司会者

「本日ここに、私たちの惑星セレフティアを救ってくれた英雄たち『虹色の風』をお迎えいたします!」


拍手がホールを満たす。リリィたちは少し照れながらも、それぞれの正装姿で舞台へ立つ。


惑星セレフティア大統領(壮年の女性、青と銀の式服を着ている)が、歩み出てリリィに手を差し出す。

「あなた方のおかげで、私たちの命、家、未来が守られました。誰一人として、あの日、失われなかった。これ以上の勝利はありません。」


リリィ

「私たちは、ただできることをしただけです。でも、その“できること”が、誰かの明日を守れたなら、それが一番嬉しいです。」


大統領は感極まった様子で、リリィたち一人ひとりに感謝のメダルを手渡した。コンには特別に“プリン大使”の称号が贈られた。


コン

「えへへ~! やった~! プリン1年分つき~!? サイコーっぽい~!!」


会場は笑いと拍手に包まれる。


【ホール外 庭園区画】


その後の祝賀会では、屋外の芝生広場にテーブルが並び、各都市から集まった子供たちが走り回っていた。


魔導ゴーレムの人形劇。ホログラムで遊べる“宙に浮かぶ塗り絵”。プリンや果実パイの屋台。笑顔が絶えない。


リリィは、小さな女の子から折り紙の星を手渡された。


少女

「ありがとう、お姉ちゃんたちが来てくれて、夜が怖くなくなったの。」


リリィ

「うん、もう星は怖くないよ。これからは、ずっと綺麗なままだよ。」


ジャックは男の子に囲まれて、ゴーレム魔法を教えていた。


男の子

「ねーねー! ゴーレムって、爆発もするの!?」


ガルド

「いや、それは“失敗した時”の話だ。やめとけ、マジで。」


マーガレットは子猫たちと並んで日向ぼっこをし、コモンは出し物の司会を分身とともにこなしていた。


ガルドは、手品のように石を空に飛ばして見せ、子供たちから歓声が上がる。


そして、星々の上空では、スペースメタルゴーレムたちが、ゆっくりと旋回飛行していた。子供たちがその姿を見て、口々に叫ぶ。


「また守ってくれるかなー!」「あのゴーレム、かっこいいー!」


ホー博士はその様子を見ながら、静かにうなずく。

「科学と魔法が一つになったとき、星すら守れる。だが、一番守るべきは、あの笑顔だ」


ジャック

「次が来た時も、間に合わせる。それだけだ」


リリィは、みんなの様子を見渡しながら、満天の星空を見上げた。

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