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33.賢者の知恵


 二度前の人生で、私はプロキオン様から愛されていたにも関わらず、シリウス様を忘れられずに絶望した。

 だから『死の引力』で呪い殺されてしまったんだ。 


「いくら人生を繰り返してもミラを救えなくて焦った僕は、そもそも僕が関わらなければ、君は死なずに済むのではないかと考えたんだ。それで、信頼出来るプロキオンに君を任せようと思った。彼なら社会的地位もあるし、なにより神聖力がある。きっと、君を守ってくれるだろうと考えた。残酷なことをしてしまったのだと今なら分かる。本当に申し訳なかった」


 シリウス様は頭を下げてくださった。


 神聖力というのは聖職者の家系に生まれた者が持つ力のことで、神聖力が強ければ強いほど、神に祈りが届くとされている。


 何度も死を繰り返すような人間は、そんな彼の元に預けたほうが長生き出来ると推測されたのも理解できる。 


「いえ、悪いのはわたくしですから。プロキオン様にどこまでも甘えて、その恩に報いる事なく死んでしまっただなんて。もし仮に、彼に繰り返しの記憶があったのだとしたら⋯⋯わたくしを妻に迎え、あの時の仕返しをしようと考えられるのも頷けます」

 

「変わったことと言えば、もう一つありますわ。メリディアナ王女殿下とシリウス様が、いつになく親密でいらっしゃったことです。シリウス様が暴走してくださらなければ、危うくミラさんを失うところでしたから」


 隣に座るアルキオーネ様は、私の両肩に手を置いた。


 シリウス様が幼い頃からメリディアナ王女殿下と親交があったことは、今まで全ての人生に共通しているものの、同じ学園に入学されたのは今回が初めてのこと。


 恋人のように振る舞われたのも、共に過ごす時間が長かった影響?


「過去の人生でメリディアナ王女殿下は、同じく幼馴染のワズン=セギヌス侯爵令息と恋仲だった。それがどういう訳か、今回ばかりは彼と過ごす事はほとんどなく、僕との婚約を進めたがっておられた。メリディアナ王女殿下もワズンも、プロキオンほどでは無いものの、神聖力を持っているそうだ。陛下は僕のような騎士よりも、ワズンの方を大層、気に入っておられたが⋯⋯」


 陛下はメリディアナ王女殿下を、アルデバラン公爵家のような武力を誇る家系よりも、神聖力のある家系に降嫁させたかった? 

 

 理由は、あまり考えたくはないけれども、その方が生涯を添い遂げられる確率も上がるからなのだろう。  


「神聖力と言えば、前回の人生で、聖女様が破滅の魔女だったと発覚しました。シリウス様はプロキオン様と面会されると言い残し、魔女に捕らえられたんですよね⋯⋯?」


 あの時のシリウス様の苦しそうな姿は、今でも目に焼き付いている。

 全ては聖女様とプロキオン様が仕組んだ罠だったのだろうか。


「僕は今までプロキオンに全幅の信頼を寄せてきた。不思議なのは二度前の人生の後、前回の人生での彼は学生生活では目立った行動を起こさず、ミラと不自然に接触するような事もなかった。僕が聖女を本格的に怪しむようになり、連絡を取るようになってから、彼は人が変わってしまったように感じる」


「今回の人生では聖女様のうわさは聞きませんし、まだ覚醒されていないようですわね。確か前回の人生では、そろそろだったかと」


「破滅の魔女の狙いは、私たち四人への復讐と、人類の抹殺でしたよね。破滅の魔女が探し求めていた最後の賢者がフォーマルハウト様だと判明したので、直ぐにでも手出ししてくるかもしれません」


「警戒するに越したことはありませんね。しかし、いつも破滅の魔女は、ミラさんに直接手を下すことはなく、同じ時期、同じ場所で狼の魔物を使って呪いをかけるという方法を選択しています。もしかすると、彼女は全盛期の状態とは異なり、使える能力や行動範囲、時期等が制限されているのではないでしょうか?」


 フォーマルハウト様のおっしゃる通り、破滅の魔女シャウラは、いつも私に直接手を下さずに、魔物を使って呪いをかける。

 

 聖女の姿で直接会ったにも関わらずに、手出ししてくることはなかった。

 それに、いつも彼女と会話するのは、夢の中だけ。

 それも、二十歳の誕生日を迎える頃だ。

 

 物語の中のシャウラは、世界を滅ぼすだけの力を持っているとされていたし、様々な種類の魔法を使っていた描写がある。


「シャウラはシレンスの森に封印されたのですよね。そして、ちょうど千年経過することで自然に封印が解けたと本人が言っていました。もしかして、今ならまだ、彼女は封印されているのではないでしょうか? あと、陶芸家の少年ケイドがシレンスの森の出身なんです。彼とその家族が約一年後に魔物に襲われてしまうはずです。何か関係があるとは思いませんか?」


 森の中で封印が解けたシャウラが、魔物を使って森の民を襲い、私を見つけ出して呪いをかける⋯⋯

 そして聖女様に擬態するか、乗り移るかして、私たちの動向を見守っているとしたら⋯⋯


「シレンスの森か⋯⋯その場所がどこにあるのか、どのような場所なのか、今は情報がない。僕たちで再び破滅の魔女を封印することになったとして、情報がなければ対処できない。調べることにしよう」


 次の私たちの目的地は、シレンスの森に決定した。

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