第89話 「地獄の底から帰ってきて」
ズカン!!バキィッ!!ズドンッ!!
スズユキ
「殺ス…気ヲ失オウガ関係ナイ…殺ス…殺ス…!」
レオファング
「準備はいいか、ジェミニ。」
カストール
「いつでもオーケーだ。いくぜ、兄貴!」
ポルックス
「愛する弟のためのショー・マスト・ゴーオン!
いざ、幻想曲夜会!」
ポルックスがバイオリンを召喚し、
カストールがコントラバスを召喚する。
カストール
「俺エレキ(ベース)がいいんだけどたなー…」
ポルックス
「交換してもいいぞ、我が弟カストール。」
カストール
「いーや、大丈夫だわ。せえ、の…!」
合図をかけると優しい曲が流れてくる。
途端に激しい曲調にかわると辺りがコンサート
ホールのような雰囲気に変わり始める。
レオファング
「すごい…オーケストラを聴いているような
気分だ…」
アグナルーネ
「ホント…うっとりしちゃうわ…!」
視線が双子に映る、スズユキもまた目と耳を
奪われていた。音楽に心を奪われたか、
武装が落ちる…が、赤い衝動は治っていない。
スズユキ
「………」
アグナルーネ
「スズユキさん!」
アグナルーネの声で途端に振り向いた。
アグナルーネ
「もうやめて!私は無事よ!何ともないの!
ソイツはもう死んでるわ、だから…もうやめて!」
スズユキ
「コ、殺…ス…コ、ロ、サナケ、レバ…」
衝動に負けないように強く抱きしめた。
アグナルーネ
「怨沙に呑まれないで…!
またこんなふうに優しく抱きしめて…お願い!」
スズユキ
「ウ…ウ、アア、アああ…!」
願いが届いたのか衝動や喧騒感が治った。
スズユキ アグナルーネ
「ルーネちゃん!」 「おねえちゃん!」
二人強く抱きしめた
レオファング
「ふぅ〜…一件落着。ジェミニもありがとね」
カストール
「良いってことよ!ほらアニキ!
さっさと挨拶して帰るぞ!今日はクラブだろ?」
ポルックス
「実に良い演奏だった!流石は我が弟カストール!
もうこのまま具現化して永遠にセッションしよう
ではないか!」
ヘレス
「仲良しなのは良いだけど、ちょっとうざいだね」
カストール
「だろ?ほらアニキ、いくぞ!
じゃあな!今度は電子音楽やらせてな!」
そう言い残すと消えていった。
一方で最上階。
屋上階ではソライトが十字架に貼り付けられ
縛られている。
ソライト
「うっ…ううん?はっ、ここは
たしか抵抗したけどボコスカと殴られその後…」
空は薄暗く雲の流れが早い。体はとても肌触りの
良い絹のような糸でぐるぐる巻きにされている。
ソライト
「周囲には誰もいない…助かったのか?
にしてもこの状況、危機的なのに心地いい…」
あまりの肌触りの良さにもう一眠りしようと
うとうとしていたらばさ…ばさ…と
優しい羽音が近づいてきた。
蛾だ。不気味な面をした蛾がこちらを睨む。
ソライトは緊張して声がでない。
ソライト
「(身動きは取れないし図鑑も開けない
格好のエサって感じだな、この状況。)」
そう思っていた時、渦巻き模様の口が
ソライトのお腹を突き刺した。
ソライト
「ごはぁっ…!?」
痛い…が死ぬような痛みではない。
ただ何かが吸われている。液体のような何かが
確かに吸われていく感じがあった。
満足したのか、ニタァ…と笑ってどこかへ
飛び去った。
ソライト
「ハァ…ハァ…今何か…吸われてった…な…」
頭がクラクラして眩暈がすごい。
そのまままた気を失ってしまった。
そしてそんな生活が3日続いた。
ソライトも流石に気づいたかこの状況がしんどい
ならばとなんとかして図鑑を開こうと
もがいて見た、が…
ソライト
「うっ…ハァ…はぁ…クソっ、力が…沸かねえ…」
この瞬間にようやく生命力を吸われていることに
気づいたようだ。




