第69話 「暑苦しい森」
キャンプを畳んで出立の途中、次の道を探していたスズユキが戻ってきた。
スズユキ
「皆さん!偵察が完了しました
次はここから真っ直ぐ行った先を右です!」
レオファング
「ありがとう、さて!
僕らもそろそろ片付けを終えますか」
図鑑から出していた(ワゴン車)を片付ける。
再び林道に入ると右に矢印が建てられている。
その時、霧がかかった。
霧の奥から謎の人影が「こっちこっち」と
呼びかけるように手招きする。
レオファング
「…みんなには見えてるのかな」
スズユキ
「…ええ、激しく呼びかけてきていますね」
ソライト
「んえ?俺らにはただ手招きしてるようにしか
見えないんだけど…」
アグナルーネ
「え、私にも必死に呼びかけているように
見えるのだけど…」
ヘレス
「何かの罠だべさ。
ヴァルハレアの言った通りの道を行くだよ」
スズユキ
「…私、左に進みます。なんだか心配です…」
アグナルーネ
「私も…」
レオファング
「どうする…?流石に危険すぎるぞ」
ソライト
「…わかった。そちらの意見を尊重するよ
だけど…持っていて欲しいものがある」
そう言ってソライトが図鑑を開く。
ソライト
「"クコウホ・デウヨシンブ・
トワイカ・ギナツヲパンデ"」
(携帯電話)が出てきた。
一方はガラケー、もう一方はスマートフォンだ。
一度手探りで操ってみてスズユキがガラケーの
方が馴染んでソライトはスマートフォンを
手にした。
ソライト
「…よし、じゃあ何かあったら連絡な!」
スズユキ
「はい!」
ソライト達は右に進んだ。
ヘレス ソライト
「…大丈夫だかね?」 「信じるっきゃねえさ。」
右の森林道はとにかく暑かった。
おまけに地面が湿っているのか歩くたびに
ぬちょっ、ぬちゃっと音を立ててくる。
乾いている箇所もあるが滑りやすく気が抜けない。
レオファング
「ソライト〜…馬だそうよ、うまー」
ソライト
「おいおい…まだ別れて30分だそー?
というか襲撃に備えて魔力は温存させてよー」
気温35℃、歩くだけで体力が吸われていく。
小高い丘のような土壁、照りつける陽射しは
葉に隠れてちらちらと差し込んでいる。
数時間後、やがて一向は泉を発見した。
ヘレス
「ちょっと待ってな、今検査キッドを…」
レオファングは有無を言わずに水を飲んだ。
ソライト
「あ、ちょおい!飲むなよ!
疲れてるのはわかってるけどよ…」
レオファング
「(そんなこと言われても…え?)」
ソライト
「…?なんて言った?」
レオファング
「(いやだからそんなこと言われても…って!?)」
ヘレス
「お二人ともお待ちどうさん。
毒腺みたいだねー。残念…ってどうかしただか?」
レオファングが飲んでしまったのは
飲むと声が出なくなる毒の水だ。
喉を震わせる機能を麻痺させる危険な物で、
やがて視力や神経を麻痺させて死に至らせる。
回復魔法や異常解除をかけてみたが
一向に容体は良くならない。やがて高熱を
引き起こし一度横になることにした。
ソライト
「ヤバいぞ…こんな時に…!」
レオファング
「(すまない…)」
ヘレス
「なんとかして解毒剤を作るだよ!」
持ち合わせの薬草はかなりの種類が揃っていた。
しかし喉の神経を侵す病原体を撃退する薬草が
どうやって作られるのかはわからない。
だがそれらしき物は作れる。
ソライト
「(ソーダスライム)はオブラートにしよう。
さて問題は…治療を行う物だよな…」
ヘレス
「"ビギニメール・ファーマシーモード"
とりあえず(サマシソウ)と(ダツリョクソウ)
で解熱剤を作るだよ。」
薬局と化したビギニメールで調剤を始める。
ソライトは図鑑で似たような現象がないか探し始めた。
ソライト
「あった、えーと…(毒の泉にご注意!)か。」
ミラージュ・データブックの記事
「〜気をつけろ、ヤツらは狙っている。〜
…毒の泉に潜むのは目では追えない極小の
生物、通称(微生物)だ。特に皮膚を侵す物は
骨になるまで蝕み、器官を侵すものは脳みそ
が無くなるまで喰らい尽くす。」
恐怖を訴える文字にソライトも戦慄する。
大自然の威力をこうもまじまじと見せつ
られるとは思わなかった。
ミラージュ・データブックの記事
「〜南蛮王直伝、森の要塞作戦〜
…この地域周辺は険しい山道だ、なれど
安全な道はある。そこを塞ぐのだ。次に
疲弊を誘ったのなら毒腺が侵入者を撃退
するだろう。暑さ、害虫、毒!まさに無敵だ!」
ソライト
「すげえ場所があったんだな。
この後どうなるんだろう」
ソライトは恐る恐るページを捲る
記事
「…だが近くにあった(安養腺)は
それらの毒を打ち払ってくれる。
恐れることはない。」
ソライト
「なるほど!その水を使えばいいのか!」
ソライトはそのことをヘレスに伝えた。
ヘレスも賛同してその泉をさがす。
しかし目の前に立ちはだかったのは
3種類の泉だ。どれが本物なんだろうと迷う。
ヘレス
「ビギニメールは置いてきちゃっただ…
抽出ができないだよ…!」
ソライト
「くっそ…こんな時どうすれば…!」




