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魔剣使いのリリィさん  作者: kano
9/14

「あ…そんな…なんで兄さんが…」

ガタガタと震えながらコルトがつぶやいた。

「来るぞ!リリィ!コルト!構えろ!」

ライオットが剣を抜き放ち、私たちに向かって叫んだ。

私も魔剣を抜くと、攻撃に備える。

コルトは杖を握りしめて、顔面蒼白だった。

「コルト!しっかりして!」

私の言葉にコルトはハッとした。

その瞬間だった。

魔物の腕が私たちに向かって振り下ろされた!

私は咄嗟にコルトに体当たりした。

私の動きで、私たちはなんとか直撃をかわした。

「コルト!今は戦闘中よ!」

「すみません、リリィさん…」

コルトは顔面蒼白のまま、謝った。

「とにかく!あなたのお兄さんを助けないと!」

「分離させる方法はあるのか!?」

私とライオットの言葉に、コルトは考え込む表情になる。

「魔物だけにダメージを与えられれば、あるいは…」

「リリィ!俺たちで行くぞ!コルト!お前は魔法で援護してくれ!」

「わかった!いこうライオット!」

私とライオットが魔物の前に進み出ると、コルトは後方で杖を構えた。

「ウィンド・シックル!」

無数の風の刃が、魔物に向かっていく。

ズバッ、ズバッ

魔物の体に切り傷が出来た。

しかしさほどダメージは受けていないようだった。

私は魔剣を手に飛び上がった。

「たあぁ!」

魔剣の一撃を振り下ろす。

一撃は魔物の肩口に当たった。

ライオットが下方で剣を薙ぎ払う。

魔物の足元に剣が届き、魔物は動きを止めた。

しかし

「らーん、すぺくとる、ふぁいむ、ろざりお…」

えっ!?これって

呪文詠唱!?

魔物の頭上に取り込まれた、コルトの兄の口から、呪文の詠唱が聞こえた。

「まずい!リリィさん!ライオットさん!下がって!」

コルトが慌てたように叫んだ。

「大魔法が来る…!」

ボゥ…と巨大な闇色の球体が、魔物の上空に具現化し始めた。

「なにあれ…!」

「リリィ下がれ!なんかヤバいぞ!」

ライオットが叫んだ。

私は慌てて身を翻した。

「るーん、せくりてす、えーると…ダークマター!!」

ゴボッ

巨大な闇色の球体は私たちに向かって落下してきた!

「やばい!」

私は魔剣を盾にした。

ライオットとコルトを後ろに庇う。

そのまま魔剣の力、闇の盾を発動した。

闇色の盾が現れる。

ドオオオン!

魔力の奔流。

強大な力だった。

魔剣でバリアを作らなければ、やられていた。

なんとか私たち3人はその中でやり過ごすことが出来た。

が…

私たちの他にいた、何人かの他の冒険者たちは全滅だった。

皆倒れ、ぴくりともしない。

『グウウン!』

魔物が鳴いた。

「何よこれ…こんなの桁違いじゃない!」

「兄の…ラルトの魔力です…今のは最大級の魔法攻撃だった」

「やばいな、また今のを食らったら命がないぞ!」

コルトのつぶやきに、ライオットがうめいた。

「おーい!あんたたち!」

その時だった、急に遠くの方から私たちに誰かが声をかけた。

建物の影に隠れ、魔法を喰らわなかったようだ。

「あれは…!兄さんの仲間の!」

コルトがダッシュでそちらに走っていく。

「ソーレルさん!」

「コルトくん!良かった、無事だったか…!」

そこにいたのは2本の剣を持った剣士だった。

私とライオットも警戒しながらそちらに向かう。

「ソーレルさん!どう言うことなんです?これは…」

「コルトくん、ラルトなんだが、禁呪に手を出したんだ」

「コルト、この人は?」

「ラルト兄さんの仲間の剣士、ソーレルさんです」

私の問いかけにコルトは答え、再びソーレルに向き合う。

「禁呪ですって!?どうしてそんな…」

「ダンジョンに入って、魔物を討伐していたんだ…すると変なやつに会って…エルドラド…と言ったかな」

その言葉に、私とライオットは顔を見合わせた。

エルドラド…私の前の魔剣の持ち主だ。

ノイジーが魔剣と同化したとき、私たちを攻撃していた。

あいつが…!?でもなんで

「エルドラドとか言うやつが、ラルトに禁呪の呪文書を渡してきたんだ。もっと強くなりたくないか、と」

「まさか…そのせいで」

「ああ…禁呪を唱えた途端、現れたあの魔物にラルトは取り込まれてしまった」

ソーレルの言葉に私たちは息を呑んだ。

その魔物は私たちを探してキョロキョロとしていた。

まだ見つかってはいない。

「ソーレルさん!兄を引き剥がす方法はないんですか!?」

コルトの言葉にソーレルは首を横に振った。

「わからない…どうしたらいいのか」

「そんな…!」

コルトが崩れ落ちた。

しかしすぐに立ち上がり、ぎゅっと杖を握りしめた。

「よし…魔物だけを攻撃しましょう…!」

「やってみる価値はあるな」

コルトの言葉にライオットが答えた。

ぎゅっと目を瞑っているコルト。

強く、兄を助けることだけを考えている。

コルト…あなた強いのね

私はそんな彼の肩に手を回した。

「やろう!コルト!きっと助けよう!」

私の言葉に、こくんとコルトはうなづいた。

「また俺とリリィが魔物の注意を引きつける!コルトは魔法で魔物を攻撃してくれ!」

ライオットは再び剣を抜いた。

「行くぞ!リリィ!」

「わかった!」

私とライオットは、建物の影から飛び出した。

「ソーレルさんは、味方を呼んできてください!僕たちだけでは無理かもしれない」

「わかった!気をつけろよ!コルトくん!」

ソーレルは城の方へと走っていった。

コルトは建物の影から出ると、キッと魔物を睨んだ。

「兄さんは、僕が助ける!」




呪文詠唱、それは魔法の発動に必要なアクション。

でもコルトは詠唱を必要としない。

魔力を一瞬で発動する。

彼は天才なんだ。

そのコルトの兄、ラルト。

その彼でさえ、詠唱は必要だっていうのに。

コルトは言った。

兄は本物の天才だと。

ううん…

コルト、あなたはすごい人なのよ。

どうしてこんなに謙虚で居られるんだろう。

コルト、どうか。

あなたのその力で道を切り開いて。

どうか…




「グハッ…」

コルトの口から、大量の血が溢れた。

「コルト!?」

私は叫んだ。

度重なる魔力の放出…コルトはもう限界だった。

身体を蝕んでいるのは魔力切れだ。

それだけじゃない。

コルトは自分の寿命さえ、魔力に変換していたんだ。

「やめろ!コルト!これ以上魔法を使うな!」ライオットが止めるが、コルトは再び立ち上がった。

「いいえ、兄さんを助けるまで止まりません」

血を流すコルトに私は駆け寄った。

「ダメ!やめて!コルト!」

「リリィさん…すみません」

コルトは再び杖を構えた。

「行きます…最大出力で放ちます!リリィさん、離れて」

魔物はコルトの連続した魔法を受けて、虫の息だった。

なんとか魔物を倒そうと、コルトは全力で魔法を放ち続けていたのだ。

でも、コルトはもう満身創痍だった。

このままでは…!

「コルト!別な方法を考えよう!?そうしないとあなたが…!」

「リリィさん、大丈夫です」

ニコッとコルトは笑った。

「兄さんは、僕が助けます」

血を口から流しながらも、コルトは笑顔だった。

やめて…!

私はノイジーのことを思い出していた。

あの時も彼は笑っていた。

魔剣使いになってくれ、と私に言った。

私は思わず涙が溢れ出す。

「やだ!やめて!コルト!」

「いきます…マジック・ソード!」

コルトの背後から無数の光の剣が現れた。

そして剣は魔物に向かって飛ぶ。

魔物の頭部が、剣によって切り落とされた!

やった…!

そして魔物は崩れ落ち、チリになって消えていく。

残ったのは、ラルトだった。

彼は地面に倒れていた。

「やった!助けられたよ!コルト!」

私はコルトに抱きついた。

ヨロッとコルトは私に身を預けてくる。

ハッとして私はコルトを見た。

コルトは虫の息だった。

「コルト…!ライオット!来て!コルトが!」

私の叫びにライオットが走ってくる。

「おい、どうしたコルト…!兄さん助かったぞ!」

ライオットがコルトを抱き抱えた。

コルトの息はヒューヒューと、苦しそうだった。

「あ…兄さん…よかった…」

「コルト!しっかりして!」

私は思わず彼の手を握った。

彼は少し笑った。

「ありがと…リリィさん…」

「ライオット!ミオンを呼んできて!回復魔法を…!」

私が叫んだその時だった。

シャラ…

美しい水のカーテンが、私たちの周りを囲んだ。

え…これは…!?

私はびっくりして、酒場の方からやってくる人物を見た。

「ルーン!?」

そうだ、この魔法を放ったのはルーンだった。

「お姉ちゃん、私、魔法が使えるようになったの。水の精霊の力で、回復するよ…!」

ルーンがくるくると指を回す。

水の精霊ウンディーネが、姿を現し、コルトの周りをくるくると飛んだ。

シャワアア

美しく優しい水の奔流、雨だ。

暖かい光が溢れてきた。

コルトの息はみるみる穏やかになっていった。

私は思わず涙ぐむ。

「コルト…!良かった…!」

「ん…リリィさん…!?」

私に膝枕されていたコルトは

ハッと飛び上がり真っ赤になった。

「す、すみません!」

「どうしたの?何謝ってるの?」

「だって…膝枕…いや、なんでもないデス…」

コルトはゴニョゴニョとつぶやくと、ハッとして、兄の方へと駆け寄った。

「ラルト兄さん!」

「ん…コルトか…?」

コルトの言葉にラルトはすぐに気がつき、上体を起こした。

「まさか俺が取り込まれるとは…お前が助けてくれたのか?」

ラルトはコルトを見た。

コルトはふと視線を落とした。

「僕の力じゃないよ、みんなで助けたんだ」

「そうか…すまなかったな」

ラルトはゆっくりと立ち上がった。

「コルトの仲間か?ありがとう…助けてくれて」

「ううん、いいのよ。無事で良かったわ」

私の言葉に笑顔になったラルトの表情が変わった!

「あぶない!」

ハッとした私は

魔物の方を見た。

魔物は消滅する瞬間に

私に向かって首だけで襲いかかってきた!

ラルトが私を突き飛ばした!

ブシュウ!

魔物の牙がラルトを貫く。

「い、いやぁあ!」

私は悲鳴を上げた。

ラルトは身体から血を吹き出した。

「ルーン!回復魔法を!」

しかし魔物は消えず、ラルトを口に咥えたまま飛んだ。

『この者は我のものだ…』

そう言葉を残し、魔物は消えていく。

ラルトの姿も、魔物と一緒に消え始めた。

『この者は連れていく…貴様らのことは忘れんぞ…きっと殺してやるからな!』

そううめくようにつぶやいて、魔物とラルトの姿は消えた。

「兄さん…!」

コルトは慌てて、周りを見回したが、その姿はもうなかった。

「そんな…どうして」

「魔界に連れて行かれたんだよ…」

後方から声がした。

ミオンだった。

ミオンとルルカが合流した。

「わんっ!」

そしてフェーンが私に向かって飛びついてきた。

「フェーン!」

私は思わずぎゅっとフェーンを抱きしめた。

こんなこと、こんなことになってしまうなんて

「次の目的ができたようだ…」

ライオットがつぶやく。

「ラルトを助けに行かないとな」

コルトは下を向いた。

「すみません…僕が甘くて…ちゃんととどめを刺せば」

「お前は死にかけてたろ」

ライオットがやれやれとつぶやいた。

「リリィ、次は魔界だな」

「そうね」

私は思いを馳せた。

魔界…ノイジーの故郷だ。

そしてこの魔剣の元々のあった場所だ。

そして

「わんっ!」

フェーンが腕の中で鳴いた。

そうね、フェーンの故郷でもある。

私たちは全員揃っていた。

私、リリィ、ライオット、コルト、ルーン、フェーン、ミオンとルルカ。

ミオンは若干体調が悪そうに

「うっ…飲み過ぎた…」

そううめいた。

私はみんなを見回した。

次の目的地が決まった。

魔界だ。

そう、きっとこのメンバーならなんとかなる。

私はそう思っていた。

きっと、ラルトを助け出す。

私とコルトは目が合った。

コルトがキュッと目を瞑った。

きっとなんとかする

彼もまたそう思っている様だった。



そうして夜が明けた…。

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