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魔剣使いのリリィさん  作者: kano
12/14

12

その日の夜。

私たちは休憩に入った洞窟で野営をすることにした。

魔界はどうやらかなり広いらしい。

この世界で生き抜くためにも、無理はしないことで全員が一致していた。

パチパチ

焚き火のはぜる音。

私は1人、火の番をしていた。

キュッキュッ

そして相棒の魔剣の手入れをしている。

布で拭いてあげると魔剣は更に輝きを増していた。

みんなは深く眠っている。

何かあればすぐに声をかけるが、今はゆっくりと疲れを癒して欲しい。

私はじっと魔剣を見つめた。

この剣と魔人ノイジーが融合してから。

私は何度もピンチを救われるたび、ノイジーを想った。

魔剣には意思がある。

フェーンは魔剣の意思がわかるようだった。

ああ、私もわかればいいのに。

そしたらノイジーと話が出来るのに。

私は思わずため息をついていた。

魔剣は何も言わない。

そもそも剣は言葉を発しない。

それはわかっているのだが…

私は座っている横に魔剣を鞘に納めて置いた。

そしてそのまま、ぼんやりと焚き火の炎を見つめていた。

「リリィさん」

急に声をかけられた。

振り向くと、コルトが起き上がってこっちを見ていた。

「そろそろ交代しますよ」

ニコッと笑ってコルトが言う。

「そうね…」

私が若干気のない返事をすると、コルトはゆっくり立ち上がり、わたしの隣にきて座った。

コルトは炎を見つめて黙っていた。

私も同じように炎を見つめる。

「リリィさん、本当にありがとうございます」

ボソリとコルトがつぶやくように言った。

「え?何が…?」

わたしが聞き返すと、コルトはガシガシと頭をかきながら

「皆さん優しすぎますよ…僕を救うばかりか、兄のために魔界まで来て頂き…」

コルトはそう言いながら私を見た。

「あら?そのことなの?」

「はい…」

「大丈夫だよ、私たちがしたいからしてるだけだもの」

私は木の小枝を炎の中に投げ込む。

一瞬火が強く燃え上がり、私とコルトの顔を照らしていた。

「しかし、こんな危険な場所にまで。僕の兄のために…」

「気にしないで、私たち冒険が好きだから」

私がそう言うと、コルトは薄く笑った。

「リリィさんたちは、不思議なパーティですよね。いままで会ったことがありません」

「そう?」

「そうですよ。命の危険を顧みず、人のために何かをする。そんな人たちに僕は初めて出会いました。」

コルトもわたしと同じように木の枝を炎に投げ込んだ。

ゆっくりとコルトは私の方を向いた。

とてもまっすぐにわたしの目を見ている。

コルトは不意に破顔した。

とても優しい笑顔を見せる。

「僕は皆さんと冒険できて、本当に幸せです。ありがとうございます。」

その言葉に私も笑顔になっていた。

不思議な人だ、とコルトがつぶやいた。

「いいよ、お礼なんて」

わたしの言葉にコルトは首を振った。

「必ず、このご恩は返します」

そう言ってある顔はとても真剣な面持ちだった。

「ところで、ノイジーさんという方は誰なんです?」

不意にコルトに聞かれて、私はドキドキした。

びっくりした!

「あのね、この魔剣と融合した人物…というか魔人なんだけど」

私が魔剣を撫でるとコルトは不思議そうな顔をした。

そして不意に何かに思い当たるような表情になる。

「もしかして…特別な人なんですか?」

コルトの言葉に、私は顔が熱くなるのを感じた。

「と、とくべつって!そ、そんな…」

あたふたするわたしを見て、コルトはキョトンとしていたが、しだいに笑顔になった。

「リリィさんは正直な方ですね」

「な、何が!?」

私が狼狽ながら言うと、コルトは吹き出した。

「本当に、皆さんに会えて良かった。こんなに楽しいの僕は初めてです」

コルトはそう言うと、じっと私をみつめた。

「あなたに出会えて、本当に良かった」

コルトは真剣な表情で言った。

私は少しドキドキしながら、コルトに言った。

「私も、あなたみたいな人に出会えて、良かったよ」

私の言葉にコルトはテレたように笑った。

「リリィさん、休んで大丈夫ですよ。あとは僕が見てますから」

「そう?じゃあお願いするね」

そう言うと私は焚き火から離れて毛布にくるまりながら横になる。

「おやすみ、コルト」

「はい、おやすみなさい」

私はコルトと言葉を交わすと、すぐに深い眠りに落ちていった。




「…おはよう!今日も魔界探索日和だぞ!」

急に元気な声に叩き起こされた。

声の主はライオットだ。

とても元気そうな表情だ、ニコニコと私の方を見ている。

ん…もう朝か

私はむくりと身体を起こした。

みんなはすでに起きていて、それぞれ身支度をしている。

「わんっ!わんっ!」

元気に鳴きながら、フェーンが私の腕の中に飛び込んできた。

「おはよ、フェーン」

「わんっ!」

フェーンは嬉しそうに尻尾を振った。

「おねぇちゃんおはよぅ」

ルーンも寝ぼけ眼をこすりながら、私のそばにやってきた。

「おはよ、よく寝れた?」

「うん…!」

わたしの問いかけにルーンは元気に答えた。

「リリィ、お前が最後だぞ」

ひょっこりとライオットが顔を出す。

「あら?みんな早いね」

私が言うと、ルルカがふわぁとあくびしながら

「朝から元気すぎよ、うちの朴念仁は」

そう言ってライオットにもたれかかった。

「朝が強いって、立派なスキルよね。私もそうなりたかったなぁ。ふぁー」

あくびしながらルルカが言う。

私も同意だ。

「とりあえず、ご飯食べて探索再開しよ!」

「そうね」

私たちはみんなで朝食を取ることにした。

昨日の残りのスープにパンを浸して食べる。

和気藹々とした雰囲気だ、私は思わず顔が綻ぶ。

ちぎったパンをフェーンの口に放り込みながら、私はみんなに向き合った。

「ねぇ、今日はノイジーの本体を探しましょう」

「そうだな、それが今の所第一の目的だからな」

わたしの発言にライオットが同意する。

「魔剣はどうだ?何か動きはあるか?」

魔剣の宝石から微かな光が出ている。

この光はノイジーの本体の方向を教えてくれるようだった。

「フェーン、なにかわかる?」

フェーンはぷるぷると尻尾を震わせた。

そして

ぽんっと人間の姿に変わった。

「魔剣はこの光の指す方向にノイジーがいるって教えてるよ」

光の刺す方向は、北の方角だった。

「どうやら、本人が魔剣を呼んでるみたいだよ」

フェーンはそう言うと、また犬の姿に戻った。

フェーンは犬の姿でいるのが好きなようだった。

「よし、腹ごしらえも済んだし、そろそろ出るか」

「そうね」

私たちは野営の片付けを済ますと、早速出発することにした。

北の方角を目指す。

私たちはゆっくりと歩き始めた。

深い森の中の草木を掻き分けて、獣道を発見した。

その道に沿って歩いていく。

ギャーッ、ギャーッ

遠くで、何かの声がした。

ギャーッ

その声はだんだんと近づいてくるようだった。

「みんな!何か来るみたい!」

「よし、広いところに出たぞ!」

私たちは広場のように広い野原に出た。

そして

そんな私たちを待っていたかのように、空から何かが襲いかかってきた!

「ギャーッギャーッ」

それは怪鳥だった。

人間の女性のような上半身に鳥のような身体。

怪鳥ハーピーだ。

「来たぞ!みんな構えろ!」

ライオットは近くにあった岩場に駆け上がった。

そして1番高い所から、ハーピーに目掛けて飛びかかった。

右手に白刃の剣が煌めく。

「ギャーッ!」

ライオットの一撃を右肩に受け、ハーピーが地面に落ちた。

ハーピーは3体。

私は魔剣を構えた。

空から襲われるのはこちらが不利だ。

「みんな!散らばって!ハーピーを分散させる!」

私たちは散り散りに離れた。

ハーピー3体も、それぞれが独立した動きをしている。

ライオットの一撃を受けたハーピーは地面から飛びあがろうともがいている。

そのハーピーをライオットは袈裟斬りにした。

「ギャーッ…」

絶命した瞬間、ハーピーが断末魔の叫びを上げた。

「よし!あと2体!」

私は1体のハーピーと応戦していた。

動きはさほど早くないが、空から襲ってくるのが厄介だった。

私は魔剣を構え、その力を解放した。

「ライト・チェイサー!」

魔剣から光の束が放出された。

それは触手のようにハーピーを絡め取って、動きを封じた。

魔剣には色々な力がある。

これもそのひとつだ。

絡め取られ、ハーピーは地面に落ちた。

私はそのハーピーを一撃で仕留めた。

「ギャーッ!」

断末魔の叫びをまた聞いた。

残りはあと1体!

コルトが魔法で応戦していた。

「シェイド・フック!」

コルトの魔法が放たれた。

黒い影のかぎ針が、ハーピーに襲いかかった。

かぎ針はハーピーを捉え、命を奪った。

「ギャーッ」

こうしてハーピー3体は全て倒れた。

私たちは辺りを見まわした。

もう追加はないようだった。

「終わったね!お疲れ様!」

ミオンがぴょんっと跳ねた。

「楽勝…とは言わないけど、割と手こずらずに勝てたね」

ルルカはそう言いながら、ごそごそとハーピーの遺体を漁っていた。

アイテムをもっていないか、確認している。

ルルカは弓使いでレンジャーだ。

アイテムがあるかどうかを調べたり、宝箱の罠を外したり、パーティの支援系職業なのだ。

「ん?これはなんだろう…」

ルルカが一体のハーピーから何やら球体の様なものを発見した。

青い宝石のようだ。

握り拳大の大きさがある。

「なにこれ?」

「さあ?ちょっと調べてみるね」

ミオンが覗き込むと、ルルカはこつと球をこづいた。

「うーむ、魔法アイテムかな?」

「何か起きたか?」

ライオットに聞かれ、ルルカは首をふる。

「ううん、何も起きない、けどなんかこれ、通信のためのアイテムな感じする」

「わかるのか?」

「なんか、エネルギーを発してる感じするよ」

ライオットの言葉にルルカが答えた。

ルルカは目に見えないものを探知する力がある。

その力で、何度も罠を避けてきた。

レンジャーとしてのスキルとしては天賦の才である。

「ふーん、どうやら魔物同士で通信するためのものみたいだよ」

「えっ、そんなことまでわかるんですか?」

コルトが驚いたように言うと、ルルカは笑った。

「うん、私には魔力察知の力があるからね」

「ルルカちゃん、すごいんだよー」

ミオンがニコニコして言う。

「さっすが私の親友だよね〜」

「それ関係あるの?」

ルルカの言葉にミオンはえへんと咳払いした。

2人は顔を見合わせて笑っていた。

2人は長い間一緒に旅をしてきた仲間同士だった。

私たちのパーティに入るまでは2人で旅をしていて、ひょんなことから私たちと一緒に行動することになったんだが。

私たちに会う前にも何度か別なパーティを組んで冒険していたらしいが、その度に何度もパーティのピンチを救ってきたらしかった。

ルルカの能力もだが、実はミオンには大きな秘密がある。

その秘密を目の当たりにした時、私は大いに驚いた。

その秘密は、のちのち知っていくことになるだろう。

私たちはそのルルカの持っている球を起動出来ないか、試すことにした。

「でもさー魔族とやり取りなんて出来ると思う?」

「そうね、確かにこっちの居場所がバレるとまずいかも」

「どうする?」

「俺もあまり動かさん方がいいと思うぞ」

ライオットの言葉にミオンとルルカがうなづいた。

「そうね、魔族とのコミュニケーションはあとにとっておきましょ!」

私はそう言って球をルルカから受け取った。

そして持っていた布に丁寧に包んだ。

荷物の奥の方にしまう。

「さて、魔剣の光の指す方に行きましょ!」

「そうだな、とりあえずここにいても仕方ないしな」

私たちは再び歩き始めた。

魔剣から出ている光は微かなものだが、しっかりと行くべき方向を指している。

途中、魔物には会わなかった。

そして私たちは深い森を抜けた。

その先にあったのは

巨大な古めかしいお城だった。

私たちはポカーンとした。

お城…

ここにノイジーの本体があるようだった。

光は城の中に向かって光を発していた。

ごくりと私は息を呑む。

これって、大丈夫なのかなぁ

確か本体の方にも私のことは知られているってノイジーが言っていた。

占い師の館で、ミレニアに身体を借りて話した時だ。

私はみんなを見た。

みんなも一様にうなづいた。

行くしかない。

私たちはお城の門を抜け、入り口にたどり着いた。

巨大な扉だった。

コンコン

私は扉をノックした。

いるかな…

私は少しの間誰かが出てくるのを待った。

そして

ギイイ

扉が小さく開いた。

そしてその隙間から何者かが飛び出してきた!

「ようこそ、お客様」

それは小さな魔物だった。

丸っこい身体をしていて、緑色の肌をしている。

タキシードのような制服を着ていて、私たちの前にちょこんと立っていた。

見た感じは不思議な国のアリスのハンプティダンプティに似ているかな?

「あっあのー」

私が何か言おうとすると、その魔物は深々と頭を下げる。

「ようこそおいでくださいました。リリィ様ですね?そのお仲間の方達も」

私たちは顔を見合わせた。

「ノイジー様がお待ちですよ、さぁどうぞ中へ」

魔物がそう言って私たちを恭しく中に通そうとしていた。

私ドキドキしていた。

ノイジーの本体って…

「ワタシはフモンと申します。この城の執事をしております」

魔物、フモンはそう言って私たちにこうべを垂れた。

「さぁどうぞ、リリィさんたちに会えるのを、ノイジー様はそれはそれは楽しみにしておりました」

私たちは城の中に通された。

ゆっくりと進んでいるが、城の中は綺麗に掃除が行き届き、とても清潔な感じがした。

私たちは城の最深部に通された。

ギイ

扉が開く。

そこには玉座があった。

玉座に誰かいる。

私はどきりとした。

あっ

ノイジー?

それは魔剣と融合する前のノイジーの姿そのままの人物だった。

ただ髪型はロングヘアで、腰での長さがある。

ゆったりとしたローブを着ていて、その眼光は鋭い。

わたしはその人物から目が離せなかった。

ノイジーの顔をしていた。

わたしの目から、不意に涙が溢れ出た。

会いたかった…ずっと

私は涙を拭うこともせず、思わずその人物の前に歩み寄っていた。

「あ、あの…」

「よく来てくれたね、リリィさん」

ノイジーの声、ノイジーの喋り方だった。

声色は優しく、鋭かった表情も優しく破顔していた。

私はさらに泣いた。

会いたかった…ずっと

「あの、ノイジー…って呼んでもいい?」

ノイジーはゆっくりとわたしの前にやってきた。

そしてうなづきながら、ぎゅっと私の身体を抱きしめた。

「あぁ、会いたかったよ、俺とは初めて会うね、リリィさん」

抱きしめられて、私はドキドキが止まらない。

その時私の手から魔剣が飛び出した。

そして強く輝き出す。

光の玉が魔剣の中から飛び出し、それは目の前のノイジーの中に吸い込まれていった。

「よし、分身が戻った。リリィさん、今までよく頑張ったな!」

ノイジーはそう言うと、わたしの頭を優しく撫でた。

ふわぁ

私は顔が熱くなるのを感じた。

「ノイジー…わたしのために、今までありがとう…」

「気にしなくていいぞ、俺はリリィさんが大切だから。その大切な人のためなら何でもするさ」

ノイジーはそう言うと、また私を抱きしめた。

「わんっ!」

急にフェーンが私とノイジーの間に割って入った。

「んんー、お熱いのは結構なんだが、俺たちもいるのを忘れないでくれ…」

ライオットが顔を赤らめながらそう言った。

みんなそれぞれ照れたような表情をしている。

は、恥ずかしい!

私がノイジーから離れると、フェーンが腕の中に飛び込んできた。

私はフェーンを抱きしめる。

「ねぇ、ノイジー、色々話したいこともあるけど、とりあえずここに来た目的を果たさせて欲しいな」

わたしの言葉にノイジーはこくりとうなづいた。

「コルトのお兄さん、ラルトが攫われてきたの、どこにいるかわからない?」

わたしの言葉にノイジーは少し無言だったが

「知っている、この城から少し北にある砦に捉えられている。その主がリリィさんたちが来るのを待ち構えているよ」

私はぎゅっとフェーンを抱きしめる手に力を入れた。

やっぱり、戦闘は避けられそうもない。

私が厳しい表情をすると、ふいにノイジーは私の頭を撫でた。

そして優しい声で言う。

「俺も行く、これから先も。魔界から帰る時も一緒に行く。なんせ魔剣と契約したリリィさんは俺の主人でもある。俺もまた魔剣の一部になったしな」

ノイジーの言葉に、私は嬉しくなった。

これから、ずっと一緒にいられる。

そのことがたまらなく嬉しかった。

こうして私たちは再会を果たした。

ノイジーは変わらず優しくて、私はとてもドキドキしてしまった。

そしてこのお城で一晩すごし、明日にはラルトを救出に向かう。

夜も更けて、私たちはそれぞれの夜を過ごしていた。


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