表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/109

第47話 青い鳥

 

 “白尾”と“白雪姫(スノウホワイト)

 陽の光も刺さない薄暗い洞窟にて、2人の色白の少女が対峙している。そこに、三上四季はいた。


「シロ…」


 シロの後ろから立ち上っている尻尾には、いつもの力強さを感じない。思うように動かせていないのか…だが、それでも。


「シキには、近づかせない…!!」


 尾が軽く触れるだけで岩は豆腐のように砕け、豆腐のように穿たれる。その様子に“白雪姫(スノウホワイト)”の顔にも緊張が見えていた。それが触れれば人体など容易に、それは恐らく、並の象物(ヴィジョン)による強化していたとしても…。


「“鏡よ鏡(リバーシブル)”」


 告げると同時、“白雪姫(スノウホワイト)”のすぐそばに巨大な鏡が現れる。鏡の向こうは不気味に歪むだけで、そこには何も映っていない。


「この場で1番強い子はだあれ?」


 鏡は白く歪み、やがて、そこに現れたのは真顔で立つシロ。鏡の中のシロは、シロを見つめ不気味に笑んだ。


「っ!!死ね!!」


 シロは全身の毛を逆立て、鏡に向かって尻尾を放つ。白き龍にも似た尾は超速度で走り、鏡を砕き貫くかと思えたが──────


「そんな怖い顔しないで」


 白龍は、鏡から同じように伸びた白龍とかち合い、止まってしまった。


「狐さん。もう少しリラックスリラックス」

「そうだよシロ。1回、深呼吸して」

「深呼吸…深呼、きゅー……」


 シロの身体が揺らぎ、斜めに倒れかかるのを、三上は受け止めた。見ると、シロの眼は今にも閉じかけようとしている。


「シロ!ごめんやっぱ深呼吸なし!起きて!」

「ん…私…」

「ふふふ…いいのよそのまま寝ても。きっと、すぐに王子様がすぐ助けてくれるから」

「…!そうだ、オレが戦って…」

「それは、ダメって言ってるでしょ」


 前へと出ようとする三上を、やはりシロは制止する。眠気を帯びた眼でも、その意思だけはいつまでも揺るがなかった。シロは2本の尾を振るい、立たせ、鏡の自分と真正面から向き合う。


「シキは王子様じゃない。私の、契約者で、親友なのっ!!」

「あら残念。王子様のいない物語なんて、悲しいだけだわ」


 迫る尾に対して“白雪姫(スノウホワイト)”はもうひとつ鏡を出現させる。シロの尾2本に対して、迎え撃つのは計4本の尾。


「っ、きゃあぁ!!」

「…!シロっ!!」


 悲鳴とともに、衝撃で飛んでいく小さな身体。

 三上は咄嗟に飛び込み、シロをどうにか受け止めた。


「シロ、もういいよ!1回逃げよう!これじゃあシロが…」

「う……ダメ、皆、が…」

「うふふ。そう、貴方、その子の王子様じゃなかったのね」


 “白雪姫(スノウホワイト)”は口に手を当て薄く微笑むと、バスケットから再びリンゴを取り出した。


「2人とも、一度眠ってしまいましょうか」

「…!」

「“一口、齧って(プリンセスキラー)”」


 放られた毒リンゴは宙を舞い、三上とシロに向けて自由落下を始める。シロは虚ろな瞳でその様子を見つめ、三上はそんなシロを庇う。

 毒リンゴが迫り、爆発しようとしたその時──────


「──────“白鵠(びゃっこう)”、風」


 どこからともなく吹き荒れた一陣の風が、毒リンゴを吹き飛ばした。風が吹きすさぶ中、三上はその風と共に現れる小さな青い影を見た。


「おーおー、四季!律儀にわしの言うこと守っとるのー」

「ちゃ、ちゃほ先輩!」

「だ、だれ…」


 喪服の上から青いスカジャンを羽織った、飛鳥茶誉がそこには立っていた。ポッケから数珠がはみ出している。


「お前は…!」

「今日から飛鳥家当主(仮)、飛鳥茶誉ここに推参っ!!よくもまあ忙しいタイミングでやってくれおったの三下契約者が」


 強い物言いの割には、気の抜けた声で茶誉は言う。適当な調子の彼女を前にしながら、“白雪姫(スノウホワイト)”はシロと対峙した時よりも切迫した表情となっていた。


「茶誉、“飛鳥家の青い鳥”…!」

「うわ、小っ恥ずかしいのーその呼び名。結構浸透しとるようじゃ」

「っ、“鏡よ鏡(リバーシブル)”!この場で1番有名なのはだあれ!!」


 現れた4つもの鏡に、茶誉が映し出された。


「あれ、また…!」

「楽勝じゃ」

「ちゃほ先輩!気をつけてください!あの鏡は!」

「分かっとる。白雪姫(スノウホワイト)で鏡、シロがやられとんじゃから、ある程度どういうことしてくるか予想はつく」


 茶誉は落ちていた小石を数個拾うと、得意げに笑って見せた。


「その上で、楽勝じゃ。わしは負けん」


 小石片手に、茶誉は“白雪姫(スノウホワイト)”へと近づいていく。


「お前、わしのこと知っとるんじゃろ?」

「聞いたことがあるわ…“白鵠”の幸運で、名家三柱の中でも最強と名高い契約者…!」

「知っとるんなら話は早いの」

「…!どんな強力な攻撃だろうと私の鏡で──────」


 身構える“白雪姫(スノウホワイト)”に対して、茶誉は振りかぶって、小さな小石を投げる


「ほいっ」


 鏡からも、同じように小さな小石が茶誉に向かって投げられた。


 コツン コツン コツン


 予想していた通り、鏡から投げられた小石は茶誉に弱々しくぶつかるのみ。その光景に“白雪姫(スノウホワイト)”は怪訝な顔をした。


「な、なに、それ。そんなので私が、倒せるとでも?!」

「まぁの」

「ふざけるないで!来ないならこっちから──────」


 コツン コツン コツン


 “白雪姫(スノウホワイト)”がバスケットに手を入れたその時である。

 もう小石は投げ終わったはずなのに、まだ、なにかがぶつかる音がしていた。

 そこで“白雪姫(スノウホワイト)”の頭には、茶誉の放った小石の行方について、が過ぎっていた──────あの小石は、どこへ?


 コツン コン コン ゴン ゴロン ゴゴゴゴゴゴ


 音は次第にスケールアップしていく。

 地響きにも似た音になった頃、“白雪姫(スノウホワイト)”はその異変に気づいた。


「頭上注意じゃ、お姫様」

「なっ──────!!」


 瞬間、“白雪姫(スノウホワイト)”の頭上から、崩れた岩天井が降り注いでいた。咄嗟に彼女はその場から離れようとするが。


「ぅっ、がはああぁぁぁぁ!!」


 あっという間に岩の下敷きとなってしまった。

 上半身だけ外に出す形で“白雪姫(スノウホワイト)”の体は岩の山からはみ出していた。


「動けんようにしただけじゃ。死なんから安心せぇ」

「な、一体、なにが…!」

「“運がいい”だけじゃ。わしの投げた小石がドミノ倒しみたいにあちこちを跳ね回って、こうなった」

「そんな、たかが幸運でそんなことが…!」

「それがわしの“白鵠”じゃからの。大体のことは幸運で片付く」

「…!!そんな、こと!あっていいわけないでしょ!!」


 “白雪姫(スノウホワイト)”はバスケットからめいっぱい毒リンゴを取り出し、上半身だけでそれを宙へと放り投げてみせる。


「全員!ここでおねんねよ!!皆で王子様を待つの!!」

「はぁ……なーにが王子様じゃ」


 降り注ぐ毒リンゴの中、茶誉は焦るまでもなくポケットに手を突っ込んで、面倒くさそうに呟いた。


「“わしの幸運で、全部不発に終わる”」

「っ!“一口、齧って(プリンセスキラー)”!!」


 “白雪姫(スノウホワイト)”が叫ぶと同時、膨大な代力を含んだ毒リンゴ達は光り始め──────何も起こることなく、地面に落ちた。


「…!」

「今、わしの一言で少しでも“そうなるかも”と思ったじゃろ」

「なっ、な……!!」

「そうなったら終わりじゃ。わしのことを下手に知っとるとそうなる。解釈とはそういうものじゃから、のっ!」


 茶誉が“白雪姫(スノウホワイト)”の顎を小突くと、岩の下敷きになりながらも、彼女はぐったりと気を失った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ