第45話 カザネン☆フォーエバー
コウモリの暗幕が晴れると、忍装束を着た飾音が姿を現した。その姿を見た途端、男の目の色はガラッと変わる。
「魔法くノ一カザネン!ただいま見参☆」
「…!うおおおおお!!後期衣装キターー!!!」
飾音は舌打ちしたくなるのを必死に抑えながら、その手にクナイを出現させる。
“マジカル☆クナイ”
代力によって生成される金属製のクナイ。
代力がある限り生成が可能、内包される代力の大きさは飾音本人の意志によって調整可能である。ほぼ無尽蔵かつ“共振爆”による爆発の威力も調整出来るその解釈は、飾音が握ればまさに鬼に金棒。
──────まずは試す。プランBの方からだ。そう考え、飾音は己の背から生えるコウモリの翼で飛翔する。
「あれは…!82話の劇中で登場した、コウモリ使い魔Bバットくんの力を借りた時の翼通称“カザネンウィング”!!」
周囲を旋回し始める飾音になんの脅威も感じていないのか、それとも飾音の姿に夢中になっているのか、男は1歩も動こうとしない。
飾音は男を中心に円を描きながら、その手に持ったクナイを放つ。
「マジカルクナイをくらいなさいっ!!☆」
男の周囲、四方八方からクナイは放たれ、その全弾が命中。クナイはしっかり男に刺さっている。
「──────“共振爆”!!」
複数回の爆発が男を襲った……が、やはり当然のように男は無傷。依然として飛んでいる飾音を興奮気味に見ている。
「カザ、カザネンっ!ウチに入ったら、その姿、毎日、僕に見せてねぇっ!!」
「っ、はーい☆」
──────方向は、関係ない。場所によって防御力に差があるわけでもない。クナイを放ちながら、思案し続ける。あらゆる方向、威力によってその実態の解明を試みるが、打てど響かずといった様子。爆発の中、男は爛々とした目でこちらを見続けている。
「っ、…!!」
わざと爆風を広げ、男の視界を塞いだ。
全方位の防御が可能と言うなら──────
「マジカル☆ジャイアント手裏剣」
本命のプランA、一点集中だ。
鋼鉄の風車をその手に生成する。その武器は飾音が一度に込められる限りの代力を込めた、渾身の一撃を生む。それを2つ両手に持った。
「一念、通天っ!!☆☆」
「あれはっ!?42話劇中で…!」
言葉を並べ立てる男など無視するかのように、一投目の鋼鉄は男の皮膚に突き立てられる。
「──────“共振爆”」
告げる。
クナイの爆発など比にならないくらいに巨大な衝撃が男を襲う──────!!
「なっ…!」
「ようやくか…!」
爆発の中、無傷で出てきたと思われた男。その周囲を覆っていた“何か”が砕ける音がした。男の表情に、陰りが生まれる。そして、その隙を予想していた飾音は、片手に握っていた追の一手を投じる。
木の鎧の気配は消え失せた。あとは──────
「“共振爆”っ!!」
男の目の前まで迫る巨大な手裏剣。
だが、それが男へと触れる直前、焦っていたその表情に、微かな余裕が生まれていた。
「“レンガの家”」
ド ゴ ォ ン !!
2度目、最大規模の爆発。
上がった煙の帳の中で、五体満足の男のシルエットが不気味に揺らいでいた。無事、それも無傷で…その様子に飾音は確信した。
「木、レンガ、狼の息吹…“三匹の子豚”ってわけか…!!」
その男の力の正体。
木で防げないとなれば、レンガで。
その童話をなぞった通りの展開。
恐らくは“一度受けた攻撃を記憶し、それを防ぎ切る耐久力を得る力”
木で受けきれなかった攻撃は、レンガによって確実に受け切れる。
レンガを超える力で押せばいいワケではあるが…。
「もう、打つ手がねぇか…!」
「カザネン?攻撃は終わりでございましょうか?なら」
飾音の攻撃が止んだことを悟り、“三匹の子豚”は前へと1歩出た。鉄壁、飾音は彼にもう傷1つ付けることはできない。もう倒すことは出来ない。そんな相手の──────
「……はれ?」
足元に“まきびし”
「“共振爆”」
まきびしは振動を始め、ものの数秒でその身を弾丸とし、標的目掛けて飛び込む。足元、不意の方向からの攻撃に男は汗を滲ませた。
「──────っ、ぅぐあぁ?!!」
弾丸は男の身体のあちこちに命中し、その身に穴を空ける。衣服に血をにじませながら、男は怨恨の眼で飾音を睨んだ。
「プランB。まだ足元は試してなかったんでな」
「カザ、ネ……お前、調子に、乗りやがって!!」
「家って解釈なら、まさかとは思ったんだが。結構単純な弱点──────」
飾音が演技を止め、肩をすくめて講釈を垂れていたその時、男は走り出していた。防御をかなぐり捨て、解釈する思考すら捨て、拳を握り込んでいた。
迫る巨体に、焦りながらもクナイを生成しようとした。
「マジカルクナ……!いぃ?!」
消える、衣装と共にクナイは代力の塵と化した。
それは男が飾音を“憧れのカザネン”としてではなく、単純な“脅威となる敵”として認識したから。演技を止めたカザネンの解釈は、その場においてのみ、揺らいでしまっていた。
「死ね、クソガキぃぃぃぃ!!」
「あ、ヤバ──────」
体重量と共に振るわれた拳骨は、飾音の小さな頭に遠慮なく打ちつけられた。




