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第39話 進軍する童子

 

 血まみれで店から出てきた星衛桐緒は、三上を見つけると、顰めていた面から一転、目を丸くしてこちらに近づいて来る。


「おぅー、四季くんじゃん。何してんのこんなとこで」


 ダカダカと、すごいスピードで近づいてくる桐緒に、シロは驚き、三上の後ろに隠れる。


「盗みに加担しそうになってた」

「あー、どうりでそんな物騒なもん持ってんだね」


 三上の持っている鉄パイプを指さして、笑顔で言った。


「流されやすいなー四季くんは。そういうとこアイツに似てるわー」

「アイツって?」

「うん」

「えぇ……?」


 桐緒は急に真顔になった。会話になっていない。

 困惑する三上などよそに、桐緒はシロに近づこうとするが、シロは三上を盾にして桐緒から逃げ回ろうとしている。


「シロちゃん悪ぃ、前のは人違いだったわ。許してくれ。もう怖いことしねぇから」

「……ヤダ」

「そういえば桐緒くん、シロはシロじゃないって言ってたけど、あれはなんで……」

「あれな、尻尾の動きのクセで分かった。翔真の時とは全然違うんだよ」


 桐緒はよっこいせ、と道路に直に腰を下ろすと、感慨深そうに目を細め、遠くを眺めた。


「翔真に喧嘩ふっかけまくってた時期があってね〜。懐かしいわ〜」

「翔真とは仲悪かったの?」

「どうだろうな。俺はアイツのことライバルみたいなもんだと思ってたけど、アイツはどう思ってたか……」

「ライバル……翔真は強かった?」

「そりゃあ強いなんてもんじゃねぇよ。アイツ外から来たトーシロのクセにアホみたいにセンス良くてよ。天才っているんだなって……いや、俺も荒んだね流石にあの時期は」


 とは言いながらも、桐緒は嬉しそうに語る。

 彼も翔真を悪くは思っていない。むしろ、翔真とは親しい仲だったのだと、感じ取れる。

 ふと、三上は人気のない街を見て思い出す。


「オマケに“白尾”とかいうチート象物を……」

「あれ?桐緒くん、お葬式は?」


 いざ意識して見てみると、桐緒は喪服を着ていないどころか、その瞳には憂いが帯びているどころかウキウキしてるように見えた。


「ああ、行ってないね。めんどいし」

「そういう、ものなの」

「実際、悲しくも何ともないね。“七歩蛇”を継げとかなんとか、ずっと言ってくる親だったし……アイツがいて得することって言えば、俺が当主やらなくていいってだけ」


 本当に悲しみのひとつも見えてこない。

 死んでせいせいしているみたいだった。

 だが、当主だった親が亡くなったということは。


「もしかして、桐緒くんが、その当主になるの?」

「──────あー嫌なこと思い出しちまった。四季くん止めてくれよー」

「嫌なことあったの?」

「そうなんだよ。どいつもこいつも前は俺のこと腫れ物扱いだったのに、急に媚び媚びしてきやがってな〜」


 落ちていた小石を無造作に投げる。

 三上からすれば、珍しく桐緒がイラついている。

 死んだ三柱は確か、星衛の他は空木と飛鳥。

 三上の知り合いでその苗字を持つ者と言えば、恋花とちゃほ先輩だ。あの二人も、当主になるということだろうか。


「バカばっかだよな。たかが葬式で、“箱庭”をもぬけの殻にしちまってよ。主な目的と言やぁ、媚び売ることだけ」

「まぁ、実際強盗紛いの人達は出てきちゃったワケだしね」


 三上の見る先には、倒れて呻いているガラの悪い人達。気絶しているみたいで、死んでいるのではない。


「……三上くんは変わんないでくれよ。せっかく外から来た人なんだからよ」


 桐緒は歯を見せて笑った。

 彼にとって、身分を気にせずに接してくれる同年代の友人、と言えばオレや翔真のように外部から来た人間だけなのかもしれない。

 彼のためにも、できるだけ公平に接したい。そう三上は思った。


 カ……カラ……カラカラ……


 木の乾いた、軽い音が聞こえる。

 奏でられる音色は複数。聞こえている方向は、先程桐緒が打ち倒してきた人の山からである。


「あ……?」


 倒れていた不良集団がすっくと起き上がってきている。そして、リベンジするのか起き上がった影は千鳥足でこちらに向かってきている。


「なんだ?あんだけボコったのに、久しぶり根性のある奴らだな」


 桐緒は反撃する気満々な様子で、指の関節を鳴らしている。

 だが、不自然なことに、起き上がってくる集団の誰もが俯いたまま、こちらに歩いてきている。そして、歩く度に木製の幼児玩具のような音を鳴らしている。

 シロを含めたその場の3人は目を凝らし、その様子を見つめた。


「なんか、人形……?」

「何あれ」

「おいおい、ありゃあ──────」


 ジリ、と桐緒は後退る。


「くるみ割り人形か……?」

「え、何?くるみ割り人形?」

「ってぇことは、ダメだこりゃ……逃げるぞ!四季くん!シロちゃん!」


 突如、踵を返して桐緒は走り出す。

 三上もその後に続くように、シロの手を引いて走り出した。


 カラ コロ カラ コロ


 後ろから軽快な木の音が聞こえてくる。

 迫り来る音は、見なくてもわかるくらいに後ろの状況を表している。


「くるみ割り人形だと、何がヤバいの!?」

「くるみ割り人形ってぇと、童話的なやつだろ?!」

「童話的なやつだと、何がヤバいの!!」

「童話の解釈できるやつはかなり限られてる!十中八九アレだよアレ!」


 アレ、などと言われても三上には何もピンとこない。桐緒も思い出せていないのか、数秒間唸り続けた後、ようやくハッキリと名前を告げる。


「“童の足跡”!“四足獣”なみにヤバい犯罪組織!このウチの馬鹿みたいな暇を攻めて来やがった!!」


 カラコロカラコロ。

 切迫した状況とは不釣り合いな軽快な音が、三上達の後ろで鳴り続けている。

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