表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/109

第102話 三人三脚

 

 いつも通りの街並みにいつも通りの人混み。

 だが、飾音、恋花、シロの3人は焦りを感じながら街の中を走っていた。


「今日の“門”は、どこ?」

「“り煙”から事前に情報は聞いてある。ええとだな…」


 “門”

 箱庭と外の世界を繋ぐ“境界点”へ行くために通るべき場所。“憑景”では秘匿性とセキュリティを考慮しており、“門”が生成される場所を毎日変えている。


「…ダメだ。向かおうとすると、ほとんどが来た道を戻ることになっちまう」

「街の中にも一か所くらいはない?人混みに紛れていけば、見つかりにくいとは思うんだけど」

「あった。都合のいい位置だ。確かここは──────」


 “り煙”から貰ったメモ書きに記された座標から場所を求める。端末によって弾き出された場所は、その場にいた3人にとって馴染み深い場所であった。


「──────“数珠流 A地区道場”」

「…行きましょう」


 方向転換し、目的地である道場の方向へと3人は足を早めた。



 そうして、追っ手に誰1人会うことも無いまま道場へとたどり着く。一度半壊してから、完全に立て直された建物は傷一つない。

 恋花は道場を見て、目を細める。


「…随分と、あの頃とは状況が変わってしまったわね」

「レンカ、ぼーっとしてる暇ないよ」

「あっ……うん。ごめんね」

「んぁ?おい人っ子1人いねぇぞ?」


 建物内はしんと静まり返っていた。

 人の気配は全くなく、ただ3人の声だけが響いていた。道場が休みだったとしても、その場には職員の一人くらいはいるはずであった。


「流石に“門”は全部おさえられてるのかしら」

「だろうな。まあ追っ手のほとんどは“り煙”がやってるだろうから、残りの雑魚くらいこのメンツならどうにかなるだろ」

「──────それは、どうだろうね」


 ゾッと、3人を凍りつくような感覚が襲った。

 見ると、声とともに遠くから歩み寄ろうとする人影が一つ。その男、追っ手ではない。

 だがしかし、味方でもないことは確かであった。


「やぁ。やっぱりここに来たね」

「長…」


 “憑景”全体のまとめ役。

 その存在の登場に、恋花の顔が硬くこわばる。

 目の前にいる男が敵の大元だとは知っていた。だが、こうして敵として現れることに恋花はやはり困惑していた。


「…あなたも“九尾”と契約しているというのは、本当ですか」

「ああ本当さ。そこの巫女様なら知っているだろう?僕が何者なのか」

「私が知ってんのは“霊樹”の中の情報だけだ」


 余裕そうに笑う男を飾音は睨む。


「和氣龍馬。本名は風間和葉。“対妖”が無くなるその直前まで風間家の当主だった男。“風間式”の父親なんだろ?」

「そんなことまでしか分からないのか。僕はどうやら、霊樹にそこまで興味を持たれてなかったみたいだね」

「尻尾集めて“九尾”を復活させて、今更何がしてぇんだ?」

「“九尾”は元々風間家の象物(ヴィジョン)だよ。僕はただ、元あったものを元に戻したいだけさ」

「あっそ!でもオッサン一人いたところで、シロの相手にはなんねぇよ!」

「…貴方は初めて会った時から嫌いよ」


 シロの背後から真っ白な尾が伸び出る。


「はは、流石。君は“こいろ”そっくりだね。君が元の“こいろ”なのかな?」

「は…?」

「悪いけど、君とまともに戦う気はない」


 そうつぶやきながら、懐から妖しく光る小さな石を取り出した。そして、その瞬間石はキラリと光を放った。


「──────っ!?」


 それと同時にシロがその場で跪いた。


「…!どうしたシロ!」

「わかん、ない…なんか、力が」

「これは九尾の依代だった物さ。“九尾”という象物(ヴィジョン)はもう存在しないわけだから、無用の長物だと思ったが…そうでもないらしい」


 シロから伸びていた尾はいつの間にか消え失せ、シロ自身は石を前に苦しそうに呻くだけとなった。

 優勢だったはずの状況の雲行きが怪しくなり始める。


「キイロを連れてこなくて正解だったね。さて、“巫女様”。守り人はどうしたのかな?」

「…!うるせぇ」

「その様子じゃ、今は向こうにいる煙いのが一匹だけみたいだね。安心したよ」


 にこやかな表情は崩さず、手の上で“依代”を転がしている。


「──────!!2人とも伏せて!!」


 パ リ ン !!


 恋花が察知したコンマ数秒後、廊下のガラスが勢いよく砕ける。また、人影が一つその場に現れた瞬間であった。


「Foo!!俺様が一番乗りィ!!」


 砕けるガラスと共に転がり現れたのは、ドレッドヘアーの長身男。立ち上がり、派手な柄物のシャツがぬうっ、と伸びる様相はさながら掛け軸が壁に広げられるかのようだった。


 その姿に、恋花は顔をしかめる。


佳主(かず)兄…!」

「オーライオーライ!恋花がいるってことはここが当たりって事だな」

「空木家の長男…君が当主の子か」

「イェア!長、この小娘共でいいんですかい?」

「あぁそうだ。君なら出来るだろう?」

「もっちろーん!まかせてくだせぇ」


 拳を手のひらに何度も打ち付け、現れた男は白い歯を見せて笑う。


 空木(うつぎ)佳主真(かずま)

 現空木家の当主であり、恋花の兄。

 契約している象物(ヴィジョン)は“八犬”


 見上げるほどの長身は恋花の前へと立ち塞がる。

 その場いる全員が、この戦いにおける力の差を理解していた。


「よぉ恋花。最近調子がいいと思ったら、“時枝”と繋がってたとはなぁ」

「…佳主兄こそ、目上の人間にヘコヘコするような人間だったかしら」

「当主だからよ。色々あんのよ」


「「──────“八犬”」」


 互いの足元に契約した象物(ヴィジョン)を呼び出す。

 恋花が一匹の“八犬”なのに対し、佳主真の足元には三匹。

 宿る代力の大きさは、三倍であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ