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なんちゃって数学

なんちゃって数学論(真面目バージョン)

作者: 尾手メシ

 数学の話。

 有名な三角関数の話ではない。多くの方が高校で習ったであろう、微分と積分の話だ。


 大概の方が思ったかもしれない。

「これ、何の役に立つの?」

黒板に書かれたよく分からない数式をノートに書き写し、よく分からない変形パターンを覚えさせられ、よく分からないまま問題を解いていく。よく分からないまま始まった話は、よく分からないまま進行し、よく分からなまま終わっていく。後に残るのは

「なんか数学って意味不明」

という苦手意識だけだ。

 そんな微分と積分の話。


 微積分とは何なのか。

 それは数学が生み出した万能の分析ツール。星も見えない暗い夜の海を果敢に航海していくための偉大な羅針盤だ。


 微分と積分はセットで教えられる。学校のカリキュラムがそうなっているから。これにはちゃんと意味がある。二つ揃えることでその力を発揮するのである。

 微分というのは顕微鏡だ。対象を細かく観察し、僅かな変化も見逃さない。

 対して、積分とは衛星カメラだ。空の上から全てを観察し、対象の全体像を教えてくれる。


 あなたは今車を運転しいる。休日を利用した温泉旅行だ。高速道路の料金所を抜けて本線が見えてきた。加速レーンに進入して速度を上げようとしたあなたは考える。

「ちゃんと加速レーン内で十分に加速できるだろうか?」

 今、現在の車の速度をV、加速する力、これを加速度というが、加速度をa、加速する時間をtとすると、車の速度sは


 s=V+(a*t)


で表される。距離とは、速度の時間変化に対する全体的なふるまい、要するに、時間毎に変化する速度を全て足し合わせたものである。よって、距離kを知りたければ速度を時間に対して積分してやればよい。つまりこうなる。


 k=V*t+(1/2*a*t^2)


これであなたは距離を知ることができた。安心して加速していき、無事に本線に合流を果たす。

 先の式を見て疑問に思う方がいるかもしれない。

「私が習った式と違うぞ」

あなたの行動の先を見ていこう。本線に合流したあなたはほっと一息つく。あなたの頭の中は、もう既に温泉まんじゅうでいっぱいだ。アクセルから力を抜かれたあなたの車は加速をやめ、やがて一定の速度で走りだす。加速度aは


 a=0


なので、距離kは


 k=V*t+(1/2*0*t^2)

  =V*t


小学校で習う距離と速度と時間の関係式である。


 さて、これは前日の話。あなたはウキウキしながら荷物を鞄に詰めていく。おやつも準備万端、忘れ物はない。あなたは明日の行程を思い浮かべてみた。旅館までの距離は分かっている。じゃあ、速度はどうか。あなたの手元にあるのは距離の関係式


 k=V*t+(1/2*a*t^2)


だ。速度とは、距離が時間に対して変化する特性、つまり距離が変化する一瞬を切り取ったものである。よって、速度sは距離を時間で微分したものとなる。


 s=V+(1/2*a*2*t)

  =V+(a*t)


これで旅行計画は完璧だ。あなたは安心して眠りについた。


 微分と積分は切っても切れない無二の相棒だ。微分で細部を観察し、積分で全体を眺める。そうして対象の本質に迫っていくのだ。


 最後に

「なんか難しかったな」

「数式なんか出されても」

という方の為にとっておきを。

 紙を一枚用意してほしい。メモ紙で構わない。その紙の左から右へ、真横に一本の直線を引く。この直線は


 y(1)=a


で表される。これを積分すると


 y(2)=a*x


あなたの手元にある紙の、直線で区切られた下半分の面積だ。更に積分する。


 y(3)=a*x*h


これは先程の下半分を一面とする箱の体積である。

 紙に一本直線を引くだけで、あなたは面積と体積を手に入れた。

 面白いのはここから。最初は直線、つまり一次元だった。それを積分することで面積、二次元の世界になった。次は体積、三次元だ。では、更に積分するとどうなるだろう。


 y(4)=a*x*h*t


おめでとう。あなたは四次元を観測することができるようになった。ドラえもんの四次元ポケットの広さもこれで測ることができる。しかしこれで満足してはいけない。もっともっと積分していってみよう。


 y(100)=a*x*h*t*……*z


あなたは今、誰も見たことがない場所、百次元の世界に立っている。そこからは何が見えるだろうか。

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