表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/276

第63話 山頂の一騎打ち(前編)


「どこにも、逃げ場は無いな、『ゴブリリ』よ」

 ヘルシラント山頂の草原。

 乗騎の上で、聖騎士サイモンが言った。

「覚悟は、いいか?」



「……このまま、帰ってくれるわけにはいきませんか?」

 わたしは、山を駆け上がったために弾んだ息を整えながら、サイモンに言った。

「貴方が討伐を依頼されたのは、マイクチェク族……北のゴブリンの筈。わたしたちは対象外の筈です」


「そうはいかないな」

 立ち止まったまま、聖騎士サイモンが言った。

「ゴブリンが団結して、勢力を伸ばす事は阻止すべきだし、それになにより……」

 そこで一旦言葉を止めて……そして、にやりと笑って続けた。


「お前の様な、珍しいゴブリンを。そして、見た目は普通の女の子であるお前を殺して、首を切る事ができるのだ。こんな愉しい事を、止められる訳がないだろう?」

 そう言って、わたしを眺め回す様に見た。

 サイモンの表情は、兜を被っているので見えない。

 しかし……隙間から見える目は笑っていて、狂気を秘めた光を称えていた。そして、兜に隠れて見えなくとも、口元は歪んだ笑いを浮かべているのが判った。


「それに、ここで死ぬのは、別に寂しい事ではないぞ?」

 サイモンは続けた。

「……ひとりでは、ないのだからな」

「! どういう……ことですか」


「お前の首を斬った後は、そのままこの山を下りて、お前の仲間のゴブリンたちも全て斬って、後を追わせてやる」

「……………!」

「お仲間たちに、切り落としたお前の首を見せつけてから……一人一人斬っていってやろう。お前の首を見せた時。そして殺される瞬間。どんな表情を見せてくれるのか……本当に楽しみだ」

 心から嬉しそうな、愉しそうな口調で話す、聖騎士サイモン。



(……歪んでいる)

 わたしは思った。

 聖騎士、という肩書きなのに。

 強すぎるためか。それとも、これまで多くの敵を倒し、殺してきた結果なのか。

 いつしか、敵を斬る。殺す事に快感を、愉しみを覚える様になってしまっているのだ。

 敵を斬る瞬間の、相手の苦悶や恐怖の表情を見る事に、快感を覚える様になっているのだ。


 わたしもこれまで、イプ=スキ族との戦いなどで、多くの敵を倒してきた。

 だけど、戦ってきた、そして命を奪うことになってしまった相手の顔が、そして表情が、ずっと頭の端に残って消えてくれない。


 こうした光景は……わたし自身にとっては、命を奪うことになってしまった心残りとして、そして心の傷として刻まれているけれど。

 だけど……そんな、命を奪った相手の姿が、そして命を奪う光景が、心地の良い、愉しい記憶として刻まれる者が、ここにいるのだ。


 歪んでいる。

 改めて思う。

 だが、そんな歪んだ愉しみが、そして魂まで歪んだ男の悪意が。今はわたしに向けられているのだ。

 ここまでゴブリン達が殺されなかったのも、「わたしの首を見せる」楽しみのために、わたし自身が出てくるまで後回しにしていたのだろう。

 わたしが殺されてしまえば、その悪意は、次には、仲間のゴブリンたちに向けられる。

 リーナや爺、コアクトたち、洞窟に住む、部族のみんな。そして、今回わたしと共に、聖騎士サイモンを迎撃してくれた、イプ=スキ族のゴブリンたちや、マイクチェク族のウス=コタ。

 様々な出来事を通じて、わたしの元に集まってくれた、ゴブリンたち。

 これまで「火の国」の中で争っていた三部族が、共に戦える状況になりつつある。

 今回の事件が無事に終われば、「火の国」の三部族が力を合わせられる、新しい時代が来るかもしれない。


 だが、それも……ここでわたしたち全員がサイモンに殺されてしまえば、水泡に帰してしまう。

 おぼろげに見えた気がした未来も、閉ざされてしまう。


 何とかして……何としてでも、この男は。聖騎士と名乗る、サイモンという歪んだ悪意は。ここで止めなければならなかった。



 ……………



「さて、ゴブリリよ。斬られる瞬間に、どんな表情を見せてくれるのか……。愉しませてくれよ」

 サイモンはそう言って、少しだけ馬を後ろに下がらせた。

 こちらに全力疾走させるために、助走の距離を取っているのだ。


(何とか……何とかしないと……!)

 わたしは、どの様にして聖騎士サイモンに対抗すべきか……山を登りつつ、ここまで集めてきた情報を元に、必死に頭を巡らせた。


「……行くぞ!」

 聖騎士サイモンが馬に拍車を入れる。

 数歩で全力疾走に入った馬が、ものすごいスピードでこちらに向かって来る。馬上では、聖騎士サイモンが剣を掲げていた。


「…………っ!」

 わたしは両手をサイモンに向けて、「力」を込めた。


 その瞬間。


 ぱきん、と音が響いた。

 読んでいただいて、ありがとうございました!

・面白そう!

・次回も楽しみ!

・更新、頑張れ!

 と思ってくださった方は、どうか画面下の『☆☆☆☆☆』からポイントを入れていただけると嬉しいです!(ブックマークも大歓迎です!)


 今後も、作品を書き続ける強力な燃料となります!

 なにとぞ、ご協力のほど、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ