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第24話 「族長の間」での相談

 イプ=スキ族の使者が出ていった後、わたしたちは深刻な表情で顔を見合わせた。

「イプ=スキ族が攻めてくる事になりますな……」

「でも、全面降伏を求めてきたのだから、拒否するしかありませんでしたわ」

 爺の言葉に対して、リーナが言った。


 そうだ。

 イプ=スキ族に服属して、服属した挙げ句、魔光石を全部献上なんてありえない。要するに、全てを差し出せ、との要求だし、そんなものは飲めない。

 要求に応じて、本当に降伏する事まで視野に入っていたのかはわからないけれど、戦争を吹っかける意図で高圧的な態度に出てきた事は明白だ。

 何故か攻撃日まで指定して去って行ったのは、この事を伝えるのも、元々の予定に入っていたのだろう。つまり、元々交渉決裂から派兵までが、予定に入っていた事になる。イプ=スキ族の方は、戦争の準備がかなり整っていると考えるべきだ。

 ……戦いを避ける方法は、なさそうだ。


 ……だが、問題はこの後どうするか、どうやって戦うかだ。ヘタな戦い方をすれば……いや、よほど上手く戦わない限り、ヘルシラント族のみんなに大きな被害が出る。

 そして、もし負ければ大きな犠牲を出した挙げ句、結局、全てを奪われる事に変わりはない。

 困った事になった。


 幸いにも、ご丁寧に攻撃を仕掛けてくる日を予告してくれている。次の満月の日までしばらくある。

 何故、攻撃日をわたしたちに事前に伝えたのか、彼らの意図はわからない。

 彼らイプ=スキ族側にとっては、「負けるはずがない」という余裕からかもしれないけれど、こちらからすれば、準備を整える時間があるという事だ。作戦を練らねばなるまい。


 そんなことを考えていると、今頃になって、アクダムが族長の間に駆け込んできた。

「りり様! イプ=スキ族と戦争になるというのは、本当ですか!? 次の満月の日には攻めてくるらしいじゃないですか!」

 開口一番がそれだった。

「……妙に情報が早いですね?」

 ちくり、と言ってやったが、アクダムは構わずに続ける。

「どうするのですか! 我がヘルシラントの危機ですよ! どうして使者殿に失礼な態度を取ったのです!?」

 ……なにが使者「殿」だ。あんな者に敬語を使う必要がどこにある。


 アクダムの言葉に、わたしは座ったままで応える。

「うちの財宝を今、全て差し出せ、おまけにわたし自身がイプ=スキに出向いて跪けとの要求でした。受け入れられるわけがないでしょう?」

「服属の印に、首輪を自分でつけろ、とまで言われたのですよ」

 リーナがそう言うと、部屋にいる部族のみんなが一斉に「そうだそうだ」と頷いた。

「しかし! 要求を蹴れば、イプ=スキの軍が攻めてくるのですよね! 戦を避けるために、一時的に要求を受け入れても良かったのでは?」

 何を馬鹿な事を……わたしはアクダムを睨んだ。


「財宝を一部よこせ、ならともかく、今すぐ全部よこせ、と要求して来たのですよ? おまけに、わたしに降伏のために出頭しろ、とも言ってました。交渉の余地がどこにあると?」

「し、しかし……」

「これは全面降伏、イプ=スキ族に従属しろ、ということです。もし受け入れれば、我がヘルシラント族はイプ=スキ族の奴隷となって、永久に収奪されます」

「し、しかし! 要求を蹴ったところで、イプ=スキ軍に敗れれば、同じ事ではないですか! どうするつもりですか?」

 どうする、と言われても、迎え撃つしかない。


「りり様の決断で、我らヘルシラント族がイプ=スキ族に攻撃される事になったのですよ! これは族長であるりり様の責任です!」

 その言葉に、わたしは「そういうことか」と思いながらアクダムを見た。

 要するに、わたしの失点という事にしたいのだろう。

 やはり、アクダムにはわたしへの悪意がある様で、言動の節々が怪しい。


 それに、会見での情報を知るタイミングが早すぎる。イプ=スキ族の使者に聞いたのか、それとも、「元々知っていた」のか……。どうも怪しい。やはりアクダムの動きには、気をつけた方が良さそうだ。

 横をちらりと見ると、リーナと爺も小さく頷いている。どうやら同意見のようだった。


「りり様! 聞いているのですか!?」

 怪しまれているのを知ってか知らずか、アクダムが叫び続けている。

 わたしは改めてアクダムに答えた。


「要求内容から判断しても、彼らがわたしたちに『ケンカを売りに来た』のは明白です。どの道、わたしたちの財産を狙って、我らヘルシラントに宣戦布告しよう、との思惑なのでしょう」

「そうですよ!」「りり様の言うとおりです!」

 リーナや爺、そして会見に隣席していたヘルシラント族の代表たちも一斉に言ってくれる。

「そ、そうですか……」

 集まっているみんなが同調しているのを見て、この方向でわたしの失点稼ぎをできないと悟ったか、アクダムが一歩引いた。


「ですが、まもなくイプ=スキ族が攻めてくるのですよね。どうするのですか。洞窟に籠城ですか?」

 アクダムが、わたしを覗き込む様に……品定めする様に見ながら言った。


 わたしは少し考えてから、答えた。

「……いえ、迎え撃って戦います」

 読んでいただいて、ありがとうございました!

・面白そう!

・次回も楽しみ!

・更新、頑張れ!

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 今後も、作品を書き続ける強力な燃料となります!

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