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第22話 イプ=スキ族の要求

「りり様、大変です!」

 リーナが顔色を変えて、族長の間に飛び込んで来た。

「イプ=スキ族からの使いがやって参りました! りり様に会わせろと」

「イプ=スキ族が!?」


 何でも、「イプ=スキ族から来た」とゴブリン数名が洞窟の前で騒いでいるらしい。

「ヒャッハー! 『リリ』に会わせろ!」と、入口の前で騒いでいるとの事だ。

 正使らしい?騎馬に乗ったゴブリンが一名。そして何故か、からっぽの荷車を引いた随行員数名もついてきているらしい。



「リーナ、イプ=スキ族と言えば……」

「ええ、北方の敵、と言ってもいい連中ですわ」

 リーナの横で、爺も深刻な表情をしている。


 わたしは改めて、イプ=スキ族に関する情報を思い出していた。

 イプ=スキ族は、「火の国」地方の中部……わたしたち、ヘルシラント族の北隣に勢力を持つ、ゴブリン部族。

 中部地方の平原に生息している馬を乗りこなしており、騎馬中心の部族として知られている。


 そして……以前からしばしば、わたしたちヘルシラント族に略奪の手を伸ばしてきているのだ。

 単純な兵力自体もわたしたちより多い事に加え、機動力に優れる騎馬隊が中心であるため、騎兵を持っていないヘルシラント族は、軍事力では対抗できない。野戦では戦えないし、集落も平地にあるので、守るには向かない。

 そのため、これまでも彼らが攻めてくる度に、ヘルシラント族は洞窟に籠城してやり過ごすしか無かった。


 洞窟に籠城すれば、さすがにイプ=スキ族も簡単には手を出せない。

 しかし、洞窟の外……周辺のゴブリン村落や畑などは無防備なままとなる。

 そのため、わたしたちヘルシラント側が籠城するのを横目に、彼らは悠々と村や畑を荒らして、略奪して去って行く……。そんな状況が、これまでも繰り返されて来たのだった。


 毎回、ほぼ反撃されずに村から略奪できる。そんな経緯から、彼らはわたしたちヘルシラント族を舐めきっており、略奪も片手間の遠足感覚、小遣いを回収する様な気分でやっているのだ。

 言うまでもなく、略奪に来るときに、わざわざ使節などは送ってこない。いつもいきなり襲ってきている。

 そんなイプ=スキ族が、わざわざ使節を派遣してくるなんて、何のつもりなんだろう。

 リーナや爺を始め、まわりのゴブリンたちが不安げな様子でわたしを見ているが……ともあれ、彼らが何を求めてやってきたのか、話を聞いてみるしかない。

「ここに通して下さい」

 わたしはリーナに伝えた。



 ……………



 「族長の間」に、わたしと側に仕えるリーナと爺。そしてヘルシラントの有力者たちが並んで待っている。

 こんな機会に、いかにも喜んで出てきそうなアクダムは、知らせの使者を送ったけれど、何故か顔を見せなかった。


「イプ=スキ族が急に使者なんて送ってくるなんて……」

「何のつもりなんでしょうな」

 周りのゴブリンたちも、不安げに話している。


 じりじりと不安な時間が過ぎ、しばらくして、イプ=スキ族のゴブリンが、「族長の間」に入ってきた。

 正使のゴブリンが、一人だけで来たようだ。残りの随行員たちは洞窟の入口で待っている様だ。


 ここに来るまでに、わたしの「採掘(マイニング)」の能力で整備され、魔光石が随所にはめ込まれて輝いている通路を見て、驚いたのだろう。目を白黒させて、きょろきょろと周囲を見回しながら部屋に入ってくる。

 更にこの「族長の間」も、玉座の前を中心に魔光石がふんだんに使われてキラキラと明るいので、驚いている様だった。


 しかし、族長の玉座に座っているわたしをひと目見て、嫌らしい、馬鹿にしたような表情に変わる。

「何だ、伝説の『ゴブリリ』と聞いて見に来てやったのに、ずいぶんと貧相な身体のガキだな」

 入ってきた使者の台詞が、開口一番それだったので、わたしはイプ=スキ族と仲良くなれるのかも、という気が、早々に無くなったのだった。

 まあ、そもそも、先方にもそんなつもりは毛頭無い様であったが……。


「ヒャッハー! お前が『リリ』か!?」

「……………」

 返事をせずに睨み付ける。勝手に肯定だと判断したのか、使者が言葉を続ける。


「俺は、イプ=スキ族のコランだ。族長であるスナ様の代理としてここに来た!」

 コラン、と名乗った使者は、そう言ってわたしたちの前でふんぞり返る様に胸を張った。


「……………」

「……………」

 わたしたちは、その様子を黙ったまま見ていた。

 彼の次の言葉を待っていたわけだが、使者の表情が次第に不機嫌なものに変わっていく。

 ……どうやら、わたしたちヘルシラント側が、頭を下げて挨拶するとでも思っていたらしい。

 最初から無礼な、使者なのに自分を「俺」呼ばわりする様な相手に、頭なんて下げるわけがないだろう。明らかにわたしたちを格下認定している様だけれど、こちらが従ってやる理由など無い。


 わたしたちの反応にイライラしていた使者だったが、しばらくして気を取り直したのか、こほん、と小さく咳をしてから、改めて大きな声を張り上げた。


「我が族長、スナ=ムーシ様の言葉を伝える!」

 イプ=スキ族の使者、コランが大声で言った。


「ヘルシラント族よ! 我がイプ=スキ族に服属し、貢納を差し出すべし!」

 読んでいただいて、ありがとうございました!

・面白そう!

・次回も楽しみ!

・更新、頑張れ!

 と思ってくださった方は、どうか画面下の『☆☆☆☆☆』からポイントを入れていただけると嬉しいです!(ブックマークも大歓迎です!)


 今後も、作品を書き続ける強力な燃料となります!

 なにとぞ、ご協力のほど、よろしくお願いします!

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